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うわああああっ!!エリちゃんが媚薬を920個飲むことになってしまった……。やっぱ×20は簡単にインフレを起こしますね。
“おはよう、カノエ。今日は……何か私に渡したいものでもあるのかな?”
「おはようぉ、先生。まだ何も言ってないのに分かるなんて……イヒッ、やっぱり私と先生は赤い糸で結ばれてるねぇ……」
青空が澄み渡る朝。今日もキヴォトスでのなんでもない一日が始まった。
白い執務室の真ん中に設置された、これまた白い業務用デスクで多大な書類を処理する先生。今日も今日とて常人には耐え難い仕事を半ば諦め気味で行っていたところに、珍しくワイルドハント芸術学院の生徒、板垣カノエが「とある物」を手にしてこの場を訪れてきた。
カノエは悪戯っぽい笑みを浮かべ、ゆったりとした足取りでデスクへ近づく。
「今日も、先生のために作ってきたんだ……これ」
“これは……”
先生は一度手にしていたペンをデスクに置き、カノエから渡された「とある物」を受け取る。
それはペットボトルに流し込まれた液体。前例から考慮すると、これもカノエ特製の妙薬なのだろう。
「先生を労うために……私、作ってみたんだ」
“ありがとう……で、どんな効能が?”
「飲んでからのお楽しみ……イヒッ」
“本当に私を労うために作ったんだよね?”
どこか釈然としない先生は目の前の生徒に質問を試みるも、どれもカノエのダウナーボイスではぐらかされてしまう。
カノエがいう「特製ポーション」は既に何度か渡されたことがある。大抵は「前世の記憶を思い起こす」ための特別な薬──特にやましいものは入っていない物だったが、今回はそんな発言をせず、ただ「労い」という言葉だけで説明していた。
先生は一度今回渡されたポーションの材料や効能について思案してみたが、計り知れない彼女からそんなことを考えるなんて無謀に近いしい。まるで迷路を解くように壁に当たってはまた別の道筋を探ることを繰り返したが、やはりゴールに辿り着くことはなかった。彼は仕方なく詮索を諦め、大人しく受け取ることを選んだ。
“どういうものかは分からないけど、生徒からの贈り物は断れないからね。受け取っておくよ”
「ありがとぉ、先生」
そう感謝を述べる彼女の瞳はどこか湿っていたが、朴念仁である先生はそれに気づくことはない。
カノエがとあることを確信した、そんな時だった。突然、先生の懐から電子音が断続的に鳴り出し始める。何事かと思い先生はタブレットを取り出し画面を開いた。どうやら、とある抗争を解決してほしいという学園からの依頼が届いてるらしい。
“ごめんカノエ!これから出張に行かないと”
「そうなんだ……気をつけてね」
カノエには目論見があった。その計画を遂行するためには、当然先生が必要不可欠だ。本当なら今すぐにでも引き留め、例の薬を飲ませたかったが……先生に嫌われたくないという本能が無意識にもそれを拒否してしまう。
急ぎ早に執務室から出ていく先生を目に焼き付けながら、カノエは悲しむ気持ちを呑み込む代わりに、自身が置かれている運命を恨むのだった。
カノエにとって、先生のいない執務室には用がない。なので一般的に考えると、執務室を後にする先生の背中を追うようにして、彼女もこの場を去ると思われていたが……先生から「待ってくれ」という命令が来ていないというのに、カノエは大人しく執務室のソファで静かに待っていた。
ただ手で何かを動かしているわけでもなく呆然と時を刻む針を眺めるだけで、ミレニアムの盗聴常習者のようにこっそり盗聴器を仕掛けるわけでもなく、トリニティの黒猫のように苛立ちながら他の生徒から送られた私物を品定めするわけでもなく、本当に静かに純白のソファに腰を預けているだけ。
一周回って恐怖を感じるカノエの様子なのだが、逆に言えばそんな小細工を毎度実行する必要はないという、他の生徒にはない確信があると言える。その確信の根源は……やはり今日届けにきた「特製ポーション」にあった。
