テラーノベル
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少し広い十二畳の一部屋、二人の男が珍しく昼過ぎまで寝ていた。久しぶりの休日でよっぽど疲れたようだ、一人のそばかす顔の男が目を覚ました。何かを思い出すかのようにシャツに袖を通す、その音でもう一人が目を覚ました。お互いに挨拶を交わし身支度をしはじめた、そばかすが声をかけた。「今日少し出かけるけど、一緒にどう?」
相手は少し考え、首を縦に振った。「にしても、矢太郎が出かけるなんて珍しいですね。」
とそばかすに言う、そばかす顔の名を矢太郎と言うらしい。「仙四郎君こそこんな時間まで寝てるのが意外だったよ」
矢太郎がもう一人に笑い掛けた、もう一人は仙四郎と言うようだ。身支度がどちらも終わりさっそく出かけた、行き先が決まっているのか矢太郎は少し鼻歌交じりに歩いた。仙四朗はどこか安堵した様な面持ちで後をついていく、着いた先はこじんまりとした甘味処だ。「ここは…?」仙四朗が呟く矢太郎が記憶を失う前によく来ていた場所だ、「僕の行つけのお店だよ、ここのみたらし団子が好きなんだ。」
仙四朗は戸惑った、なぜなら矢太郎は世間からすれば死人として報道されたからだ。仙四朗はどう言い出すべきか葛藤しているところに最近聞いた声が聞こえた。「前の事件以来だね矢太郎君、仙四朗君。」
京太郎が中折れ帽子を外した、矢太郎は驚きを抑えこみ笑顔を作って見せた。仙四朗は会釈し、警戒していた。京太郎は二人に店の少し離れた場所で待っとくよう言い、甘味処に向かった。仙四朗は矢太郎が馴染みの店に行かないほうがいいと伝えた、矢太郎は一瞬切ない様な顔をみせたがすぐに笑顔を仙四朗に向けた。「そうだよね、ごめん気を付けるね」
仙四朗が何か言おうとした時京太郎が紙袋を掲げて戻って来た。どうやら三種類の団子を買って来たようだ、あんこが乗った物、甘口味噌の乗った物、矢太郎が好きなみたらしもあった。「好きなのをどうぞ」
京太郎の言葉に甘えて矢太郎がみたらしを取ろうとした時、誰かの手が触れた。咄嗟に手を引っ込め手の主を見た、京太郎だった。京太郎まるで狙った獲物が罠にかかった様に口角を上げた、矢太郎は警戒を表にした。すかさず仙四朗が間に入る、考え無しに間に入ったようで間に入って動揺して挙動不審になった。その光景を見て二人はつい笑ってしまった、先程の光景が嘘の様に和やかな空気に変わった。京太郎は非番だが能力で事件が起こるのが見え、散歩と称して現場に向かうところだった。矢太郎たちに会うのは想定内なのかは謎のままだ、晴れて矢太郎はみたらし団子を食した。食べながら事件現場に渋々ついていくことになった。着くまでの京太郎との会話に少し疑問を覚る、能力で事件がわかるなら先にその情報を伝えて未然に防ぐことも出来たのではと。そのようなことを考えているうちに現場に着いた、黒の金魚と朱色の金魚どちらも漂っていた。どうやら二階建てのハイカラな店のようだ、入り口付近に野次馬や血眼になった記者、少し不安になる。矢太郎の前職は記者だ、仕事仲間が気付かないとは限らない。どうしたものかと悶々と考えていた時頭に何か被さった、咄嗟に上を見ると京太郎が中折れ帽子を被せて此方に笑って見せた。仙四郎は巻いていた襟巻きを矢太郎の首元にかけた、その時現場の野次を抑えていた警官の一人が駆け寄って来た。「良かった、今現場検証が終わったところです!中へどうぞ」
矢太郎は引き留められるかと思っていたがそのまま現場に入れてくれた、どうやら若手の警官らしく矢太郎も警察関係者と思われたようだ。事件は単純だった、店の女性店員に入れあげた男性が好意が向かない女性店員に逆行して暴れたらしい。幸い死者は出なく男性は逮捕された。
矢太郎たちは安堵と呆れを感じた、帰り際京太郎に何故能力で事前に防ぐことができないのか聞いた。矢太郎はまたはぐらかされるだろうと思ったが京太郎は夕日を背に、「事件を防ごうとしたら未来が変わる…そしたら僕消されちゃうから」
矢太郎は何か言おうとした、したはずなのに言葉にならなかった。
コメント
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よければ改めてキャラのプロフィールを知りたいです🌟