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「見てごらん、セシリー。君の肌には、どこを触っても僕の印がついている。服に隠れた場所も、そうでない場所も……すべて僕のものだ」
そう言うと、彼は慣れた手つきでサイドテーブルから、装飾の施された銀の瓶を取り出した。
中には、官能的なまでに甘ったるい香りのする、王家秘伝の最高級香油が入っている。
「ま、またするつもり…?さっき湯浴みは済ませたわ!」
「指先まで乾燥しないように、僕が磨いてあげるんだ。君はもう、一歩も外に出る必要はないけれど…」
「だからこそ、一ミリも、僕以外の不純なものに触れさせたくないからね」
彼は私の指を一本ずつ取り、節くれだった大きな手で包み込む。
丁寧に、そして執拗に、指の先から根元まで香油を塗り込んでいく。
爪の生え際、指の股、そして手のひら。
ただの保湿のはずなのに
彼の熱を帯びた指が這うたびに、身体の奥がじんわりと熱くなり
背筋をゾクゾクとした感覚が駆け抜ける。
彼は私の指先を口に含み、甘噛みしながら私を上目遣いに見つめた。
その瞳には、獲物を愛で、飼い慣らす獣のような
過保護で歪んだ情熱が宿っている。
「……っ、ん……。……なんか、変な感じがする……っ」
「変じゃないよ。感覚を研ぎ澄ませて。君はただ、僕に愛されることにだけ集中していればいいんだ」
「食事も、着替えも、湯浴みも……君が望まなくてもすべて僕がしてあげる。君は、僕の腕の中でただ呼吸をして、僕だけを見ていればいい」
「そんなの、本当にお人形じゃない……!」
「そうだよ。僕だけの、血の通ったお人形」
フィンセントは満足げに微笑むと
今度は私の足首に繋がれた、細くも重厚な金の鎖を指先で弾いた。
チリン、と涼やかな音が密室に響く。
その音を聞くたび、私は自分が誇り高き貴族令嬢から、彼の「愛玩物」に成り下がったことを突きつけられるのに。
同時に、この鎖がある限り彼は私から離れないのだという、狂った安心感さえ覚えてしまうのだ。
(悔しい……こんなに酷いことされてるのに、この男の体温がないと、もう眠れないなんて…私はいつから、こんなに壊れてしまったの……)
「……セシリー、顔を見せて。僕を拒絶する強情な君も素敵だけど、今は、もっと素直に甘えてほしいな」
フィンセントの顔がゆっくりと近づき、逃げ場のない口付けが降ってくる。
拒もうとして胸を押し返した手は、いつの間にか力なく彼の首に回っていた。
彼の熱い舌が口内を隅々まで蹂躙し、呼吸を奪うたびに、私の怒りは甘い痺れへと溶けて消えていく。
「……あ、っ……は……フィン、セント……っ。……苦しい……っ」
「…ごめん、君があまりにも可愛いから…っ」
夜はまだ、始まったばかりだ。
窓のない、深紅の檻の中で。
私は今日も、最凶のヤンデレ国王の
「愛でられるお人形」として、逃げ場のない甘美な絶望の底へと、ゆっくりと沈んでいくのだった。