「」→キャラクターの発言
()→キャラクターの心の声
それ以外→説明文的な感じ(?)
スメールの酒場の一角に、うんうんと悩んでいる様子の4人の男が居た。1人は諦めかけて遠くを見つめており、1人は頭を抱えて言語化出来ない唸り声をあげながら考え事をしており、1人は「気になるあの子の攻略法!?」というタイトルの本を熟読しながら顔を顰めており、1人は「俺はやはり恋が上手くないのか…くそ、カードゲームなら出来るのに…」とか何とか言っている。
そんな様子で3時間は店に居る男たちに店主はチラチラと視線を向けて、困った、とでもいうように眉を下げている。それもそのはず、大マハマトラにレンジャー長、教令院の書記官に大建築家がタヒにそうなほど顔を青ざめながら何か物議を醸しているのだから。
「なぁ、やはり訓練の時間をもう少し増やさないか?」
天を仰いでいた視線を目の前のタヒにかけの男たちに戻し、カーヴェはそう提案した。そのすぐ向かいに佇む「気になるあの子の攻略法!?」を読んでいた頼れる胸筋のアルハイゼンがすかさずカーヴェの言葉に意見する
「それは現実的に考えて不可能だろう。俺たちは君ほど暇では無い。さらに、セノとティナリは外での活動が主となっているんだ。これ以上皆で集まり訓練をするというのは難しいだろう。今でもかなり無理をして時間をつくっているんだ、これ以上は24時間では足りないだろうな。」
サラッとカーヴェをディスりつつも、非常に現実的で論理的なことをつらつらと述べていく。カーヴェの額に青筋が見えてはいるが、アルハイゼンの言ったことは事実であるのだ。もとよりあまり戦わないアルハイゼンとカーヴェ ー主にカーヴェだがー の為に4人で集まって訓練をしていて、確実に力は着いているし、メタ的なことを言えばさすが完凸!と言えるほどには強くなっている。だが、こんな無茶なことを仮にも教令院に通っていたカーヴェがなんの理由もなしに言うはずもない。
「だって…3人とも悔しくないのか!?好きな子に守られているだなんて!」
「そ、それは…」
「…」
「…」
そう、こんなにも悩んでいるのは彼ら4人の恋焦がれる、いやどうも最近付き合ったらしいのでこの表現は適していないだろう。4人の愛しい人である、夜空の星をいっぱいに詰め込んだかのようにキラキラと輝く瞳、月のように光る金色の髪の毛、太陽にも負けないほど明るく暖かい心、それを全て持つ異郷の旅人 、空が原因なのだ。
初めは空の可愛さ自慢大会のついでに近況報告をしよう、ということで集まったのだが、その時の内容がまぁ…「キノコを狩りにいってキノコ料理を作って貰った」や「七星召喚をした」、「本を共に1晩中読んだ」だの、「一緒に家具を見て回った」という感じで、友達の頃にしていたこととほとんど変わらないのだ。それに最初に気がついたのは誰だったか、「空は俺達のこと本当に好きなのか?」と少しずつ場が不安の渦に呑まれていった。
そこで救いの手が差し伸べられた。
発言したのはセノだったか
「誰が1番好きなんだ、と空に聞いてみたんだが…」
「え?なんでそれ早く言わないの??だ、誰なの?」
いち早く反応したのはティナリだった。やはり彼とは歴が違う。1番威厳があるというか、間違いなく4人の中で1番空と時を共にしているのはティナリだ。だからこそどうしても気になってきしまうのだろう。ティナリの好奇心が頂点に達する前に、セノは述べた
「それがなー」
回想に入るようだ
「空、お前は俺含め4人と付き合っているな」
「え?うん…それがどうかしたの?」
「俺たちの中で一番誰が好きなんだ?」
「うぅん…えっと〜…」
「うん」
「皆大好きじゃだめ…?」
「ッスー…オデ、オマエスキ」
「お、俺もだよ」
あ、回想終わりました。
誰が好きなのか、興味本意で聞いたセノであったが、正直この回答以外考えていなかったのだ。しかし、相手はこの世で1番好きな人。顔を真っ赤に赤らめながら消え入りそうな声で全員大好きだ、なんて言われたらそりゃキャラクターだって崩壊する。その場で襲わなかったセノの理性は賞賛に値する。で、普段は自分たちを振り回している魔性の男である空がそんなに可愛らしいことを言ったのだ。そりゃあティナリでも
「え?僕も空のこと愛してる」
後方彼氏面を通り越して後方夫面になり、後でとんでもなく愛を伝えとこうと考える。アルハイゼンでも
「俺はもしかして空と結婚していたのか?そうかそうか、ならつまり子供をつくるということか」
珍しくよく分からない理論を口からペラペラと吐き出したりする。そして空に納得させるためのセリフやデータを集めだした。空逃げて超逃げて。そしてカーヴェでも
「家は僕がデザインする。5人で住もう」
……1番マトモな思想を消え入りそうなほど小さい声で呟いた。ここまで読んで、あれ?こんな良いことがあったのになんで死にかけだったの?と思うことだろう。まだまだ彼達のテンションを爆下げする要因があったのだ。
