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210 - 第210話 番外編 <家族>

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2024年02月28日

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「今日は色々と報告会になりそうね」


「全てがいい話だから、それこそ大団円って感じじゃないか」


ノーカラーのシャツにジャケットとというプライベートモードの賢一がミニクーパーのハンドルを握り向かっているのは私の実家。

父から話があると言われて、集合が掛かった。

まぁ、大体は察しがつくんだけど。

さらに、花も実家を出ることになり新二くんと共に合流する。



実家は川崎市で駅からは少し遠いが戸建てだ。賢一の実家からすると半分以下かもっと小さい家だけど、私たちの大切なお城。

ちなみに賢一のお祖父さまの箱根の邸宅はほとんど老舗旅館レベルだ。

なので駐車スペースなどはないので近くのコインパーキングに駐車し車を降りると、見覚えのある車が入ってきた。

モスグリーンのコンパクトワゴン。

花と新二くんがミニキャンプにハマっていてこの車にしたそうだ。


助手席で手を振る花に私も振り返して二人が降りてくるのを待った。


「お姉ちゃん、お義兄さんもお久しぶりです」


「義姉さん、お久しぶりです」

新二くんとは花との話し合いの時以来だが、賢一から新二くんがきちんと過去に区切りをつけたときいている。

結局、花も新二くんと未来を作っていく決断をしたのだから、あとは応援するしかない。


ただ、花を泣かせたら二度と立ち上がれないほどメンタルをズタボロにしてやる。


「雪?なにかよからぬことを考えてた?」


「え?そんなことないよ」


「今、凶悪犯の表情をしてたから」

そう言って笑う賢一はきっと私の心なんて簡単に読んでいるんだろうと思う。



4人ならんで自宅のチャイムを押すとインターフォンから「開いてるぞ」と父の声が聞こえてきたが、いつもより幾分声が硬い気がする。



ドアを開けて入ると、玄関に父と一歩斜め後ろに上品そうな女性が立っていた。


父が「葛城敬子さん」と言って照れ臭そうに紹介してくれた。


「長女の大島雪です、そして夫の賢一です」


賢一は初めましてと言って軽く会釈をする。


「次女の花です。そして、えーっと」

花がなんて言って紹介しようかと詰まっていると「花さんとお付き合いさせていただいている大島新二です」と、爽やかに挨拶をした。


以前の不遜な態度は影を潜め普通の感じの良い青年になった。

あの頃は森川さんに愛されたくて周りを牽制していたのかもしれない。


「皆んな上がって、敬子さんが色々と用意をしてくれたんだ」


父に誘導されリビングに入るとテーブルの上には手巻き寿司や煮物、揚げ物がズラリと並んでいた。


「えええ、これ全部敬子さんが準備してくださったんですか?あっ、敬子さんって呼ばせていただいても良いですか?」


「ええ、そう呼んでください。私の方は」


「気軽に雪と呼んでください」


「わたしも花で」


「ありがとう雪さん、花さん」


敬子さんの感じの良さと、それ以上に隣にいる父が幸せそうで、それだけで嬉しい。


母だった人が出て行ってからずっと、一人で娘2人を育ててくれた父、私も花もこの家を出て行った時に一人残される父のことが気がかりだった。

父には、父親としてだけではなく男としても幸せになって欲しいと、賢一と結婚してからより強く思うようになった。



皆んな席についたとき、今まで見たこともないくらい父が緊張していた。


「あーその、なんだ、先に言っておきたいんだが・・・いいだろうか?」


私は花と顔を見合わせてから大きく頷いた。



「実は、敬子さんと籍を入れようと思っているんだが、どうだろう?」


モジモジしている父の隣で敬子さんは緊張の面持ちで固まっている。


「そんなの、二人の気持ちが固まっているのならいいに決まってるでしょ」


「うん、わたしもお父さんに幸せになって欲しいもん」


「「ね」」と、花と一緒に頷く。


「ふつつかな父ですが、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」

敬子さんは一気に力が抜けたのか柔らかく笑った。


「よかった、実はわたしもこの家を出て新と住むことにしたんだけど、お父さん一人で心配だったの」


