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太陽の光に起こされた。土曜日、いつもは何もせず無駄にする休日だけど、今日は違う。
顔を洗っていつもより見た目に気を使うように支度をしていると、スマホの通知音が鳴った。
『ごめん一時間遅れるかも』
ナツキからだ。今日はナツキと一緒に私の思い出の場所に行くことになった。
友達と出かけるのなんて何年ぶりだろう。
『了解!急がなくて大丈夫』
そう返信して、昨日の飲み会の帰りを思い出す。
*
「フウカ!」
体調が悪いと言って店を出たとき、後ろからナツキに呼び止められた。
「ナツキ、なんで?」
「なんか元気ないから心配で、追いかけちゃった」
歯を見せて笑うその笑顔が、あの子に似ていてつい目を逸らしてしまった。
「体調悪いだけだって」
嘘だ。嘘なのに誤魔化す気力も無くて、無意識に頬に涙が流れた。
その感触は、大人になってからも、何度も何度も感じたものだった。
「私でよければさ、話聞くよ」
ナツキのさっきとは違う微笑み方に、やっぱりあの子の笑顔が重なり合ってしまう。あのことを、何年も引きずってしまっている私が明確になる瞬間が、嫌になる。
ガコンッと音を立てて落ちてきた缶コーヒーをナツキから受け取り、ベンチに座る。
「さ、何があったのか聞こうか」
空気を柔らかくするためか、ナツキが下手な変顔をしてそう言ってきた。
一度目を瞑り、深呼吸をする。
記憶を巡り、鮮明に思い出されるそれが、ナツキに話した過去の話だ。
*
「神様はね、いつも私たちを見てるんだよ」
近くの神社でタイムカプセルを埋めに行った帰り、寄り道して見つけた喫茶店。
ミドリが突然そんなことを言い出すから、メロンソーダを吹き出しそうになった。
「やっぱり宗教勧誘だよね?」
「違いますっ」
いつかと同じ会話とミドリの表情。最近やたらと神様について話してくる。
「神様神様言われすぎて頭がおかしくなりそうだー」
頭を抱える仕草をしようとしたら、肘に何かがぶつかってカシャンッと音がした。
「うわっ」
メロンソーダがこぼれ、ミドリの制服が濡れてしまった。
店員さんから急いでタオルを受け取り、机を拭いて、ミドリは制服から体育用のジャージに着替えた。
「ほんっとごめん!」
顔の前で両手を合わせると「大丈夫だって」と笑って許してくれた。
「今日体育があってよかったー、神様のおかげだね!」
そう言いながら歯を見せて笑うミドリを見ると、神様はいるのかもしれないな、と少しだけ思った。そして、好きだなあとも。
「今好きって言った?」
「え!?」
無意識に心の声が口に出ていたらしい。
いくら友達でも好きなんて言葉はなんだか恥ずかしかった。
「ミドリのその笑い方、めっちゃ好きだなって」
「そういうことね!でしょうね!」
「なんかドヤってるのムカつく」
こうやって二人で笑いあう毎日が、ずっと続くと思ってた。