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耀聖(ようせい)
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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
翌朝、私が目を覚ますと、そこは昨日と変わらず夢のように豪華な部屋だった。
(本当に、私は別の人間になったのね……)
まだ現実感が湧かないまま体を起こすと、部屋の扉が静かに開いた。
入ってきたのは、
昨日私の目覚めに涙を流してくれた専属メイドのリンと、
その背後に控える数人の使用人たちだ。
彼らが恭しく掲げている銀のトレイを見て、私は思わず目を見張った。
湯気を立てる焼きたてのふんわりとした白パン。
新鮮な果物をふんだんに使った色鮮やかなジャム。
そして、高価なスパイスの香りがふわりと漂う、温かい黄金色のスープ。
前世のバロア公爵家では、
無能と蔑まれていた私はいつも、冷え切った残り物ばかりを押し付けられていた。
カビの生えかけた硬いパンや、味のしない薄いスープを、
暗い地下の自室で一人、震えながら口に運んでいたのだ。
それなのに、目の前にあるのは、見るだけで心が解けるような極上の朝食だった。
銀の食器はどれもピカピカに磨き上げられ、私のために細心の注意を払って用意されたことが一目で分かった。
「ローゼマリー様、お目覚めになられたのですね!
お身体に障らぬよう、料理長が今朝一番の新鮮な食材で、
最も消化に良い温かいスープをご用意いたしました。お口に合うとよろしいのですが……」
リンは本当に嬉しそうに、弾んだ声でスープをテーブルに並べていく。
「……こんなに素晴らしい食事を、私がいただいてもいいの?」
前世の悲惨な記憶の癖で、つい遠慮がちな言葉が口を突いて出た。
すると、リンは悲しそうに眉を下げ、私の手をそっと両手で包み込んだ。
「何をおっしゃるのですか、ローゼマリー様。
貴女様はガルディニア帝国の、かけがえのない第一皇女殿下です。
この1年、私たちがどれほど貴女様のお目覚めを祈っていたか……。
どうか、ご遠慮なさらないでくださいね。何でも、お好きなものがあればすぐに用意させますから」
その温かい言葉が、前世で孤独のまま凍りついていた私の心にじんわりと染み込んでいく。
差し出されたスープを一口含むと、優しい温かさと豊かなコクが身体中に染み渡り、
張り詰めていた緊張が自然と解けていくのが分かった。
「――そうだとも。僕の可愛い妹に、最高のものを用意するのは当然のことだよ」
その時、低く心地よい声とともに、
部屋の入り口から豪奢な軍服を纏った銀髪の美青年が現れた。
ローゼマリーの記憶が、即座にその名前を導き出す。
第一皇子、アルベルト。
冷酷無比な帝国の天才魔導師であり、昏睡状態の私を誰よりも心配し、世界中から主治医を集めてくれた本当の「お兄様」だ。
「お兄様……」
アルベルトは私のベッドサイドに歩み寄ると、愛おしそうに私の黒髪を撫で、その端正な顔をフッと和ませた。
「1年も眠り続けていたんだ。まだ頭がぼんやりするだろう?
無理に動こうとしてはいけないよ。君がまたこうして僕の名前を呼んでくれただけで、この帝国のすべてを君に捧げてもいいとさえ思っている」
「……え?」
「君を苦しめる病のすべてを焼き尽くせなかった我が身の無力を、どれほど呪ったか。ローゼマリー、これからは僕が君のすべてを守る。
君を不快にさせるものは、この宮廷内から髪の毛一本すら残さず排除すると誓おう。
だから、君は何も心配せず、ただ幸せに笑っていればいいんだ」
その瞳に宿る、底なしの愛と、少し過保護すぎるほどの真剣な光。
前世のシャルロットには、私を信じ、守ってくれる家族などいなかった。
実の父親からは「我が家の恥」と罵られ、婚約者からは浮気相手の嘘を信じられて、雨の中に国を追われた。
あの時、私の言葉に耳を傾けてくれる人は、世界に一人も存在しなかった。
それなのに、この世界はどうだ。
目を開ければ、私を心から気遣うメイドがいて、私のために世界を敵に回しそうなほど愛してくれる兄がいる。
無条件で、ただ生きているだけで全肯定してもらえる環境。
(ああ……ここは、なんて温かくて、居心地がいい場所なのだろう)
胸の奥がツンと痛くなり、視界が少しだけ潤む。
ただ無力に死んだ私に、神様がくれた最高の居場所。
私はアルベルトの手の温もりを感じながら、静かに、だが深く決意した。
この優しい兄を、私を大切にしてくれるリンを、
そしてこの幸せな居場所を、今度こそ私の力で絶対に守り抜く。
そのためにも――私を奈落に突き落とした、あのカイルとエレン。
あなたたちへの復讐の手は、絶対に緩めない。
あなたたちがのうのうと暮らしているこの世界で、私は必ず本物の力を手に入れてみせる。
「ありがとう、お兄様。私、もう大丈夫です」
私は前世のシャルロットとしての冷たい決意を胸の奥に隠し、ローゼマリーとして、
世界で一番幸せそうな笑みを浮かべた。
コメント
2件
るーらは本当にすごいと改めて思ったぁ!!! めっちゃ最高やないですか、、!! こりゃあ明日学校だけどシルバーウィークの癖で部屋にiPad持ち込んで正解ですなぁ
第2話、読み終わったよー!めちゃくちゃ良かった…!まず朝食シーン、前世の冷え切った残り物と今世の温かいスープの対比が胸に刺さりすぎた。リンが「かけがえのない第一皇女」って言ってくれたときは思わず泣きそうになったよ。アルベルト兄様の過保護すぎる愛も最高だし、「君を不快にさせるものは排除する」ってセリフ、脳内でリピートしてる。でも最後の復讐の決意、ローゼマリーの笑顔に隠れた冷たさがめっちゃカッコいい。この温かさを守るために強くなるって展開、これからガチで熱くなりそう🔥