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𓏸𓏸はしばらく迷った末に、勇気を出してお母さんに尋ねた。「……あの、涼ちゃんを……私の家に、少しの間だけ連れて行くのは、ダメですか?」
お母さんは驚いた表情を見せたが、しばらく沈黙して考え込んだあと、そっと頷いた。
「……本当に……大丈夫なの?𓏸𓏸ちゃんにも、ご家族にも迷惑をかけちゃうかもしれないのに……」 それでも𓏸𓏸は真剣な目で答える。 「大丈夫です。どうしても、もう一度ちゃんと涼ちゃんと向き合いたいんです。」
お母さんは涙をこらえるように笑って「……ありがとう、お願いね」と託してくれた。
次の日、𓏸𓏸は学校が終わるとすぐに涼ちゃんの家へ「ピンポーン」と呼び鈴を鳴らしに行った。
お母さんと一緒に二階の涼ちゃんの部屋へ行く。
薄暗い部屋で、涼ちゃんはベッドに座ってぼんやりと窓の外を見ていた。
「涼ちゃん、今日からしばらく私の家に来ない? 私、すごく心配だったんだよ」
𓏸𓏸の声に、涼ちゃんはゆっくりと顔を向ける。
迷うような沈黙の中、お母さんが「行ってきなさい」とやさしく背を押した。
𓏸𓏸の家では、久しぶりに二人きりで過ごした。
𓏸𓏸は布団を敷き、少しでも栄養がとれるようにとお粥を作り、涼ちゃんのベッドの横にそっと置いた。
「お腹、空いてない? 無理しなくていいけど、少しでも食べてくれたらうれしいな……」
しかし涼ちゃんは手をつけず、静かに布団にくるまるだけ。
けれど、𓏸𓏸が「また明日、好きなもの作るね」と話すと、かすかにまぶたが動いた。
𓏸𓏸は涼ちゃんのそばに寄り添いながら、小さな声で問いかける。
「……涼ちゃん、何か、しんどかったら何でも言ってね。話したくなったら、いつでも聞くから」
静かな部屋の空気が、ゆっくりと流れる。
そのとき――
涼ちゃんがぽつりと、「……ありがとう……」とつぶやいた。
その声は弱々しいけれど、𓏸𓏸の耳には何より大きく温かく響いた。
久しぶりに聞いた涼ちゃんの声――
𓏸𓏸 の目には静かな涙が浮かび、心が少しだけ救われた気がした。
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