ネタバラシをすると、カノエの薬はただの疲労回復を促す薬ではない。今までの先生への贈り物と同じくして、今回も例外ではない「前世の記憶を思い起こすためのカノエ特製の一品」なのだ。
しかし違う部分がある。今回は思い切って、無理やり先生の矢印をこちらに向けることにしたのだ。実はカノエが作った薬には、「恋愛感情を促す効能がある素材」を混ぜてある。俗っぽくいうと「媚薬」だ。それもただの媚薬ではなく、一般的な媚薬にして920個分の効能と持続時間を秘めている特別な素材を混ぜた、致死量レベルのとんでもない劇薬。
特に恐ろしい点は持続時間にある。一般的な媚薬の920個分とあるように、とんでもなく長いのだ。カノエ自身は10年分と加算しているが、10年も経てば偽物でもあった恋心も本心となり、無事結婚成功!となるのである。
これをキヴォトス人以下の先生に飲ませても命に別状はないのかはさておき、これを飲ませてしまえば、見事カノエは先生とのラブラブ結婚ルートへ直行するのだが……やはり飲ませなければ意味がない。だから彼女は待っている。先生の帰宅を。そして飲まさせるれば、他の生徒を差し置いて単独勝利できるのだ。
カノエが将来の先生との生活を思い浮かべ、無意識に顔を綻ばせていたその時──。
「おはようございます!マスター!」
「え、エリちゃん?」
突如として執務室のドアが開かれた。カノエは先生が帰宅したのかと思い、キラキラとした目で立ち上がった、が……来客は先生ではなく、カノエと同じサークルの後輩、白尾エリだ。
「って、カノエ先輩?ここにいたんですね!」
「そ、そうだよぉ……先生に会いに来たんだ」
「奇遇ですね!私もマスターと魔法の研究を来たんですが……ところで、マスターはどちらに?」
「それがね、丁度出張みたいで……だから私はここで待ってるの」
「そうだったんですね!では私も──」
するとエリははつらつとした笑顔を崩さず、カノエが座る純白なソファの空きスペースに勢いよく座った。
一見微笑ましい光景だが、エリの隣に座るカノエの心中には漠然とした不安が秘められている。
(まさかエリちゃんが来るなんて……そこまでは想定してなかったなぁ。このまま居座られてしまうと、媚薬を飲ませづらいというか……。エリちゃんも先生のことを好いているのは分かるけど……先輩として後輩の恋路を応援してあげたいけど……ごめんねぇ)
認めたくはない。だがカノエにとって、エリの存在は色々不都合なのだ。だからどうにか彼女をここから退出させる必要がある。
「そういえば、先輩はどうしてマスターと会いに?」
「赤い糸の気まぐれだよ……なんとなく、先生に会いたいなぁ……って」
「ほう……運命ですか!」
「そうだよぉ」
平穏な会話を織り交ぜながらも、脳内でエリを執務室から出す方法を練っていく。だがどれもパッとしない。一時的に離すことは可能だが、絶対に戻らないという確証がない。できるだけリスクは減らしていきたいのだ。
想定もしていないところで苦戦する中、カノエは新たな苦難に直面する。
「その……実は喉が渇いてて……どこかに飲み物はないでしょうか?」
「つめた〜い飲み物なら、あそこの冷蔵庫にあるよぉ」
「許可もないのに冷蔵庫を開けてもいいんでしょうか?」
「私の先生なら許してくれるよぉ……」
礼儀を弁えていたエリ。勝手に人の冷蔵庫を開けるのは手が引けると思ってはいたが、カノエの言葉に背中を押され「仕方がない」と心の中で復唱し、付近の冷蔵庫へ向かう。
(エリちゃんが向かってる冷蔵庫には、私特製の薬が入ってるけど……他にも飲料水が沢山置いてあったから、多分取らないでしょ)
エリが向かう先にある冷蔵庫の中には、あの媚薬が飲料水と共に置かれている。それでも好奇心が渇きに勝たない限り、独特な色をしたペットボトルをとる輩なんていない。いくらエリでも生理現象を優先するはずだと、カノエは思い巡らせていた。
……媚薬って冷やすものなんですか?そもそも私たちは媚薬について知っているとでも?
