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耀聖(ようせい)
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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
「シャルロット・ド・バロア! お前との婚約を破棄し、この国からの追放を命ずる!」
絢爛豪華な王宮の夜会会場。
その中心で、私の婚約者である第一王子・カイルが冷酷な声を響かせた。
耳を刺すような静寂の後、周囲の貴族たちから一斉にヒソヒソとした囁き声が広がる。
「まあ、ついに……」
「当然でしょう。魔法も使えない無能のくせに、嫉妬に狂って聖女様を傷つけるなんて」
浴びせられる、蔑みの視線。
私はただ、信じられない思いでカイルを見つめていた。
カイルの腕には、一人の少女が弱々しくしがみついている。
男爵令嬢のエレン。
この国で「奇跡の癒やしを持つ聖女」と持て囃されている、カイルの浮気相手だ。
「カイル殿下、お待ちください。私はエレン様を傷つけてなどいません。
それは彼女の自作自演です! 私はただ、殿下の婚約者として、お二人の不貞を……!」
「黙れ、悪辣な女め!」
カイルは私の言葉を遮り、激昂した。
「エレンが自分で自分を呪うわけがないだろう!
お前がエレンの才能を妬み、闇の呪詛魔術で彼女を衰弱させた証拠は揃っているのだ!」
「呪い……? そんなの、使えるはずがありません! ご存知のはずです、私は――」
「ああ、知っているとも。お前が魔力測定器の針すら動かせない、稀に見る『魔法無能』だということはな!」
カイルは嘲笑するように吐き捨てた。
周囲の貴族たちからも、クスクスと下品な笑い声が漏れる。
そうなのだ。
バロア公爵家の長女として生まれた私は、幼い頃から一度も魔法を発現させたことがなかった。
この世界では、魔法の強さこそが貴族の価値だ。
魔力を持たない私は、家族からも「我が家の恥」と虐げられ、カイルからも冷遇され続けてきた。
カイルはエレンの肩を抱き寄せ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「魔法の使えない無能のお前が、エレンに嫉妬するあまり、禁忌の魔導書に手を染めて呪いを放った。
これ以上の大罪があろうか! バロア公爵家もお前を勘当すると言っている。今すぐこの国から出ていくがいい!」
隣でエレンが、ハンカチで目元を拭いながら、私にだけ見えるような歪んだ邪悪な笑みを浮かべた。
すべては仕組まれていたのだ。
エレンの自作自演の呪いと、私を邪魔者に思ったカイルの陰謀。
「……誰も、私の言葉は信じてくれないのですね」
実の父親すらも、向こうの壁際で私から目を逸らしている。
この国に、私の味方は一人もいなかった。
◇
着の身着のまま国境へと追い出された私は、冷たい雨が降る中、一人で荒野を歩いていた。
身に覚えのない罪。
愛する人に裏切られた絶望。
squatそして何より、何も言い返せなかった己の無力さ。
「どうして、私がこんな目に……」
涙は疾うに枯れていた。
体力も限界を迎え、私は崖の淵に立っていた。
下を見下ろせば、激しい濁流が渦巻いている。
(カイル、エレン……あなたたちを、絶対に許さない)
激しい怒りと悔しさが胸を焦がす。
しかし、今の私には彼らに復讐する力など、どこにも残っていなかった。
実は、私には一つの秘密があった。
私は本当に「魔法無能」だったわけではない。
むしろ逆だ。
私の体内に流れる魔力は、あまりにも膨大で、あまりにも純度が高すぎた。この国の粗悪な測定器では、私の魔力を「検知すらできなかった」だけなのだ。
あまりの巨大さにコントロールが難しく、私はただ、力を体内に深く隠し続けていただけだった。
「この力を使って、もっと早く戦っていれば……」
後悔が押し寄せる。
しかし、もう遅い。
心も身体も、完全にボロボロだった。
私はそっと目を閉じ、激しい濁流へと、その身を投げ出した。
冷たい水が私を包み込み、意識が深い闇へと落ちていく。
私の惨めな人生は、ここで終わった。
◇
◇
◇
「――お嬢様! お嬢様、目を覚ましてください!」
聞き覚えのない、必死な女性の声が聞こえる。
(しつこいな……私は死んだはずなのに……)
重い泥のようだった泥濘から、奇跡的に意識が浮上する。
ゆっくりと目を開けると、そこは見栄えのないほど豪華な天蓋付きのベッドの上だった。
隣には、泣きそうな顔で私を覗き込む、見知らぬメイドの少女がいる。
「あぁ……! よかった、ローゼマリー皇女殿下! お目覚めになられたのですね!」
「……え?」
私の口から出たのは、前世の自分のものより、少し高くて鈴のように美しい声だった。
混乱しながら起き上がり、部屋の隅にある大きな姿見の鏡の前に駆け寄る。そこに映っていたのは、
夜空を溶かしたような美しい艶のある黒髪に、
神秘的に輝く紫色の瞳を持った、絶世の美少女の姿だった。
「これが……私……?」
頭の中に、濁流のように見知らぬ記憶が流れ込んでくる。
この身体の持ち主は、ローゼマリー。
この大陸で最も強大な軍事力を誇る「ガルディニア帝国」の、第一皇女。
生まれつき身体が弱く、ずっと病床に伏せっていた少女だった。
その彼女が今、息を引き取った瞬間に、私の魂がこの身体に入り込んだのだ。
「ローゼマリー様、本当によかったです。
この1年、ずっと眠り続けられていたので、皇帝陛下も、お兄様方も大変心配されておりました……」
メイドの言葉に、私は引っかかりを覚えた。
「……1年? 私が眠っていたのは、1年なのですか?」
「はい。ちょうど1年前の今日、
ローゼマリー様は突然高熱を出されて倒れられたのです」
脳裏に電撃が走る。
私が崖から飛び降りて、
死んでから、まだ「1年」しか経っていない。
ということは、あのカイルとエレンは、今ものうのうと生きている。
私の名誉を汚したまま、幸せに暮らしているのだ。
ふと、自分の手のひらを見つめる。
前世の私の身体は弱かった。
だが、この帝国の皇女の身体はどうだ。
試しに、体内の魔力を少しだけ指先に集めてみる。
(――っ!)
凄まじい、文字通り「国家を揺るがすほどの圧倒的な魔力」が、
私の意志に呼応して滑らかに駆け巡った。
前世で上手く扱えなかった膨大な魔力が、
このローゼマリーの最高峰の魔力回路によって、完全にコントロールできている。
私は無能の令嬢シャルロットではない。
最強の帝国を後ろ盾に持つ、規格外の魔力を持った皇女ローゼマリーなのだ。
姿見の中の私は、冷徹な笑みを浮かべた。
「カイル、エレン。あなたたちが奪った私の全てを、今度は私が奪い尽くしてあげるわ」
無能と蔑まれた悪役令嬢の、本当の逆襲劇が、今ここから始まる。
コメント
6件
最高、!!!!!なんだこの神作品は!!
え、、??? るーら……?なんでこんなに上手いんだ??? ストーリー最高すぎる!!
読み終わったよ!「無能」って罵られてたのに実は測定器の限界を超える魔力の持ち主だった、って設定がもう胸熱すぎる🔥 崖から飛び込むシーンは切なかったけど、帝国の皇女・ローゼマリーとして覚醒してからの「奪い返す」宣言がカッコよすぎる…! これからの逆襲劇、ガチで楽しみにしてる!