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#異世界転移
花月夜れん
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「久しぶり!」目の前に降り立ったエルフの少女が弾けた笑顔で放ったその一言に、俺と隼人は思わず顔を見合わせた。
……こんなエルフの知り合いなんていたか?
「あ、あのさ……俺たち、どこかで会ったことあったか?」
隼人が戸惑いながら尋ねると、少女はくすくすと嬉しそうに笑った。
「村のみんなが、人間とウルフ族の冒険者が一緒に来たって騒いでたの。気になって見に来てみたら……」
少女は目を細め、どこか愛おしそうに俺たちの顔を交互に見つめた。
「まさか、この世界でもう一度会えるなんてね」
その懐かしい目元と声の響きに、隣にいた隼人がハッと目を見開いた。
「え……? あ……かり……なのか!?」
「えっ!?」
俺は喉を詰まらせた。そうだ。ずっと誰かに似ていると思っていた。面影が、あの『Re:note』のキーボードを務めていた明里そのものだったのだ。
まさか、人間ではなくエルフとして転生していたなんて――。
淡い緑がかった美しい髪と、エルフ特有の尖った耳を揺らしながら、少女――明里は満足そうに微笑んだ。
「そうだよ。ここでは“ネネ”って名前なんだけど……また隼人くんや玲央くんにそうやって呼ばれるなんて、なんだか本当に嬉しいな」
【ほう……ネネよ。お主は、この者たちと旧知の仲であったのか?】
傍らにたたずむ巨大な銀狼・フォリアが、重厚な声を響かせて尋ねる。
「うん、そうなの。あ、それでフォリア、さっきの話なんだけどね――」
「……あ、明里。さっき言ってた『魔力を奪ったやつ』って、一体どういうことなんだ?」
俺が尋ねると、明里は少し真面目な顔つきになって事情を語り始めた。
「実はね――」
明里の話によると、約3ヶ月前、この神聖な森に何者かが密かに侵入し、フォリアの体から膨大な魔力を根こそぎ奪っていったのだという。フォリアは命からがら敵を撃退したものの、魔力を失って瀕死の状態に陥ってしまった。それを森を散策していた明里が偶然発見し、薬草と癒しの力でなんとか介護して助け出したらしい。
「なるほど……だからフォリアは衰弱して暴れていたのか」
【うむ。おそらく襲撃者は、隣国アバンティの者たちだろう。我が魔力を力づくで奪おうとは……よほど大掛かりな禁忌の魔法を使うつもりかもしれん】
「これはただ事じゃないな。街に戻ったらギルドに報告しておいた方がよさそうだ」
「うん、そうね。……フォリア、もう体は大丈夫なの?」
明里が心配そうに見上げると、フォリアは静かに目を伏せた。
【ああ。エルフたちにも余計な心配をかけたな。魔力が順調に回復し次第、また元気な姿を見せるとエラードに伝えておいてくれ】
「わかった、伝えるね」
【ネネ、お主にも世話になった。もう我は大丈夫だ。村へ戻るがいい】
「うん。でも、まだ病み上がりなんだから絶対に無理はしないでね」
【わかっている。……そうだ、世話になった礼といってはなんだが、我の加護を授けよう。ネネだけでなく、そこのお主ら二人にもな】
「えっ、俺たちももらっていいのか!?」
隼人が目を丸くする。フォリアは金色の瞳を優しく細めた。
【これからお主たちは、何かと困難な道を歩むことになるだろう。我が授ける加護――“翠精の祝福”が、きっと風となってお主たちの行く手を導くはずだ】
フォリアが小さく咆哮すると、温かな緑色の光が俺たち3人を包み込んだ。身体がふっと軽くなり、体内の魔力が静かに澄み渡っていくような感覚が残る。
「……ありがとう、フォリア! 俺たち、頑張るよ!」
立ち去っていく俺たち3人の背中を静かに見送りながら、フォリアは誰にも聞こえない声でそっと呟いていた。
【あの3人に、絶え間なき祝福があらんことを。……遥か別の世界から訪れし、愛しき子らよ】
────────
「さて……これから、どうする?」
エルフの村への帰り道、俺は二人へぽつりと問いかけた。
「二人は今、冒険者をやってるんでしょ?」
「そうだ。二人の情報収集を兼ねて、色んな街の依頼を受けながら旅をしてたんだ」
「やっと明里に会えたからな! あとは鈴だけだ!」
隼人が拳を握りしめる。明里は少しだけ寂しそうに視線を落としたが、すぐに顔を上げた。
