・ttmn
・死ネタ
・mb喋る
・かなり人を選ぶ内容
・なんでも許せる人向け
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ようやく、ようやくたどり着いた。
住民を殺し、俺の故郷だって燃やされた。俺の、俺らの希望と平穏を奪った犯人の、KOZAKA-Cの最大拠点を見つけ、この街を守るためという名の復讐劇に幕を下ろすために乗り込み。
少し僕だけ遅れていたため、直ぐに参戦する。
が、視界に映った地面に伏している仲間の、マナくん身体に思考が停止した。
マナくんには住民の避難を徹底してもらっているはずだ。
なぜここにマナくんがいるんだろう。なぜウェンくんとリトくんは泣いてるのだろう。
なぜ、アイツは笑っているのだろう。
「ヒーローという特別である君の命は、僕の命を重くしてくれる ヒーロー育成期間からずっと思ってたよ」
いま、アイツは何て言った?マナくんがあいつの教え子?
…管理人が、ヒーローを殺した…?
「おや、君も来たのか…、復讐のためかい?でも残念だね、今ならまだ間に合うかもしれないよ」
「間に合う…?」
「分からないかな、緋八くんはまだ辛うじて生きている。そういう風にしたからね」
ひゅ、と息を飲む。一瞬の間、だけどあいつは気にする素振りも見せない。
何で俺らはこんな奴と、
「…..早くしてくれるかい?予定が詰まっているんだ」
手に持つ凶器に殺意を乗せた行動にあっけなく刺され倒れ行く管理人に視線を送る。
終わった、あまりにもあっけなく終わった、特に何も浮かばなかった。
「そうだ、マナくん…どうなったんだろう」
地面に伏してるマナくんに近づく、アイツは間に合うと言っていた。
故に俺は楽観視していた所もあったんだと思う、その言葉さえ出まかせだと気づくまでは。
「ウェンくん、おわったよ」
「…っ、ごめん、テツ…僕じゃ力不足だった、僕じゃマナを、救えなかった」
「えっ―――――マナ、くん…?」
俺でも見たらわかるほど、手遅れだった。リトくんが患部を強く抑えていても、 あふれ出していただろう命の証。どこが助かるかもしれないだ、こんなの手遅れに決まってる。
「マナくん、終わったよ…俺らの復讐」
答え何て返ってこない、そんな事は分かっている。分かっては、いる。
腹部を刺され、声を出せないように首も切られ、 反抗できないように腕を縛られ、逃げれないように足を切られた。
そんなボロボロの身体なのに、顔だけはなにもされていないのか綺麗で ただそれは外傷がないだけで、口周りは血塗れで
いくら声をかけても、反応を示さない。身体も、笑えちゃうくらい暖かかったはずなのにもう冷たい。
ああ、俺は何て薄情なんだろう。マナくんが死んだのに涙一つ出てこないや。
隣で大声をあげて泣いているウェンくんや声を押し殺して泣いているリトくんのほうがよっぽど、人間らしい
ただ、俺はこの空虚な心を誰に向ければいいのだろう。またヒーローをやる?
もう戻ってこないあの日々を覚えているのに?
