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𝕣𝕖𝕒𝕣
395
#ご本人様には関係ありません
あか
261
#からぴち
琉愛˚𓆩✞𓆪˙
191
キーワード:指・味見・糸・おあずけ
閉店後のカウンターで、勇斗は新作のカクテルに添える、小さなフルーツの飾り切りを試作していた。
まな板の上には、薄く削がれたオレンジやライムが、彩りよく並んでいる。灯りを落とした店内には、包丁がまな板を叩く小さな音だけが、規則正しく響いていた。
「仁人くん、これ、味見してみて」
差し出されたのは、蜜に絡めた一切れのオレンジだった。仁人は素直に手を伸ばそうとしたが、勇斗はそれをするりとかわし、代わりに、自分の指先で摘まみ上げる。
「手、使わなくていいよ。汚れちゃうし、こっちの方が早いから」
「いや、普通に自分で食べられます」
「まぁまぁ、いいから」
有無を言わせぬ調子で、勇斗はオレンジを、仁人の唇へと近づけた。仕方なく、仁人はそれを口に含む。蜜の甘さが、舌の上に広がった。
「どう?」
「美味しいです、普通に」
「普通にって、感想として味気なくない?」
「これ以上、何を求めてるんですか」
呆れたように返す仁人を、勇斗はどこか楽しそうに眺めていた。
指先に残った蜜が、透明な糸を引きながら、ゆっくりと落ちていく。
「もう一個、食べる?」
「もう、いいです。普通のペースで飲みたいので」
「まぁまぁ、そう言わずに」
再び差し出された指先に、仁人は少しだけ躊躇った後、結局、口を寄せることにした。今度は、先ほどよりも、指先に近い場所を、唇で受け止める格好になる。
その瞬間、勇斗の目が、わずかに細まった。
「今の、結構いい眺めだった」
「何がですか」
「仁人くんの唇と、俺の指の間に、糸引いてたの。見た?」
「は?見えるわけないでしょう、自分では」
指摘されて、仁人は思わず、口元を拭った。だが、その仕草すら、勇斗の目には、たまらなく魅力的に映っているらしい。
「気持ち悪い視線やめてもらっていいですか」
「見るよ、そりゃ。美味しそうに食べてる顔、見てるだけで、結構楽しいから」
「味見させてるだけで、変な満足感得ないでください」
そっけない返しに、さらに悪戯心が膨らむ。
「じゃあ、もう一個だけ」
そう言って差し出された指先を、仁人が軽く口を開けて含もうとした、その寸前。
「なんてね。今日はこれで、おしまい」
すっと引かれた指先に、仁人は間の抜けた顔で、宙を見つめることになった。
「いや、なんなんですか、それ」
「焦らすのも、たまには楽しいなって」
得意げに笑う勇斗を前に、仁人はむっとした顔で、腕を組んだ。
「性格悪いですね、それ」
「よく言われる」
悪びれもせずそう言う勇斗に、それ以上文句を続ける気力もなく、小さく息を吐いた。
しばらくして、勇斗は仕上がった飾り切りを、グラスの縁に添えながら、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、このカクテル、まだ名前決めてないんだよね。仁人くん、何か案ある?」
「俺に振らないでください、そういうの苦手なので」
「そう言わずに。仁人くんの感想が、一番参考になるんだけどな」
「──おあずけ、とかどうですか。さっきの、あれ」
思わず零れた一言に、勇斗は目を丸くしてから、堪えきれないというように笑い出した。
「それ、絶対今の仕返しでしょ」
「違います。ただの提案です」
つんとした顔で言い張る仁人に、勇斗はますます楽しそうに目を細める。
「いいね、それ。採用しようかな」
「本当に採用する気ですか」
「うん。仁人くんが名付け親になったカクテル、なんか特別な感じするし」
その言葉に、仁人は今度こそ、返す言葉を失ってしまった。カウンターに残った、蜜の甘い香りだけが、この夜のささやかな戯れの余韻を、静かに漂わせ続けていた。
「次は、ちゃんと最後まで味見させてください」
「お、興味出てきた?」
「違います。ただの、味の感想を言いたいだけです」
強がる仁人に、勇斗は満足げに笑うだけだった。
指で何かを食べさせるのって、色気あるよねって話。
舐めさせればよかった()
気が向いたら修正します。
コメント
1件
あおいです、読ませていただきました🌷 もう、この距離感がたまらないですね……! 指でオレンジを差し出して「手、使わなくていいよ」って言う勇斗さんの自然な悪戯心と、それに乗せられつつもツンツンしている仁人くんの反応が絶妙で、読んでいるこちらまでドキドキしました。特に「おあずけ」って名付けちゃう仁人くんの仕返し、可愛すぎます🤍 二人の言葉のキャッチボールの合間に、指に残った蜜の糸や香りの描写が入るから、余韻がすごく甘やかで……(*´ー`*) 続きが気になりますっ!