「鈴ちゃんは、まだ見つかっていないのね……。だったら私も、今日から冒険者やる!」
『…………は?』
俺と隼人の声が綺麗に重なった。
「ちょっと憧れてたのよね。冒険者として旅しながら、困っている人を助けるのって素敵じゃない?」
「いやいや! 冒険者の仕事なんて危険だらけだぞ!?」
「大丈夫! こう見えても私、風魔法はBランクなんだから!」
「マジかよ……」
「それに、エルフ特有の自然魔法も大体マスターしてるし、自分の身くらいちゃんと守れるよ?」
「いや、実力は分かったけどさ……親御さんにはなんて説得するつもりなんだよ。いきなり『旅に出ます』なんて言って許してくれるわけ――」
「……気合い?」
「……お前ら、そういう妙なところで性格がそっくりだよな……」
玲央は昔、隼人がウルフ族の両親を説得した時の強引なやり取りを思い出して、深く頭を抱えた。
「まぁまぁ、説得は私に任せてって!」
そんな軽口を叩き合っているうちに、俺たちはエルフの村へと戻ってきていた。
「おお、戻ったか! ネネも一緒だったとはな。それで、フォリアの様子はどうだった!?」
村の入口で、村長のエラードがハラハラとした表情で出迎えてくれた。
「とりあえず、エルフたちに敵意はないようです。魔力が回復したら、また近いうちに顔を出すと伝えてくれと言っていました」
「そうか! ああ、それを聞いて安心したよ!」
ひと通り事情を説明し終えると、明里が意を決したように口を開いた。
「ねえ、パパ」
(パ、パパ!?)
(お前、村長の娘だったのかよ!!)
俺と隼人は心の中で全力のツッコミを入れた。
「私、二人と一緒に冒険者になりたいの。ダメ?」
「……は?」
エラードは手にしていた重要な書類をバサバサと取り落とし、床にばらまいた。
そこから、明里による涙ぐましい熱烈な説得工作が始まり――最終的に親バカなエラードから許可が下りた。……説得に丸三日かかったが。
────────
「じゃあ、明里のギルド登録も無事に終わったし。次はパーティー名をどうするか決めようぜ!」
ギルドの規定では、正式なパーティーとして登録するには最低3人以上のメンバーが必要だった。今までは、俺と隼人は「たまたま同じ依頼を受けた個人の冒険者同士」という曖昧な扱いで行動していたのだ。
「何がいいかな……前世の『Re:note』をそのまま使うのは、ちょっと目立ちすぎるかしら?」
「たしかにー! 命狙われる可能性もあるしな」
「……“リナリア”ってのはどうだ?」
玲央の提案に、二人が同時に振り向いた。
「リナ……リア? どういう意味なんだ?」
「花の名前なんだ。“コンバラリア”っていう、鈴蘭(すずらん)のラテン語名に少し響きが似ててさ。それに、鈴蘭の花言葉は『再び幸せが訪れる』――。“Re”の意味と、鈴の存在をかけてみたんだ」
「……すごく素敵じゃない! リナリア、それにしようよ!」
「さすが元・定期考査学年1位。ラテン語から取ってくるとか……相変わらずのガリ勉だなあ!」
「うるせぇ、余計な一言だ!それにこれは、Re:noteの名前を考えた時に浮かんでた案の一つだ。」
「へぇ〜。知らなかった」
受付窓口で手続きを済ませると、受付嬢が笑顔でギルド証を更新してくれた。
「では、パーティー名《リナリア》として正式に登録させていただきますね!」
残る仲間は――鈴、お前だけだ。
待ってろよ。俺たち3人で、絶対に迎えに行くからな。
────
「あっ! やっと帰ってきた!」
「おせーよ玲央。待ちきれなくて先に飯食っちまったぞー!」
夜、宿屋の部屋に戻ると、隼人と明里がちょうど夕食を食べ終えて寛いでいるところだった。
二人の楽しげで賑やかな笑い声を聞きながら、俺はふと胸の奥が温かくなるのを感じる。
……またこうして、かけがえのない仲間が俺のそばにいてくれる。
鈴の記憶を取り戻す道のりはまだ遠いかもしれないが、今はそれだけで、背負っていた重荷がすっと軽くなるような気がした。
コメント
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しろのね さん、第28話読みました!ついに明里ちゃんがエルフとして登場して、しかも村長の娘だったオチには笑った(笑)。フォリアから加護もらって、パーティー名「リナリア」に決まって…仲間が一人増えた安心感と温かさがじんわり来ました!鈴ちゃんも見つかるといいな。次回も楽しみにしてます🔥