ああ…復讐が終わった。なのになんて、空しい。
俺の復讐劇は、終わった。隣を歩く人も減った。声をかけてくる人も減った。
この数か月をヒーロー活動に費やした、それだけでこんなに疲れたのにマナくんはこれを上からの指示で膨大な数をやっていたと知った。
俺が更なるヒーローを目指し、活動し楽しい記憶を作っていた辺りでマナくんは壊れてしまっていた事実も知った。
そして俺は今、一人で遺品を整理してる。同期であり、友達でもあり、そして恋人でもあるマナくんと過したこの家には他の誰かを入れたくない。
ここで過ごしてた日々は間違いなく大切な物で 他人に踏み入られていい場所じゃない。
そして俺は見つけてしまった。
気にせず捨てれていたのならどれだけよかっただろう。
そう思ってしまうほどあっさり見つけてしまったのだ。
マナくんの日記とテツへと書かれたDVD。
画面からはマナくんの声がする、まだほんの数日しかたっていないのに、
もう何年も聞いていなかったようなそんな気持ちに苛まれるほどの優しい声。
過去の想い出を話すマナくんの声に頷き。そんなこともあったねと返答しても、
聞きたかった声は返ってくることなどはないのに。
滲む視界に映る、謝罪の文章と愛情の言葉。画面から聞こえてくるその声に俺は胸が裂けそうで。
どうせなら言ってほしかった、愛してるって声で伝えてほしかった。
「マナくんの馬鹿、そんなの…俺も愛してる、に決まってる」
そして知る、思い知らされる。
俺のたった一人の恋人だったマナくんはもう、横には居ない。
この空の下をどれだけ探しても金輪際見つからない事実に、
俺は
マナくんが死んでから初めて泣いた。
もう帰ってくることのない、誰よりも優しかった嘘つきの為に
俺は、泣く事しかできなかった。
マナくんが死んでから8ヶ月。オリエンスは解散して、もう誰が何をしているかも全員知らない。知ろうともしない。
僕は今日もお墓に行く。 毎日行っては淡々と話して、帰ってタバコを吸って食べて寝る。そんな日々を過ごしていた。
もう歩き慣れた道を歩く。すると、誰かが肩にぶつかった。
「あっ、すみませ…」
「テ…ッ、」
ふと、聞き慣れていたはずの声がして顔を上げる。
声の主はリトくんだった。
「あっ、、俺、この後用事あるからっ..」
「まっ、..まって、リトくん!!」
目を合わせるなりぐるんっと方向転換し、早歩きで去ろうとするリトくんの腕を掴む。
8ヶ月前と比べたらだいぶ細くなっていた。
「またっ、また集まろう、オリエンスっ、4人で!」
数日後。
ウェンくんに連絡を入れる。意外と返事は陽気で、変わっていないように見えた。
容姿を覗いて。
髪は完全に黒に染めていて、目の下にはクマがあった。 それはウェンくんだけじゃない。リトくんもだ。
変わったね~、ハハ、とか日常話をしながら家から持ってきたマナくんの衣服と日記、DVDと全財産を詰め込んだリュックサックを持って電車に乗った。
全員貯金してきたものやヒーロー活動で貰ったお金など、可能な限り絞り出して持ってきた。
このお金が尽きるまで、俺たちは電車を乗り継ぎするつもりだ。
できるだけ遠く、誰にも気づかれない場所へ。
ー
「よ~し、ついたぁ
で、なんで集まったの?僕たち」
「あ、言ってなかった? 単刀直入に言うね、一緒に死なない? 」
なんて言うとウェンくんは驚きすぎて噎せていた。 やっぱ中身は変わってないね~なんて笑って、山奥まで行くと気味が悪い廃墟があり、そのすぐ前には草が侵食した車が置いてあった。あ、ここなら丁度よさそう。
硬いドアを開け、乗り込む。 男3人では流石にキツかった。
運転席と助手席の椅子を力技で倒して、皆で会話できるようにする。 準備は万端だ。
俺はマッチを取りだし、シュッ、と火をつけた。
「この火で車全体が燃えるまで、全員で沢山話そう」
と言いマッチを後部座席に投げた。パチッ、パチという音が妙に心地いい。
全員で8ヶ月間何したか、最近あったこと、マナくんとの思い出を喉が渇くまで話し続けた。
「そういや、テツは妙にバッグが大きいけど何持ってきたの?」
「っ、これ、マナくんの服 せめてでも一緒に居たいなって」
「お前、そーゆーのは先言えってっ、」
全員煙のせいで息が上がっている。
「意外と余裕かと思ったけど、これっ、意外と 苦しいね、」
「つーか今思ったけどこれ、山火事とか大丈夫?」
「確かに、、まぁ死ぬし関係ないよ」
苦しいはずなのに心地いい。何故だろうか。
「っ、、わりぃ、俺もうそろそろダメかも」
「奇遇だね、僕もだよ」
「も~どんだけ仲いいのっ、僕もだけど」
「…俺、オリエンスが大好きっ、ウェンくんも、リトくんも、マナくんも全員っ、」
「ちょっ、泣かせないでよ~ 僕もに決まってるでしょ!」
「俺もっ、ずっと4人で居たかった!!みんなでゲームとかして、笑って、それでっ、」
「待って、最後にみんなでハグしよう、マナくんの服抱いて、」
「もちろん!」
クルマの中心に集まって、ウェンくんもリトくんも、マナくんの服も力いっぱい抱きしめる。
「オリエンス、解散っ、!!」
ウェンくんのそんな声が聞こえて、俺はもう耐えられなくなり目を閉じた。
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コメント
4件
久々に文豪を見た…泣いた
初コメ失礼しますあの、最っ高です涙止まりません
天才すぎて涙止まらん