コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
驚いたことにシャルル・ド・ゴール空港では、すべてが滞りなく運んだ。北斗が帰りは二人分の最終便のファーストクラスのチケットをあらかじめ用意していたからだ
「すまない・・・本当なら君とモンサンミッシェルでもゆっくり観光したい所だが・・・どうしても仕事で帰らなきゃいけないんだ 」
「もし私を連れてこれなかったら、どうするつもりだったの?」
アリスは彼の用意周到さに驚いて聞いた。彼はニッコリ微笑んで言った
「ファーストクラスの二人分のシートに、寝そべってさめざめ泣くつもりだった。隣に誰かいられたら泣けない」
アリスはその言葉に心底驚いて声をあげて笑った、本当に彼はアリスを連れ帰るためだけに、パリに来たのだ
二人はジャンボジェット機のファーストクラスで、二人用ボックス席に落ち着いた
飛行機が離陸してからは、大きく柔らかなリクライニングシートに体を伸ばし、ゆったりと体を休めていた
体を休めても目がさえ切っている。アリスは隣で眠る北斗を、見ることをやめられなかった
出会ってからの彼は口数こそ少ないけど、アリスのアパルトメントまで付いてきて、わずか数時間のうちに荷造りを終えるのを、手伝ってくれた
幸い引っ越してきたばかりで荷物も少なく、足りない電化製品や家具などは現地で買おうと思っていた
とりあえず身の回りのモノだけ詰めたスーツケースを引きずって、彼はアリスの手を引き飛行機に乗せた
アリスは北斗と会ってか、ら終始胸はドキドキしっぱなしで彼から目が離せなかった
少し不安そうにこちらをのぞき込む瞳、彼に興味を惹かれ、魅了され、彼の事を何でも知りたくてたまらなくなっている
スーパーアイドルに恋するティーンエイジャーのようだ
生まれてから今まで、母親の人形のようだった女が過ごしていた。日々の生活はもっとずっと単純だった
今のアリスはずっとソワソワして、この男性の太陽となんだか、服の柔軟剤の良い香りに酔っていた
彼が寝ているのをいいことに、じっくり彼を観察する
脚の長さやアリスの胸よりも分厚い胸板、この手でつかみ切れないほどの大きな肩、ああ・・・彼は本当に筋骨逞しい
そして寝ているのに厳しい顔つきがきれいだ、寝顔はとても若く見える
無精ひげが少し顎に伸びている。音楽室で会った時にはなかったような気がする
だってあれだけアソコに口をつけられたにもかかわらず。髭のせいでひりひりする箇所はなかった
思い出すだけで顔から火を噴きそうだ。自分はとんでもない所を彼に全部見られ、広げられ、舐め回された
ごくんと唾を呑み込んだ、世の恋人同士はみんなあんなことをするのだろうか?
今でも股間が敏感になっていて、お腹も胸も熱くどくどくしている
翻弄されまくっているアリスに比べて、彼はトレーナの襟ひとつ乱さず、終始澄ましているように感じた
胸に張り付いている黒のパーカー、ブラックのリーバイスのストレッチジーンズ、そして凶器のような真っ黒のブーツは、よく見るとドクターマーチンだった
あんな風に自分も澄ましている彼に我を忘れさせ、爆発させることが出来るのだろうか?、まったく自信がない
ふと振り返って飛行機の卵型の窓に顔を向け、月明かりに照らされた目の前に移る雲を眺めていた
ファーストクラスの客室の電灯は落ちて、プライバシーのためにボックスシートと通路の間にカーテンが引かれている
ここは二人っきりの完全個室だ、カーテンが引かれているおかげで、性に目覚めたばかりのアリスは、とてもいけない妄想が頭のなかで渦を巻きまくっている
航空会社のブランケットを広げて、首元からつま先まですっぽりと体を覆い、寝たふりを決めようと思ったのに、目がギンギンに冴えている
いろいろなことで頭がいっぱいだから眠れるはずがない
彼の舌使いも巧みだったが、アリスの心をかき乱すのは、そのテクニックだけではなかった、彼が自分を見るその目つきだ
今まで数々の男性が見せる「お飾りのお人形アリス」を見る軽薄な目ではなく
ひそやかで真摯なまなざし・・・瞳の中で燃えている情熱だ。アリスを欲しいと心から思ってくれている
もう一度彼に見つめられながらあの快感に身もだえたい・・・・
その時こっちを向いてパチっと北斗が目を開けた
「君の考え事がここまで聞こえる」
「ご・・・ごめんなさい起こしちゃった?」
思わず焦って小声で言う、だって回りはみんな寝ている
「・・・眠れないのか? 」
「う・・・うん・・・・ 」
「何か飲むか?それとも食べ物を頼んでやろうか?」
「う~ん・・・・・・ 」
とにかく胸がいっぱいで何もいらなかった、その時にやりと彼が笑って言った
「キスをしちゃダメだぞ」
思わず吹き出した、まぁ・・・彼は私が言ったことを冗談にしてるのね
「ええ・・キスをしてはいけないわ・・・」
アリスは肘置きシートの仕切りをあげて、北斗の唇を唇でふさいだ