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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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──『ポァ』第2予選が終わり、数日が経った日の大庭。


リヨクは、クロスケ、タカシと石の円に座り、焼き菓子『連続硬ヤウデュオ』を食べながら話していた。


──「リヨク、学年ランキング入りすごいね」クロスケ。


「うん、ポピュアで3人目だって」リヨク。

「…たぶん旧楽園の子に勝ったからだ」タカシ。

「うん、ぼくもそう思う」リヨク。


「いいなー、ぼくも一度でいいから褒められてみたいよ」クロスケ。


「褒められるのって、なんか恥ずかしいよ?」リヨク。


「そうなんだ。てかそれ、なんだったの?」


クロスケは、リヨクが膝の上に置いている植物の皮でできた箱を指差して言った。


「それメヒワ先生にもらってたやつ……」タカシは興味ありげにボソッとつぶやいた。


「なんか、ポップコーンのタネとかタンポポとか色々入ってた」リヨク。


「みせて!」


「いいけど、全部地球にも生えてる植物だからつまんないよ?」


リヨクは、植物の皮でできた箱を開けた。


──「なにこれ?」


クロスケは、『諦めてはいけない、逃げてはいけない』と書かれた紙を取り出して言った。


「しらない。なんか適性みた時にも同じこと言われたんだ」


「へぇ〜」──「ん?」


クロスケはタカシに肩を叩かれ振り返った。


「ぼくら、呼ばれてる」


「呼ばれちゃったかぁ……リヨク、ぼくら行ってくるよ」


「うん」


2人はリヨクから離れてシユラたちのもとへ向かった。


リヨクは、遠くからシユラたちを見つめ、“またこの日々が始まったのか”と心の中でため息をついた。


「(シユラ)帰ってくるなよっ」とリヨクは小さくつぶやいた。


──しばらくすると、シユラたちの元へすごい剣幕のバヤンが急接近した。


「おまえ! わざとだろ!」

聞こえてくるバヤンの怒鳴り声。


リヨクは耳を澄ましながら、予選での出来事を思い返していた。


バヤンの怒りは、第2予選で、シユラがダヤンに対して行った、ひどい仕打ちが理由だった。


「ダヤンにあやまれ!」


「おれは試合をしただけ」


「勝ったらあやまらないといけないんだぁ〜」


「嫌なら出場するなよ」


シユラたちの言葉の応酬。


全く怯むことのない少女バヤンは、葉っぱをナイフのように持ち、シユラに向けた。


「お前は! わざとダヤンを逃げれなくして、いじめたんだ!」


「刺してみろよ」と怒るバヤンを煽るシユラたち。


一歩踏み出したバヤンにシユラは火を放った。


「えっ」と言い立ち上がるリヨク。


服に移った火を必死に消そうとするバヤン。


──(やりすぎだよ……)


