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『リーゼロッテ、魔道具が光っているぞ』


ミニ狼姿で、リーゼロッテのベッドの上で寛いでいたテオは声をかけた。やはり、大きなベッドの方が寝心地が良いらしく、テオの目はまだトロンとしている。


リーゼロッテは、ジョアンヌに貰った王都で流行していたハーブのバスオイルを使っての湯浴みを済ませ、長旅の疲れ――いや、精神的な疲れを取るために、ソファーでのんびりマッサージしている最中だった。

身体に魔力を流し、リンパの流れをよくすれば簡単に治るのだが。転生前の習慣だったせいか、この方が気持ちもリラックスできた。


浮腫んでしまった足を揉んでいた手を止め、顔を上げたリーゼロッテは、チェストに置いてある魔道具を見た。


「あ、本当だわ。ジェラール殿下ったら……まるで、私たちが今日到着するのが分かっていかたのようね」


王都でリーゼロッテがジェラールと会ったのは、初日だけだった。絶妙なタイミングに首を傾げつつ、魔道具の文字を読む。


(あれ……ジェラール殿下からじゃない?)


「……えっ!?」


『どうした?』


「これ、殿下からじゃなく……お父様からだわ。今夜、魔玻璃の所へひとりで来るようにですって……」


『本当にルイスからか?』


「それは、間違いないわ。筆跡も、サインもお父様のものよ。でも、どうやって魔道具を使ったのかしら?」


『一緒に行くぞ?』


「いいえ、大丈夫よ。もう、狙われる心配も無いしね。今は、安全な場所だわ。それに……」


今日は、あの魔玻璃の洞窟でリーゼロッテが殺された日だ――。


どの道、洞窟へは行くつもりだった。今日で終わった1周目のリーゼロッテの人生。けじめ――というか、前に進む為にもあの場所へ行かなければと思っていた。


もしかしたら、ルイスも同じことを考えていたのかもしれない。



◇◇◇◇◇



着替えを済ませ、完全に日が落ちるとリーゼロッテは洞窟へと向かった。


静かな洞窟内を進む。

リーゼロッテが魔玻璃へ近付くと、輝きが増して辺りが明るくなる、すっかり見慣れた光景だ。


うっすらと揺れる光の中に、ルイスの姿が見えた。


「リーゼロッテ、急にすまない」


「お父様。突然、魔道具で呼び出すなんて驚きました」


「ああ、魔道具はジェラール殿下から頂いたのだ。来年、リーゼロッテが貴族学院に入ったら使えと言ってね。早速、試してみたが大丈夫そうかな?」


「ええ、全く問題無かったですが……出来たらそれも書いてほしかったです。一瞬悩んでしまいました」


「それもそうだな。すまん」と、ルイスは申し訳なさそうに言う。


1周目とは違う穏やかな時間。

ふたりは顔を見合わせ、クスッと笑う。こんな風に過ごせる日が来るとは、あの時は思いもしなかった。


「……お父様はどうしてここに?」


「此処は、リーゼロッテにとって辛い場所かもしれないが……。今のリーゼロッテと、私達が生きていられる運命をくれた場所でもある。だから、この場所を選んだんだ」


「……選んだ?」


ルイスの言葉の意味がわからず、聞き返す。


「そうだよ」と頷いたルイスは――。


片膝を地面につくとポケットから何かを取り出し、リーゼロッテに差し出した。

パカッと開いた小さな箱の中には、ルイスの瞳と同じ色の魔石が真ん中に埋め込まれた……美しい指輪が輝いていた。


(これ――)


リーゼロッテはコクンと唾を呑んだ。

どんどん速くなる鼓動を、必死で落ち着かせようとするが……ダメだった。


「此処で、誓う。私は、一生をかけてリーゼロッテを守り、共に生きることを。どうか、私の妻になってほしい」


真剣なルイスの瞳は、リーゼロッテを真っ直ぐに見ている。


「……共に生きる?」


視界が涙で歪み、震える声でまた聞き返してしまう。


「そうだ。リーゼロッテが繋いでくれたこの命、父親ではなく生涯の伴侶として。指輪……受け取ってくれるかい?」


「……はい」


破顔したルイスは、リーゼロッテの指に指輪を嵌めると、そのまま胸に抱き寄せた。一見細く見えるが、鍛え上げられた厚い胸板に顔を埋める。


「……愛している」


吐息のような、甘いルイスの声が耳をくすぐる。


「お父様、私も……です」


リーゼロッテだけではなく、ルイスの鼓動も速くなっていく。


「リーゼロッテ。お父様ではなく、名前で呼んでくれないか?」


「あ……。ル……ルイス、愛してます」


「……ありがとう。最近どうも、私は嫉妬深くなってしまったみたいだ。リーゼロッテを離したくないと思ってしまう。だが、これで……どうにか、リーゼロッテの貴族学院の卒業まで我慢できそうだよ」


驚いて顔を上げると、真上からルイスの優しい眼差しが向けられる。


「卒業したら、結婚して式を挙げよう。それまでは、父エアハルト辺境伯としてリーゼロッテを守ろう。好きなだけ学んでおいで」


リーゼロッテが1周目で行けなかった貴族学院。

ルイスはちゃんと分かってくれていた。リーゼロッテはルイスの背中に手をまわし、もう一度その胸に顔を埋めた。


「ありがとう、お父様……」


そして、ルイスとリーゼロッテは魔玻璃に魔力を注ぎ、この結界をふたりで守り続けることも誓う。

心なしか魔玻璃の光が強くなり、祝福された感じがした――。

転生してループ?〜転生令嬢は地味に最強なのかもしれません〜

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