ところがどっこい。万が一の可能性を見事引き当ててしまったのだ。
「ふぅ……はぁ……っ」
顔をこれでもかと真っ赤に染め、白い息を吐くのは白尾エリ。どうやら彼女の体温が急激に上昇していて熱っているらしい。
着込んでいた黒い上着、そしてワイシャツもいつの間にか脱いでおり、インナーによってナーフされながらも胸部の豊満さを遠くからでも感じ取れる霰もない姿となってしまっていた。原因は……言うまでもない。
(……やっちゃった☆)
カノエもこのヤケクソの笑顔である。彼女の緻密に組んだ「先生と前世からの特大愛(媚薬に愛はあるんか?)でラブラブ結婚作戦」はスタートラインにすら立つことはなく、終わりを迎えてしまった。
(いやぁ……エリちゃんの好奇心を舐めてたねぇ。媚薬も全部飲んじゃってるし、もう、私の考えた計画はもう実行できなさそう)
作戦は途端に終わってしまい、カノエは泣く泣くワイルドハント芸術学院へ帰る……ことはできない。なぜなら、彼女の隣には媚薬を飲み干してしまったエリがいるからだ。
カノエが作った媚薬は、最初に目についた人物に強い恋愛感情が生まれるというものだ。ここの先生がいたら、興奮したエリが先生に突っ込み、先生のシャーレが決壊するのだが……。残念ながら、ここに先生はいない。その代わりとして、板垣カノエがいるだけである。
屋根の下、二人だけ。何も起こらないはずもなく……。
「す、すいません……カノエ先輩……っ」
「ど、どうしたのぉ?そんなに汗かいて……」
「そのっ……急に体が暑くなって……」
「医務室いく?」
どうにかして逃げる糸筋はないかと、医務室へ行くことを薦めるも、エリは首を振る。
「そ、そっかぁ……でも治さないと大変だよ?」
するとエリはもじもじと視線を逸らし、カノエとの距離をゆっくりと近づけた。
「え、エリちゃん?」
「……人肌が恋しくて」
その瞬間、エリはカノエの薄い胸へと顔を押し込み、全体重を目の前の先輩に預ける。カノエは体格差に勝てるはずもなく、そのままソファのクッションへと押し倒されてしまった。
清々しい頭部の香り。胸に押し付けられる髪の束の触り心地。そして腰の下からを包むエリのたわわ……。人肌に触れ快感を得るエリと同じくして、自身の身体が心地よさに支配され、彼女も形容し難い快感を感じのだった。
「んぐっ……!?え、エリちゃん……あ、あつい……」
「えへへぇ……先輩の体温は心地いいです……」
「そ、そぉ──んふっ!?体が……!?」
カノエの小さな体が、少しずつ蝕まれていく。エリの身体が段々とカノエの顔まで浮上していくにつれ、互いの恥部が巡り合おうとしている。
このまま彼女に心身を預けていたらまずい、自分までもこの快感に溺れてしまう。カノエは悟った。
身体の擦り合いに快感を覚えながらも、彼女は必死に抵抗を試みる。だが力技では敵わない。副作用なのか、エリの身体能力が上昇しているようだ。
「や、やばいかも──ひゆっ!??」
「んふふっ、何がやばいんですかぁ……?心地いいんですからいいじゃないですかぁ……」
エリの耳へ息を吹き込む攻撃!カノエには効果抜群だ!
ご覧通り、エリの艶やかさは顕著に上昇している。力で圧倒されている以上、抵抗できずにいるこのままだとカノエは喰われてしまうだろう。
「先輩は可愛いですね……本当に……」
「や、やめよ?こんなところ人に見られたら──」
「どうでもいいですよ……人の目なんて」
(あっ、ダメかな……)
カノエの心身は段々と快感へと塗り替えられていき、そして二人の視線が交差する。その時のエリの目は完全に快楽に支配されている、妖艶な瞳だ。
「い、イヒッ……」
「なんだか先輩を見ていると、心の中から不思議な感情が湧いてくるんです……カノエ先輩は魅了魔法でも使ったのですか……?」
「どぉ……かなぁ……」
エリは困ったように眉を顰めながら、吐息がかかる距離まで顔を近づける。
「この感情は……“好き“なのかなと思います。先輩にこんな感情を抱くのは初めてですが……抑えきれなくて……」
「わ、私はぁ……」
「もう、この快楽に溺れてしまいましょう……?」
カノエの目の前には、今愛に飢えているエリがいる。本来の目的からはかなり逸れてして、同時に望んでいない状況。
だがカノエは、こんな状況に嫌気を差すことはなかった。むしろ愛おしさを、快楽に溺れてしまいたいという願望しか残っていなかったのだ。
(まあ……悪くはないかな)
──そして、唇が重なり合った。
エリちゃん媚薬漬けを書けって?無理だろ。
先生とのイチャラブと思っていたのか?残念、カノエとの百合だよ!!!!!なんで!!!????
やっぱこういうのは書けねぇよ……
コメント
4件
もはや完璧すぎてずるいと言わざるを得ない...ありがとう。
エリカノ。It's so perfect story.