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兄貴の攻撃は、一撃が非常に重い。

しかも、攻撃用のスキルをほとんど使わない戦闘スタイル。下位クラスのなかでは珍しいタイプではある。

でも、僕の周りに至ってはそれが日常といえるのが、なんともいえない。


そして、兄貴が前の学校で『戦鬼』と物騒な異名で言われていたのにはちゃんと理由がある。


「ふっ、はっ! 志信、また一段と動きがよくなりすぎなんじゃないのかっ」

「それほどでもっ!」


その一撃の速さだけではない。

接いでくる連撃――これが、その異名がついた所以だ。

一撃、二撃、三撃――これらは一撃で仕留めることだけを視野に入れず、必ず追撃を考えた攻撃。

足の運び方、体の向き、筋肉の使い方、それら一つ一つの動作が精密に計算されている。

攻撃だけを考えていないような、いわゆる脳筋のような雰囲気をかもしだしてはいるが、その戦闘スタイルと思考は似ても似つかずだ。


僕がとるのは、防御と回避。

防御――スキルを発動しているからといって、そう易々と受け止めれるわけじゃない。あくまでも、無効化ではなく衝撃軽減の役割しか果たさない。

受け流す、これが最適解だ。


「それにしてもっ――志信のそれはっ、普通じゃないよ、なっ!」


【フィジックバリア】の再使用時間を回避と【ブロッキング】で凌ぐ。

一撃一撃を見極め、極力攻撃を食らわないように立ち回る。


連撃を終えた兄貴は、距離をとって呼吸を整え始めた。


「はぁ……はぁ――一旦休憩」

「……賛成」


僕の声を合図に、2人とも崩れるように床におしりをつけた。


「兄貴も相変わらずヤバいって」

「あっはは、そうか? みんなこんな感じじゃないのか?」

「そうではないでしょ」


兄貴は頭の上に『?』を浮かべながら首を傾げている。

無自覚努力人間。まるで、どこかの物語で無双する主人公のような、「また僕なにかやっちゃいました?」なんてセリフがいつか聞けそうだ。


小休憩を挟んでいると、扉が開いて、僕たちの視線がそちらに向いた。


「うわーっ、すっごーい」


なんと、そこには、あろうことか|結月《ゆづき》がいた。


「ん? お客さんか? ……あー、もしかして――はいはい、なるほどなるほど。なんだなんだー志信、そうだったら早く言ってくれよな、ここら辺で終わりにするか」

「いやいや、そういうんじゃないから」

「そうなのか?」


僕は必死に首を縦に振って抗議した。

なぜ、普段は能天気なような立ち回りをしているのに、こういうことだけは頭が回るのか。というツッコミを入れたいところではあるけど、そこをグッと堪えて、


「結月どうしたの? 楓と椿は?」

「話疲れちゃったみたいで、気持ちよさそうに可愛い顔して寝ちゃったんだよねぇ」

「え……じゃあ、どうやってここに来たの」

「それも、お話している最中に教えてもらったんだ―っ」


いやもう、なにもかもが無茶苦茶だ。

客人? が来ているのに寝てしまった楓と椿には、後からキツイお灸を据えてあげないといけないな。


「ねえねえ、ここで2人ともなにしてたの? というか、そちらの人は?」

「ああ、こっちは兄貴の逸真」

「どもども、志信の兄です。えーっと、いつも志信がお世話になってます」

「はいはい! いつも志信のお世話をしちゃってます! よろしくお願いしますっ」

「そんなことは微塵もないからね。というか、結月は数日前に転校してきたばっかりだからね。というか、ちゃんと自己紹介してよ」


結月は悪びれもせずにウインクして軽く舌を出している。


「初めまして、私は月刀結月です。志信とは短い付き合いですけど、よろしくさせてもらってますっ」


ちゃんとした挨拶ができるじゃないか、とため息を零れてしまう。


「それで、ここでなにをやっていたの? まさか、喧嘩⁉」

「いや、そんなことはしてないけど、単なる練習だよ」

「ほえぇー! なにそれ気になる。志信ってアコライトだよね? それに、お兄さんはウォーリア? スキル回しの練習とか?」

「そうといえばそうだし、そうでないといえばそうではない……かな」


兄貴の言葉に、「ほおほお」と興味を示している。


「せっかくだし、結月も――」


僕は、結月にこの練習に混ざるかという提案をしようとしたが、途中で言葉をやめた。

それは、彼女の服装にあった。

今、初めて結月の服装をみた。

白透明な長袖のレースを羽織り、中は水色の半袖。

同じく水色のミニスカートに白のニーハイソックス。

耳元には光が反射するピンク色のイヤリングに、補足煌びやかな細いネックレスをしている。

完全なる女子のオシャレコーデ。まるで外食やデートに着ていく服装をしている。スタイルのよさや外見を総合したら、まるでモデルが雑誌の撮影用に着飾っているようにもみえる。


だから言葉を止めた。

たぶん結月の場合、こんな状況であれば誘われたら真っ先に飛び込んでくるだろう。

あの服を汚させるのも抵抗があるし――というか、あんな服装で動き回られたら目のやり場に困ってしまう。


「――そこで見学してるといいよ」

「うん、そうするねっ」


壁沿いに腰を下ろしたのを確認して、僕は立ち上がった。

それをみた兄貴も、同じく立ち上がる。


「そうだ兄貴、まだ試したい……いや、チャレンジしてみたいことがあるんだ」


僕は思い出した。結月の動きを――

至近距離戦闘、あれは僕のなかでの常識を完全に破壊した。

最小限動作での回避。最短距離での反撃。

リスクが高いにしても、戦闘効率を格段と上げることができる。


「ああいいぜ、よっし始めっか!」


――見様見真似の動作はやはり、かなりの失敗を誘発した。

今までほとんど攻撃を食らわないように立ち回っていたのに、かなりの頻度で攻撃を食らうようになってしまった。

体の使い方も、盾の使い方も、それらは互いに喧嘩しているかのようにかみ合わず、何度も何度も痛い目をみた。


僕たちを見学する結月は、終始「ほお!」「おぉ!」と声を発していた。

興味津々なのはいいけど、こんな状況をみて喜んでいるのは不思議すぎる。


試行錯誤と苦痛との戦いは夕方まで続いて、時間的にも解散となった――。

転校から始まる支援強化魔法術師の成り上がり

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