それに1番最初に気がついたのはティナリであった。
「あのさ…僕たち」
声にしたらなんだか情けなさが増えてきたのか、わなわなと震えながらも皆にそれを共有しようと必死であった
「空を守るどころか空に守られてない…?」
ピシャーンとその他3人に何かがはしる。もちろんその3人だってこんなに情けない事実認めたくないのだ。好きな子は守りたい男どもであったのだ
「い、いやいやいや!!ティナリ、君何言ってるんだい!?第一僕の方がガタイがいい、し…」
「お、俺は大マハマトラだ。守る側でしかないのは明らか、だろ…う…」
「………」
胸筋のデカイアルハイゼンを除き、全員が言葉にすればするほど空に守られているという事実が深く胸に刺さる。とはいえ、全員努力はしているのだ。先程も言ったように、みなで集まって訓練をしている以外にも、たまに各自で実践をしたり、キノコンをのこのこしてこんこんしたりしているのだ。だが何故だろうか、実力がいつまで経っても空に追いつかない。遺跡守衛だろうが無相の草だろうが岩だろうが、彼が華奢な体を少しよじらせ、可愛らしい手を振れば敵は地面と仲良しこよししているのだ。要するに、どんな敵でもワンパンなのだ。
ティナリの回想に入ってみよう(ティナリ視点になる)
横を振り向くとなによりも愛しい恋人が金色に光る髪の毛をなびかせながら、上機嫌なのか軽やかな足取りで目的地へと向かう。今日は彼が久しぶりにガンダルヴァ村に顔を出したのだ。だが、僕はあいにくパトロールの予定が入ってしまっている。それを空に伝えると、一瞬悲しげな顔を浮かべてから直ぐに「俺も着いて言っていい?」と言ったのだ。大好きな子が珍しくお願いしてくれたんだ、断る男は男じゃない。と、いうことがあって絶賛2人きりでパトロール中だ。
「あっ!」
「空、どうかしたの?」
「マラー…ヴヴン死域が…」
「本当だ…今すぐ無くさなくちゃ!着いてきて!」
「うん」
僕はフェネックというのもあり、普段ならば誰よりも死域の発見が早いのに、今日は言われるまで気づくことが出来なかった。もしかしたら、僕は久しぶりに恋人に会えたから、というので浮かれているのかもしれない。頬を軽くペチンと叩き、意識を入れ直す。死域は目の前だ
「死域に入って気分が悪くなったりしたらすぐに外に出てね。僕一人でも片付けることはできるから」
「うん、ありがとう」
少しだけ頬が熱いのが分かる。そりゃ誰だって好きな人にお礼を言われたら照れる。ふるふると頭を振って、意識を死域に戻す。そして、目の前の死域の酷さを再確認する。いつものキノコンだらけな死域とは打って変わって、巨大な生物がわんさかいる。倒せない訳では無いが、この量、そしてこのサイズを捌くのには一苦労だ。しかも死域は広い。これは大変だと思っていた。
「ねぇ、ティナリ」
「なんだい?空」
「俺今岩元素使えるんだ。で、近くに水場がある。だから決勝反応起こしてシールドを生成するから、ティナリはシールド張って」
「僕だけなのかい?それじゃあその提案には乗れないよ」
「安心して、回復アイテムも持ってるし、近くには七天神像があるからね。それに、敵に炎元素を扱うのが居るから俺もシールド作れるよ」
「…なら良いけど」
「それで、ティナリは草の種を飛ばして貰いたいんだ。俺は敵を倒しとく」
「…!それじゃあ君が…!」
「安心して、ティナリ」
「俺はそんなに柔じゃない」
彼のかなり大胆な提案に賛成も反対もする暇なく、すぐ実行に移った。シールドを張ってから生命の灯を付けつつも、僕は草の種を飛ばす。空が心配でならないため、出来るだけ早く終わらせられるよう、全神経を集中させていると、後ろからドサドサドサっと鈍い音で何かが地面に落ちる音が聞こえた。血の気がサッと一気に引いて、目が彼の姿を捉えようと必死に動いた。
「ティナリ」
「そら…」
「終わったよ」
「しんぱい…したんだよ」
彼の返り血(?)1つ浴びていない姿を認めた瞬間、目頭がどうしようもないほど熱くなった。そんな僕の様子から何か察したのか、空がとんでもなく可愛い微笑みを僕に向けてからギュッと抱き寄せた
「大丈夫だよ、ティナリ」
「うん…」
「俺はこんなので死なないよ」
「うん…」
「ティナリは溜め込み過ぎだよ。いつでも俺が話聞いてあげるから、言ってよ」
「わかった…」
「ふふ、落ち着いた?」
少し笑いながらも、僕より少し背の低い彼は頭を撫でながらも落ち着かせてくれた。やはり僕の恋人最高だな、という気持ちとともに、好きな子にこんな姿を見せるなんて、という恥ずかしい気持ちが混在した出来事だった。
〜回想終わり
すみません一旦区切ります。続けようとは思ってます。後1話か2話で終わらせるはずです。
コメント
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すいません〜💦誤字ってました〜 決勝反応✕ 結晶反応〇 です〜!