火を放ち続けるシユラを見てリヨクは、拳を強く握りしめていた。


シユラたちの中にいるルエロ、クロスケ、タカシはまったく助けようとしない。


リヨクが目を逸らした先には、『諦めてはいけない、逃げてはいけない』と書かれた紙が風でなびいていた。


──「ぼくが……助けるんだ……‼︎」


決心したリヨクはシユラたちがいる噴水へと向かった。


「もういいだろ!」リヨクは、シユラに向かってビシッと言った。


「また変なのきたー」と笑うシユラたち。


リヨクは無視して、さっとバヤンの手を取り、肩に回して起こし、歩き始めた。


「おーい、ヒーロー気取りか〜?」


後ろから聞こえてくるシユラの声を無視して、進み続けるリヨク。


すると突然、背中に灼熱を感じた。


リヨクは声も出せないまま、バヤンと共にバタッと倒れた。


自分の身に何が起こったのかわからない恐怖と、背中全体に走る凄まじい痛みに、泣き叫ぶリヨク。


──「あ”ぁああああ!」


「おれに上から言ってくんなザコが!」


見下すシユラを見て、怒りが湧き上がってくる。


リヨクはゆっくりと立ち上がり、叫び、殴りかかった。


「うあーー!」


しかし火を放たれ、リヨクはまた倒れた。


シユラたちは痛がるぼくを見て、腹を抱えて笑っている。


リヨクは、壊れた植物の箱から飛び出したポップコーンのタネをかき集め、シユラたちに向かって投げつけた。


それがどうした? といった表情で、仲間と共にリヨクを笑うシユラ。


しかし、しばらくするとシユラが浮かす火の玉からポップコーンが「パンッ!」と弾けた。


──火の玉の中に、タネが何粒か入り込んでいたのだ。


爆発により死にかけたばかりのシユラは、一瞬で怯えた顔になり、頭を抱えしゃがみ込んだ。


──そして、芝生に転がるポップコーンを手に取ると、怒った顔で立ち上がり、リヨクを睨みながらつぶやいた。


「ころす……」


それからリヨクは、シユラから火を放たれ続け、ボロボロになった。


──死にかけているリヨクの耳に、聞き覚えのある強い声が聞こえてきた。


「おい‼︎」


顔を上げると、セイブとダヤンが立っていた。


駆け寄って来たセイブは、「1人相手に何人いるんだ! なさけないぞ!」と言いながら、ぼくらを起き上がらせた。


「どうゆうつもりだ!」

セイブは、ぼくらを囲むシユラたちを見て言った。


「こっちのセリフだ。ケンカ売っといて逃げんな」


「なら相手になってやる」

セイブの緑色の目が鋭くキラッと光った。


──「【ヴァル! 】」


シユラは、セイブに向かって、不意打ちで火を放った。


セイブは、手の甲を向かってくる火の玉に向け、火を消滅させた。


へムルは、驚いた表情で「ピサン……?」と言った。


「あれ、おれらもまだ教えてもらってない技だよな?」


「うん、4年で習うやつ。この前兄貴が使ってた」


リヨクは、セイブの技をみて驚くシユラの仲間たちの反応をみて、希望を感じていた。


しかし、シユラは依然として動じていない様子だった。


──セイブは、土が舞い上がるほど力強く地面を蹴り上げ、シユラに迫った。


「【ヴァーン・オホエ】」

シユラは冷静に立ち、周囲に燃え盛る炎の円を展開した。


その炎は彼を取り囲み、迫り来るセイブを遠ざける壁となった。


勢いよく進むセイブは、咄嗟に「成長リベク」と唱え、地面の芝が彼の足元を絡み取り、炎の円に突っ込む寸前で急停止した。


(すごい……)と最初は感心していたリヨクだったが、セイブの蹴りでえぐれた地面を見て、彼の正体に疑問を抱くようになった。


(セイブはいったい……何者?)


シユラは、超人的なセイブを目の当たりにしても、表情ひとつかえず、続けて術を繰り出す。


──「【ルカエラ】」炎の円が輝き、そこからセイブ目掛けて火の矢が放たれた。


セイブは素早く動き、火の矢を何本もかわしながらシユラに近づいていく。


──炎の円のすぐ前に到達すると、セイブは力強い右ストレートを繰り出した。


その一撃で炎の壁に穴が開き、シユラはその衝撃で吹っ飛ばされた。


口を開け、唖然とするシユラの仲間たち。


さっきまで冷静だったシユラも、起き上がると怒りに満ちた表情になっており、大量の火の玉を浮かし始めた。


「絶対に…ころす‼︎──」と殺気を帯びた表情で近づいてくるシユラ。


そんなシユラを見て、「あーあ」と言うルドラと、「さすがに止めるか?」と言うヘムル。


ゾクニカが「やっちゃえシユラー!」と拳を上げ叫んだ瞬間、大量の火の玉がセイブに降り注いだ。


そして、セイブは火に埋もれ見えなくなった。


──「フン、ガラクタが」


「あちゃー」、「やっちゃったね。シユラ」

「最高に楽しかったよ!」

と盛り上がるシユラの仲間たち。


「調子乗ってたから燃やしてやったぜ」

と言いシユラは、ゾクニカとハイタッチした。


リヨクは、セイブという希望が消え、急に震えが止まらなくなった。


「けどさ、あいつ、ポピュアにしてはすごくなかった?」

「《《ポピュアにしてわ》な」


何事もなかったかのように談笑しているシユラたち。


その様子を見たリヨクの心は悔しさで溢れ、抑えきれない感情のままポケットから突植物《ゼズ》のタネを4つ取り出し、立ち上がった。


──「ん? どうした?」とからかうように言うシユラ。

仲間は笑っている。


リヨクは、《ゼズ》のタネを投げ、笛を吹いた。


──「ピー!」


すると、空中で成長した《ゼズ》2本が、笑う4人に向かって飛んでいく。


──しかし、さっと避けられる。


「は? こんなおっそいの当たるわけないじゃん」


「あいつさぁ、おれらの事なめてるから、分からせてくるよ」と言い、ルドラがぼくに近づいてきた。


リヨクは、この時を待っていた。


ルドラが目の前に来た瞬間、笛を吹いた。


すると、ルドラの足元から《ゼズ》が2本ビュンッと上に向かって成長した。


間一髪身をかわしたルドラだったが、腕から血を流していた。


仲間に笑われたルドラは、馬乗りになって、気が狂ったようにリヨクを殴り続けた。


リヨクは腕で顔を必死に守りつつ、這いずりながらルエロの足を掴み、助けを求めた。


──「ルエ”ロぉ……」


しかし、ルエロは冷たく「呼ぶなよ」と言い、リヨクの手を払いのけた。

クロスケとタカシも、目を合わせることを避けた。


──「コラァ! ルドラ!」


気を失ったセイブを肩に担いだ男の先生が、声を張り上げながら駆けつけた。


その声にルドラはようやく動きを止めた。


「……ルドラ。家に帰ったら…覚えておくんだぞ。…もちろん、君らの親にも報告させてもらう」


「……」黙ってうつむくシユラたち。


「……先生」クロスケが口を開いた。


「なんだね?」


「シユラくんたちは悪くないんだ」


──リヨクはクロスケの言葉に耳を疑った。


「ほう、それはどう言うことかね?」


「シユラくんは、この4人に爆破をおみまいされたんだ」

クロスケは、セイブたちを指差して言った。


下を向き、目を大きく開け驚ろくシユラたち。


「爆破…とは、一月ほど前の…あの事件の事…かね?」


「はい!」自信たっぷりに返事するクロスケ。


驚きのあまりリヨクの思考は、突如として停止してしまった。


クロスケとは目が合わない。


「……君たちの仕業だったのか……クロスケくん、後で詳しく聞かせてもらおう」


「はい!」


なにも知らないバヤンとダヤンは、状況がまったく理解できていない様子だった。


「気持ちはわかるがシユラくん。これぐらいで勘弁してあげなさい」


「……はい」


──男の先生は、リヨクらに向かって話し出した。


「……ポピュアだからと言って人を傷つけて良いものではない。この件はアーガバウト校長に報告し、それ相応の対処をしてもらうつもりだ。覚悟しておきなさい」


その後、リヨクたちはシユラとその両親に謝罪し、アーガバウト校長からの処罰として、プロンを1週間、授業以外での使用を禁止された。


バヤンとダヤンは先に地球に帰った。

セイブも、陰湿ないじめに嫌気がさし「ハァ、そんなに帰って欲しいなら帰ってあげるよ」と言い地球に帰った。


そしてリヨクは、また1人になった。

プラント・レコード

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