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「一弥先輩……? 何を言ってるんですか? 一弥先輩は恭香先輩のことが好き……? そんなの……」
「ああ、そうだよ。僕は、恭香ちゃんのことが好きだ。恭香ちゃんは、可愛くて、優しくて、笑顔の素敵な素晴らしい女性だから」
これって……
一弥先輩が、私に告白してるの?
信じられない言葉達に、大きく動揺してしまう。
「ちょっと待って下さいよ。恭香先輩を好きとか有り得ないです。それに、どさくさに紛れて私の前で告白するとか、マジでヤバくないですか? 本当、信じられないんですけど」
「ごめん。僕も、こんな形で言うつもりは無かったのに……。でも、もう、黙っていられなかったんだ。ずっと……恭香ちゃんに言いたかったから、僕の気持ちを」
一弥先輩が私に告白してくれるなんて、驚き過ぎて言葉がでない。
「きょ、恭香先輩を好きだって言っても、人としてですよね? 優しいとかそういうところが好きなだけで、まさか女として見てるわけじゃないですよね?」
「もちろん人としても好きだよ。だけど……僕は、本当に恭香ちゃんのことが好きなんだ。僕は今、女性として恭香ちゃんを想ってる」
そんな……
この私を女として好きだと言ってくれてるの?
一弥先輩が?
大好きだった一弥先輩が、私を……?
もう何が何だかわからなくて、全然理解できない。
「嘘みたい。一弥先輩って、本当に見る目ないんですね。恭香先輩より菜々子先輩の方が絶対綺麗なのに。恭香先輩なんて何にもいいとこないじゃないですか。男に媚びることしかできない人なのに! こんな人に騙されるなんて、一弥先輩のこと見損ないました!! 本当に本当に2人とも最低です!」
梨花ちゃんはそう言って、ドアを激しく閉めて出ていってしまった。
媚びを売る女――
そんな風に見られていることが悲しい。
誰だってみんな男性と話している。私だけが一弥先輩や朋也さんと話しているわけではない。
確かに意識はしているかも知れないけれど、だからといって、わざとかわい子ぶったりもしていないつもりだ。
「恭香ちゃん。梨花ちゃんの言葉なんか気にしちゃダメだよ」
呆然としている私を励ましてくれる一弥先輩。
「す、すみません……。ちょっと……キツかったです。梨花ちゃんは悪い子じゃないし、コピーライターとしての才能もあります。でも……どうしちゃったんですかね……なんだか、胸が苦しいです」
梨花ちゃんのことを一弥先輩の前で悪く言っている自分が嫌になる。
「梨花ちゃんが悪い子じゃないのはわかるけど……だけど、僕はあんなひどいことを言える女性はやっぱり嫌だよ。僕は……優しい人が良い。恭香ちゃんみたいな」
「一弥先輩……。びっくりしました。さっきのこと。あれは夢だったんですかね?」
本当にまだ夢の中にいるようで、現実味がない。
梨花ちゃんがいなくなってさらにそう感じた。
「本当にごめん。突然あんなことを言うなんて自分でもびっくりしてる。だけど、嘘じゃないんだ、あれは僕の本心だから……」
「一弥先輩……。やっぱり私、まだ理解に苦しみます。梨花ちゃんの言う通りですよ。私なんかより菜々子先輩の方がずっとずっと綺麗なのに……」
「……」
一弥先輩は黙っている。
「……私、前にも言いましたよね。一弥先輩が菜々子先輩に告白するのを見たって。あの時、すごく悲しくてつらくて、部屋に帰ってからいっぱいいっぱい泣きました。」
「恭香ちゃん……」
「確かに、私は一弥先輩のことが好きでした」
言ってしまった……
どうしよう、後先考えずに……
「えっ……」
「ずっと……好きだったんです」
「……でした? それって、もう過去形なの? 僕のことを好きでいてくれたのに、今はもう好きじゃないってこと?」
「……ごめんなさい。私、本当に最低です。いろいろ決めれなくて、ダメな女なんです」
「そんな、どうして謝るの? 君は何も悪くないのに」
「……私、本当に今、自分のことがよくわからなくて……不安でどうしようもなくて……でも答えが出せなくて」
深く頭を下げる私の両肩を、一弥先輩が両手で優しくつかんだ。
「恭香……ちゃん」
名前を呼ばれ、私はゆっくり顔を上げた。
すぐ目の前で、一弥先輩が優しい潤んだ瞳で私を見下ろしている。こんな近くで一弥先輩を見たことは今まで無かった。
嘘みたいに整った綺麗な顔……
肌もスベスベで、吸い込まれそうな二重の大きな瞳が、私のことを捕まえて離さなかった。
胸がドキドキして、体が熱い。
私は、一弥先輩のことがずっとずっと好きだった。
本当に大好きだった。
心の奥から溢れ出すその想い。
嫌だ……また涙が出てくる。
泣いてばかりで、涙腺が緩過ぎる。
「泣かないで……。恭香ちゃんが泣くと、僕まで悲しくなるよ。まさか、君が僕のことを好きでいてくれたなんて……」
一弥先輩は、私の頬を伝う涙をそっと指で拭ってくれた。