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碧野葉菜
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都築七美
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てく
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何が起きたか理解できず、いろりはしばし茫然とその場に立ち尽くしていた。
先刻まであったはずの蛇珀の温もり。
それが消え、一人きりの体温の冷たさに目を覚ましたいろりは、何かに弾かれたように部屋に戻った。
バルコニーで履いていたサンダルを脱ぐのも忘れ、学校指定の黒い鞄に入った薄い財布を乱暴に取り出すと、階段を駆け降りた。
就寝用の、桃色に淡い草色の水玉模様が入ったワンピース姿で、夜の帳を必死に走る。
道端で見つけた二十四時間開いている小さな店に立ち寄ってはあるものを買い、また前に進む、を繰り返す。
切羽詰まった様子の少女に、店員や稀にすれ違う人々は驚き、当惑の視線を彼女に向けたが、そんなことはどうでもよかった。
三月最後、まだ夜はずいぶん冷えるにも関わらず、いろりの額には汗が吹き出す。
どれだけ走ったかわからない。
ようやく目的の地が視界に認められると、いろりはいったん立ち止まり、頭を垂れて激しい呼吸を整えた。
数多の真紅の鳥居が、堂々たる立ち姿でいろりを見下ろしている。
夜闇を照らす灯籠の明かり。
鳥居を彩るように咲き誇る桃色の花は見事であったが、今のいろりは目もくれない。
浅い呼吸を繰り返したまま顔を上げ、いろりは再び足を忙しなく動かし始めた。
その腕には、溢れ落ちそうなほどのいなり寿司が抱えられていた。
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