さらっと言った花の言葉にキッと新二くんを見ると雪豹に睨まれた野うさぎの如く一瞬怯えの色が見えた。


「あの、その」

言葉にならない新二くんの代わりに花が答える。

「お姉ちゃん、心配しなくて大丈夫だから」


花が好きなんだから仕方がない。


「くれぐれもよろしくね」


「はい、絶対に花を悲しませたりしません」


新二くんはキッパリと言い切り、それを聞いた賢一は私の肩をそっと抱いた。


「じゃあ、乾杯でもしようか」


父が満面の笑顔でビール瓶を持ってグラスに注ごうした時

「「「「車!」」」」

と、綺麗なカルテットになった。


「そうか」と残念そうな父がかわいそうに見えて、「泊まってく?」と花に振ると「皆んなで泊まる?」と新二くんに確認をとっている。


「お邪魔じゃなければ、泊めて貰おうか?花の部屋も見たいし」


「じゃあ、決まりだ」と父は嬉しそうに花と新二くんのグラスにビールを注いだ。


「お姉ちゃんは?」


「今、禁酒中なの」


「何で?お姉ちゃんお酒大好きなのに」


「実は、お腹に」


「ええええええ!うっそ!!ママになるの!!」


父も敬子さんも驚いた顔をしたが、すぐにこれ以上ないほどの笑顔に変わった。


「おめでとう」みんなが一斉にお祝いの言葉をくれる。


「雪がお酒をやめているから、俺も一緒に禁酒中なんだ。だから、悪いけどお茶にするよ」


父も花も私も嬉しいことしかない、みんなが素敵な未来に向けて歩き出した。


「そろそろ食事を頂こう、敬子さんの料理、すごく美味しそう」


「そうだね」


そして、しばらくは食事を楽しんだ。


敬子さんは看護師で医薬品メーカーの配達をしている父とは敬子さんが勤めている病院で知り合ったそうだ。

何度か話をしているうちに昼食を誘い、夕食を誘えるようになって交際を申し込んだらしい。


何だか父の青春話を聞いているようで私の方が照れてしまうが、今の二人が幸せそうでよかった。


敬子さんには子供がおらず、10年前に旦那さんが脳梗塞で倒れあっけなく鬼籍に入ってしまい、しばらくは放心状態だったそうだ。

そんな風に唐突に別れが来たら、私は耐えられるだろうか?






ピンポーン


宅配かセールスくらいしか来ることのない状況で父の表情からすると宅配とは思えない。

ということはセールスだろうから私が出てビッシとお断りしようと立ち上がる。


「私が出るからいいよ」


「それなら、よろしく」と、皆んながまた和気藹々とテーブルを囲んでいる。


廊下に出てテレビモニターを確認すると、そこには思いもしない人が立っていた。


急いで玄関に行き、靴を履くとドアを少し開けてそこから外に出た。


「何しに来たの」


「雪?あなた雪なの?一瞬わからなかったわ」


「だから、私の質問に答えて」


女性の腕を掴むと玄関から死角に入る所に移動する。


「すごく綺麗になって、本当に久しぶりね」


目の前の女性は綺麗に化粧もネイルもして、パッと見なら年齢よりも若く見えるが、近くで見ると若造をしているのがありありとわかる。

この女の本性を知っているから、その容姿はあざとくそして醜悪に見えた。


「何度も言わせないで、何をしに来たの」


「そりゃあ、パパに会いに来たに決まってるでしょ」


「父さんが来ていいって言ったの?」


「パパは口に出すタイプじゃないから、でも来ると嬉しそうだし」


「もう一度聞くけど、父さんはあなたにまた来ていいって言ってるの?」


「だから、態度でわかるのよ」



そうか、この人は森川彩香に似ているんだ。


「父さんはあなたに会いたくないわ、もう二度とここには来ないで」


「親に向かって失礼な子ね」


親?誰が?


やめてよ、あんたなんか親じゃない。


「私たちを捨てておいて、おとこ」

肩をポンと軽くタッチされ我に返る。

振り返ると賢一が立っていた。多分、目の前の女性が誰なのか察したのかもしれない。


賢一はポケットから車のキーを取り出して私の手に握らせた。


「車で待っていて」


小さく頷くと、母だった女の手を掴み駐車場へ向かった。


女を後部座席に座らせ、私は運転席に座った。

並んで座りたくないし、顔も見たくなかった。


「私たちを捨てて出て行ったあなたが今更何んの為に家に来るのか?と聞いているの」


「あの時は本当に悪かったと思ってるの、周りが何も見えなくなって、あの人と出会ったのは運命だと思った。でも、癌になった時、わたしを心配してくれたのはパパだけだったの。本当の運命の人はやっぱりパパなんだって」


