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吉沢亮(短編)

17 - 彼女が雨に濡れて帰ってきたら

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2025年08月14日

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【彼女が雨に濡れて帰ってきたら】


玄関を開けた瞬間、冷たい空気と一緒に、ポタポタと水滴が床に落ちた。

「…何やってんの、傘は?」

リビングから顔を出した亮くんが、明らかに不機嫌そうに私を見つめる。

「急に降ってきちゃって…走ったんだけど、びしょびしょで」

そう言って靴を脱ごうとしたら、後ろから肩を掴まれる。

「動かないで」

彼は自分のフード付きパーカーを脱ぎ、そのまま私の頭に被せた。

温かさと、ほんのりシャンプーの匂いがふわっと広がる。

「俺の服なら、少しは温かいだろ」

「でも、亮くんが寒くなっちゃう」

そう言うと、彼は片手で私の頬を包み、

「俺より、お前の方が冷たいじゃん」と、真っ直ぐに見つめてくる。

そのままタオルを取りに行き、髪を乱暴だけど優しく拭いてくれる。

「風邪ひいたら、俺が看病する羽目になるんだぞ」

口ではそう言いながらも、拭く手つきは丁寧で、耳までそっと覆う。

「ほら、あったまれ」

そう言って、彼は自分の腕を広げた。

パーカーごと包み込まれると、外の冷たさなんてあっという間に消えていく。

胸元に顔を埋めていると、彼の手がゆっくり私のあごを持ち上げた。

「…こうすれば、もっとあったまるかも」

囁くように言って、唇が重なる。

雨音が窓を叩く中、その温もりだけが鮮やかに残っていく。

離れた瞬間、彼は小さく笑った。

「雨の日も悪くないな…お前が帰ってくるなら」

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