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祖母の家に戻ると、「門限より早かったんやね」とからかわれた。
明日はまた長距離ドライブをしなければならないので、私たちは少し祖父母と話したあと、早めに寝る事にした。
両親や亮平、美奈歩たちも京都観光を満喫したようで、みんなお土産を買いまくっていた。
最終日の朝は、早めに朝食をとったあと、祖父母と一緒に下鴨神社にお参りに行った。
糺の森の清涼な空気を吸い、河合神社にお参りをして、美人鏡に「綺麗になりますように……」と念を込めてお化粧をほどこした。
相生社は縁結びの御利益があり、お作法がある。
絵馬にお願い事を書いたあと、絵馬を持って女性はお社に向かって右周りに二周し、三周目の途中で絵馬を奉納する。
そして正面に戻ったら二礼二拍手一礼でお参りをし、連理(れんり)の賢木(さかき)にある、鈴がつい御生曳の縄を二回引く……、というやり方だ。
絶賛婚活中の美奈歩は、私たちから指示をもらいながら「テンパる……」と言いつつも、無事にお参りを終えた。
その後、楼門を記念撮影し、本殿にお参りをしたあと、言社という十二支を祭ったお社があるけれど、自分の干支のお社にお参りをする。
そのあと、今年の干支のお社にお参りするんだとか。
そして『加茂みたらし茶屋』で、みたらし団子をいただく。
私たちが普段食べているお団子より、お餅が小さめで串に五つ刺さっている。
ちょっと恐いけど、人の頭と四肢を模しているんだそうだ。
そして十時になったあと、また下鴨神社の境内に戻り、『さるや』で申餅、良縁ぜんざい、鴨の氷室の氷と呼ばれる抹茶味のかき氷を食べた。
祖母はまめ豆茶を飲みながら、「相変わらずよぉ食べるなぁ」と感心していて、美奈歩は慣れているはずなのにドン引きしている。
すべき事を終え、祖父母からお漬物を沢山もらった私たちは、帰路につく事にした。
「また遊びに来ぃや」
「元気でな」
「秋にまた来るよ!」
私は車の窓から身を乗り出して手を振り、祖父母に別れを告げる。
「お世話になりました」
尊さんもお礼を言い、両親、亮平、美奈歩ともども東京を目指した。
**
「はぁー……、さすがに……」
八月十一日の夕方、五時間以上の運転を経て、私たちは三田のマンションに戻った。
ソファに座り込んだ尊さんに、私は「お疲れ様」を言い、ピンと思いついて洗面所へ向かう。
ちなみに町田さんは夏休み中だ。
私は洗面所からホットタオルと普通のタオルを持ってくると、尊さんの前に座って、靴下をびろーんと引っ張る。
「なんだ?」
「マッサージしてあげます」
私はホットタオルで尊さんの足を拭いてあげたあと、乾いたタオルで足を包み、指圧していく。
「指が疲れるだろ。そんなんいいよ」
「マッサージしただけで、骨折しませんよ」
「そうだけど……。あー……、気持ちいい……」
「お客さん、凝ってますね」
床の上に胡座をかいた私は、以前の恵のデートで体験した、マッサージ店での手つきを思い出し、じわぁ……と力を入れて揉んでいく。
ある程度揉んだあと、私は立ちあがって言う。
「ヘイ、ユー。床の上にうつ伏せになっちゃいなよ」
「誰だよ……」
尊さんは半笑いになりながら、言う通りにする。
私は彼の体を跨ぎ、首や肩から順番に丁寧に揉んでいった。
「運転お疲れ様です。付き合ってくれてありがとうございます」
「これからもなるべく毎年伺いたいから、当たり前の事だ」
「でも尊さんの負担が大きいから、次回は関東圏と日を分けて、新幹線で行ってもいいかもしれませんね」
「今までご両親や亮平さんは車で行ってたんだろ? まぁ、疲れると言えば疲れるけど、休めばなんとかなるし」
「うーん……」
しかし継父や亮平なら『大変だな』と思って終わりだったのに、尊さんが相手になると心配してしまう私は、あまりに現金すぎる。
「今日はもう、ゆっくりしましょうね。明日は近くの霊園に行くだけで終わりますけど、翌日からはケアンズですし」
「ああ。でもフライトは夜だから、急ぐ事はない」
「十九時四十分でしたっけ。機内食楽しみだなぁ~」
「朱里の食欲がなくなるのは、世界が終わる時だな……」
「そんな事を言うケツは……、こうだっ!」
私は両手で尊さんのお尻を揉む。
すると彼はビクッと体を震わせ、反射的に体をねじらせた。
「…………朱里さんのエッチ」
じっとりと私を睨んだ尊さんは、某国民的アニメのヒロインみたいな事を言う。
「あはは! ミトコちゃん、お夕飯何にする?」
「そうねぇ……」
私はしっかりノッてくれる尊さんと、床の上に転がってイチャイチャしながら、幸せを噛み締めていた。
彼は私がおふざけをすると「慣れてくれたように思えて嬉しい」と言った。
でも私も、かつては絶望の淵に立たされていた尊さんが、こんなに笑顔を見せておふざけしてくれる姿を見て、とても嬉しく思っている。
(もっともっと、二人で幸せを築いていきましょうね)
私は心の中で彼に語りかけ、ギューッと抱き締めた。
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