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「…ふぅ。」
「ちょっと疲れたから、ここで休んでもいい?」
「…わ、分かりました!」
メテヲ達は広い空間に出ると、運んでいた金属をゆっくりと地面に置き、腰を下ろした。
ゴオォという音が、2人の沈黙を強調する、楽器のソロパートのようだ。
2人とも少し疲れているようだ、一切の会話はない。
(…どこかで合流出来たらいいなぁ。)
(本当に出来るか分からないけど。)
メテヲはそれだけ考える。
だがただぼうっとしていたかった。
_ユピテは、何も考えていない時間にどこかソワソワとしていた。
(…考えちゃダメだ…)
(そしたらまた迷惑かける…嫌だ…嫌だから…)
この場所の、梅雨のようなジメッとした暑さがないかのように、ユピテは少し震えていた。
ユピテは金属に近づくと、それを微かに揺らした。
水音_それは唯一、心からの安心を得られる音だ。
(…どんなに辛くても、雨の音だけは…何もかも忘れさせてくれたっけなぁ。)
そんなことを思い出す。
あんまり揺らしてもメテヲに怒られてしまうので、2回程度でそれはやめた。
少しでも落ち着きを得ようと、様々な所を見渡した。
(…思えば、これが癖になってるせいなのかも。)
“気づく天才”の裏側なんてそんなもので、どうしたって落ち着きは得られないし、どうしたってこの思考は治りゃしない_
(だから見て、聞いて、感じて_忘れようとしたのかも。)
(…そっか、それでも、みんなの役に立ってる。)
(…みんな僕を信頼してくれてるんだ…。)
___
メテヲはしばらくぼうっとして、ふと眠りから覚めたかのような感覚を覚えると、ソワソワするユピテを見て、考え始める。
(…チーム”アンドロメダ”は、この5人じゃないと完成しない。)
ユピテを見て、見えないよう優しく笑う。
(…ずっとソワソワしてるけど、自信持っていいのに。)
メテヲは広い空間の天井を見上げる。
(…何かしてないと落ち着かないのもメテヲは知ってるし、そのおかげで”見つける天才”になつてるのも知ってるよ。)
メテヲは目を閉じ、小さく息を吐く。
(…チームアンドロメダでいてくれてありがとう、ユピテ。)
(…ひたむきに頑張れるユピテのこと、心から信頼してるからね。)
メテヲはふぅ、と息を吐くと、ユピテの名前を呼ぶ。
「どうしたんですか?」
ユピテもメテヲの方を向く。
「どう?メテヲは休憩できたんだけど、ユピテはできた?」
メテヲの問いかけにユピテは、大丈夫ですと笑って返す。
「…行きましょうか!」
いつもよりどこか晴れやかなユピテの顔を見て、メテヲも安心する。
(…きっと、いい事でもあったんだろうな)
「OK、行こっか!」
2人は金属を持ち上げて、ゆっくりと運び始めた。
「…メテヲさん。」
ユピテは改めて、メテヲの目を見る
そして、にっこりと笑った。
「…ありがとうございます!」
「貴方のお陰で…いつも救われてます…!」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃん、あはは!」
「…えへへ。」
そう笑うユピテは、まるで純粋な子供のようだった。
___
「……ふぅ」
「…とりあえず、広い空間に出たけど…はぁ、完全に迷っちまったなぁ〜!」
「そんな楽観視するなよ…ただでさえ洞窟の奥の方なのにそれは…お前怖いからな…」
「まー、そうかもっすけど?」
「そんな暗いと胃ぃ切れちゃうますよ?」
呑気な探検家は後ろで手を組みながら2人に背を向ける。
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「だったら明るくやっといた方がいいっすよ〜」
そう言って笑った。
「プリュート…」
「………」
少しの沈黙が、湿った空気に余計居心地の悪さを与える。
(…どうしよう)
メルリウスは焦る。
洞窟で迷うことはあれど、ここまで大きな洞窟_しかもメテヲはいない。
(…)
デアモントは考える。
何か手がかりはないか、と。
「…うーん、メテヲさんに能力使ってもらうのは流石に申し訳ないっすし…」
そんな沈黙を破るようにプリュートは呟く。
「…来た道も…分からない。」
「…」
「……………」
プリュートは、震えていた。
どうすればいい?
どうしたらこの状況を打開できる?
(…遺物を持ち帰らなきゃ、意味ねぇし…。)
「…2人とも、黙んないで下さいよ…」
プリュートは2人を落ち着かせようと、2人の肩に手を置く。
「…けどなぁ、迷っちまったもんは…」
2人とも、どうにも焦りがひどいようだ。
「あぁもう、だから言ったじゃないすか、そんな考えてたら胃ぃ痛くなりますよって。」
「ね?だから落ち着いて下さいよ?」
「プ、プリュート、」
メルリウスは少し震えた声で言う。
「…どうしてそんなに冷静なの?」
「…は?」
プリュートは突然の問いかけに驚く。
「貴方ってそんなに、そんなに笑わないことってあるの?」
「…何言ってんすか?意味わかんないっすよ。」
「いいや。」
メルリウスに、デアモントは賛同する
「今のお前は明らかにおかしい。」
「焦ることはあれど…お前はそんな時でも心から笑ってた。」
「違う…俺は…」
「…ふ、2人ともどうかしちゃったんすか?」
「俺本当に何も……」
「何も…」
「…」
プリュートは、黙り込む。
1分、いや5秒だろうか?
分からない、3人には分からない
だがそれほどに、長い時間。
だが、またそれを破るように、プリュートは微かに呟いた。
「怖いんだよ…」
「俺だって…怖がる時くらいあんだよ…」
2人は少し驚いたように、プリュートに近づく。
「何が怖いんだよ、プリュート」
「………どうして…」
2人は聞く、だがプリュートの耳に、それは入っては来ない。
プリュートは、ピッケルを取り出すと、 それを岩に叩きつけた。
「…」
無言。
その間プリュートは、何も喋ったりなどしない。
ガンッ!!!ガンッ!!!と、何度も何度も岩にそれを叩きつける。
ストレスをぶつけるように。
抱えているものを吐き出し、発散するように。
「……………」
2人がプリュートの行動に困惑を見せる。
だがそれをよそに、何度も叩きつけたピッケルを引き抜き、しばらく静止する。
「…ごめん…」
プリュートの声が、酷く震えたものに変貌する。
「…ごめん、ごめん…」
「ごめんなさい…」
「…え?」
その刹那
プリュートは_自身のピッケルを、デアモントに向けていた。