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ぬいぬい
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『、、、なんでなんでお姉ちゃんはーーーーくれなかったの?』
悲しみの湖の魚は黒い光が絶え間なく放つ、、、それが例え歪んだ正義だとしても、忘れて欲しい、ーーーーほしい、その黒い願望を胸に日々囁いていこう、、、お姉ちゃんのために。
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黒く濁った床の深淵から、冷たい水の匂いと、耳を圧迫するような「ぶくぶく……」という泡の音が溢れ出してくる。僕は恐怖で足がすくみ、黄泉國さんのスーツの裾を思いきり掴んだ。
「よ、黄泉國さん! 床が、床が完全に底なしの池みたいになってますって! 早く何とかしてください、僕のスニーカーじゃ現世に踏みとどまれません!」
「心配いりません、助手くん。君のそのスニーカーには、上京したての強烈な『貧乏の執念』が染み付いています。生半可な冥界の引力など、そのハングリー精神だけで重力反転を起こせるでしょう」
「精神論でオカルトに対抗させるな!!! もっと科学的か霊的なバリアを張ってくれよ!!!」
黄泉國さんは僕のツッコミを真顔で1ミリも気に留めず、怯える依頼人の女性に視線を向けた。その瞳は相変わらず生気がないが、すべてを見透かしたような不思議な深みを持っている。
「さあ、案内してもらいましょう。あなたが目を背け続けている、妹さんの『水槽』の本当の姿へ」
僕たちは女性の案内で、彼女の自宅にあるという亡くなった妹の部屋へと向かった。……いや、向かったはずだった。だが、部屋のドアを開けた瞬間、僕たちの目の前に広がっていたのは、四角いコンクリートの壁ではない。
それは、一面が淡い青緑色の光に包まれた、まるで巨大な水族館の内部のような空間だった。
部屋の中央には、美しく手入れされた大型の水槽が鎮座している。中では色とりどりの熱帯魚が泳ぎ、規則正しい「ぶくぶく……」というエアーポンプの音が静かに響き渡っていた。
「綺麗……だけど、何だか息苦しいな……」
僕は胸を押さえる。空気が妙に重く、まるで水中にいるかのように手足がうまく動かない。
女性は水槽の前にへたり込み、大粒の涙を流した。
「毎日、私がここを掃除しているんです。妹が残した大切な場所だから、汚したくなくて……。でも、夜になるとこの音が頭から離れなくて、妹が私を責めている気がして……!」
黄泉國さんはゆっくりと水槽に近づき、そのガラス面にそっと手を触れた。
「なるほど。大変美しい水槽だ。しかし助手くん、よく見てごらんなさい。この水槽の中にいる魚たち……一匹も呼吸をしていません」
「え……?」
僕は目を凝らした。確かに、優雅にヒレを動かして泳ぐ魚たちのエラは、ピクリとも動いていない。それどころか、よく見るとそれは本物の魚ではなく、ガラスや陶器で作られた精巧な「細工物」だった。
「黄泉國さん、これ……」
「ええ。妹さんは、生前から重い病を患い、この部屋のベッドから一歩も動けなかったはずだ。彼女にとってこの水槽は、自分が決して行くことのできない『外の世界』そのものだったのですよ。そして――」
黄泉國さんは振り返り、女性を真顔で見つめた。
「あなた。妹さんが亡くなった本当の理由を、まだ自分に許していませんね? あなたは毎朝、妹さんのために水を替え、ガラスを磨いていたと言いました。ですが、本当にあなたが向き合うべきだったのは、この綺麗な水槽ではなく……この水槽の裏に隠されていた、妹さんの『本音』だ」
黄泉國さんが水槽の裏側に手を伸ばし、一冊の小さなノートを取り出した。それは妹の日記帳だった。そこには、掠れた優しい文字でこう書かれていた。
『お姉ちゃん、毎日私のために綺麗な水をありがとう。でもね、私はお姉ちゃんに、水槽を洗う時間があるなら、もっと私の隣で普通の話をしてほしかったな。今日学校で何があったの? とか、どんな服が流行ってるの? とか。私は水槽の魚になりたかったんじゃなくて、お姉ちゃんの妹になりたかったんだよ、もっとーーーー欲しかったな』
「ひっ、うあぁぁ……!」
女性は日記を見て、顔を覆って泣き崩れた。
「妹さんが亡くなった時、あなたは『もっと何かしてあげられたはずだ』という強い罪悪感に囚われた。だから、妹の遺品である水槽を完璧に管理することで、その罪悪感から逃げようとしたのです。夜な夜な響く『ぶくぶく』という音は、妹の呪いでも未練でもない。『私は妹の本当の気持ちを見ようとしなかった』という、あなた自身の後悔の心が反響していた音ですよ」
「私は……私は、あの子のために良かれと思って……! 寂しい思いをさせていたなんて……!」
激しく泣きじゃくる女性の肩を、部屋のどこからか吹いた温かい風が、そっと包み込んだような気がした。
黄泉國さんは静かに佇み、水槽の泡の音を聞いていた。
「妹さんの魂は、とっくにこの窮屈な水槽を飛び出して、自由な空へと旅立っていますよ。ここに残っているのは、あなたの未練が作り出した『幻の水底』です。……さあ、もう水を替えるのは終わりにしなさい。彼女はあなたに、自分の代わりにたくさん笑って、外の世界を歩いてほしいと願っています」
黄泉國さんが指をパチンと鳴らすと、周囲の青緑色の光が、文字通り霧のように霧散していった。水槽の中の泡の音は徐々に小さくなり、やがて完全な静寂が訪れる。
気づけば、そこはただの、少し埃の被った普通の女の子の部屋に戻っていた。水槽のポンプの電源は、最初から切れていたのだ。
女性は赤く腫れた目で、しかしどこかすっきりとした表情で僕たちを見た。
「……ありがとうございます。私、ちゃんとあの子の分まで、前を向いて生きます」
これ、、、依頼料です。
と5枚の一万円札を渡してきた。
「よ、よ、黄泉國さん!ご、五万円です!」
「素晴らしいあなたには一万円あげましょう」
そう言って五枚のうちから一枚抜いて出してきた。
「や、やったーお金だーーー」
「ああ言い忘れてました。毎回のツッコミ税であなたには三万円の借金があります今月の給料から引いてあなたには2万の借金があります」
そう言って呆然としている僕の手から一万円を取った。
「ふ、ふ、ふっざけんじゃねえええええ」
ようやく出た言葉はそんなもんだった。
コメント
16件
これさ,,,Asouが作ってたらなんで国語できないの?ってなるぐらい言葉遣い上手いんだが,,
AIには話しているの虚しいねwwww
いやあ、後編もめちゃくちゃ良かったです……! 水槽の魚が全部細工物だったって伏線、見事に回収されましたね。でも何より、妹さんの日記の「お姉ちゃんの妹になりたかった」って言葉に胸が締め付けられました。ああして「綺麗に保つ」ことと「本当に向き合う」ことがすり替わってしまう切なさ、黄泉國さんの優しい指摘にじんときました。ラストの給料搾取ギャグで一気に空気が軽くなるのも、バランスが絶妙です。