運命?あながたそんな言葉を使わないで、気持ち悪い。


「だから、パパに応えてあげようと思って」


どうしようもなく、胸がムカムカとする。


父さんは優しすぎる。


うんざりしていると、コンコンという音のする方をみると、肩を大きく上下させ、ものすごく走って来たであろう父が窓をたたいていた。



賢一が父さんに伝えてくれたんだ。


父さんは後部座席にいる女を車から降ろすと低くそしてはっきりとした口調で


「何度も言っているが、手術費を出したのはあくまでも雪と花にとっては君は母親だからだ。ただ、今後一切は1円たりとも君には出すつもりまないし、わたしと君は赤の他人なんだ。今後、まだ家にくるならストーカーとして警察に突き出す」


さすがにストーカーという言葉と警察という言葉にたじろういだようだった。

「ごめんなさい、でもパパも一人じゃ寂しいでしょ?だから、私が戻ってあげようと思って」


厚顔無恥というのはこの人のためにあるんじゃないだろうかと思うほど、この女性の言葉は聞くに堪えない。

ヒロイン妄想とでもいうのだろうか、綾香る(あやかる)という言葉でもつけてやろうかと思ったが、ここで私が言葉を発してはいけない気がした。


「結構だ。わたしは再婚するから君が来るのは迷惑でしかない。これ以上は言わないから、きちんと理解してくれ。二度とここへは来るな。来たらストーカーとして警察に言う。」

「さぁ雪、行こう。みんなが待ってる」


母だった人を残して二人で家に向かって歩いていく。



「父さんはちゃんとあの女(ひと)のことを拒絶していたんだね」


「そりゃ、わたしが彼女を受け入れる理由が無い。拒絶をしたのは彼女なんだから」


「うん」


「賢一くんも新二くんもいい子だね。安心したよ」



「うん、凄くいい人よ。お父さん、幸せになってね」



「わたしは今までだって雪と花のおかげで楽しいよ、親としてあまりやってあげられなかったけどな」


「お父さんとしては満点はあげられないけど95点ね」


「それだけあるなら上等だ。そうだ今度、敬子さんとソシアルダンスを始めようと思ってるんだ」


「Shall we ダンス?の?」


「まぁ、そうだな」


「素敵!しかも健康にもいいじゃない!上達したら見せてね」


「はははは」

「さて、家に着いた。皆んなが待ってる」


「私の部屋はもう好きにしていいんだからね!」


部屋が私が使っていたそのままで残されているため、皆んなの前で公言した。これで模様替えもしやすくなるといいけど。


結局、私も賢一もお酒は飲んでいないが花達に付き合って泊まることにして、私の部屋は私と賢一、花の部屋は花と新二くんが泊まる。


「雪の部屋かぁ、一人暮らしをしていたあの部屋とあまり変わらないんだな」


「住んでる人間は同じだから。でもここも、お父さん達が変えてくれればいいなぁと思う」


「そうだね、素敵な二人だね」


「賢一の両親には敵わないけどね」


「あーそうだね」

賢一は少し遠い目をする。

「まぁ、俺は親父よりももっと甘くする予定だけど、そうだな『副社長は溺愛あまあまモンスター』ってのはどう?」


「もう、また!!」

ふざけてはいるけれど、あの女(ひと)がきた時に、すぐに気がついてくれた賢一には感謝しかない。

「さっきは、お父さんを連れてきてくれてありがとう」


「話は出来た?」


「うん、てかお父さんが凄くキリッとしていて初めてかっこいいって思った」


「う〜ん、なんか妬けるな」


「何を言ってんの!父親だよ」


「でも、お義父さんって何気にイケメンだよね」


「そうかも、でも私にとっては賢一が一番イケメンだと思う」


「さすが有能秘書だね、でももっと欲しい言葉があるんだけど」


「世界で1番愛してる?」


「そこ、なんで疑問形」


「ふふふ」


賢一はそっと私のお腹に手を添える

「どんどん家族が増えていくのは幸せも増えていくことなんだな」


「責任も増えていくけどね」


「う〜ん、雪は現実的だね。でも、そこがまた魅力的で愛さずにはいられないけどね」

「寝ようか」


電気を消して、賢一の腕の中にすっぽりと入ると、隣の花の部屋から艶かしい声が聞こえてきた。


「ちょっと、壁を叩いてもいい?」


「う〜ん、できれば聞こえない振りをしてあげるという選択はアリ?」


「わかった、明日の朝、新二くんをシメてもいい?」


「それは仕方がないかな」


はははははは

あははははは


ドンっ!!!


笑いすぎて腕が壁に当たってしまった。


決してわざとではないけど、隣はすっかり静かになった。



翌朝、花と新二くんが妙にソワソワしていたけど、気がつかなかった振りをしておいた。


帰りの車中は二人で爆笑しながら帰った。







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