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【残業で2人きりになったら】
夜のオフィスは、静まり返っていた。
書類のミスを見つけたのは、定時をとうに過ぎた後。
責任を感じて残ろうとする〇〇の横に、吉沢亮は当然のように腰を下ろしていた。
「……すみません。私のせいで」
小さく頭を下げると、彼は淡く笑う。
「謝るな。俺もチェック甘かったしな」
蛍光灯の下、二人きりで黙々と作業を続け、ようやく片がついたのは夜10時を過ぎた頃だった。
亮が椅子から立ち上がり、軽く伸びをする。
「……終わったな。よし、飲みに行くか。少しくらい付き合え」
居酒屋で向かい合うと、仕事中とは違う柔らかい表情に、胸がざわめいた。
グラス越しに目が合うと、不思議と逸らせない。
「〇〇、ほんとによく頑張ったな。……俺、ずっと見てた」
低く落ちる声に、頬が熱を帯びる。
店を出ると、夜風が心地いい。歩き出した〇〇の手首を、ふいに亮が取った。
「俺の家……寄っていけよ」
整った部屋に二人きり。
ソファに腰掛けると、亮がゆっくりと顔を寄せてきた。
唇が触れ合った瞬間、世界が音を失う。
「……嫌なら、今言え」
首筋に熱い唇が触れると、体がびくりと震えた。
小さく首を横に振ると、彼は深く息を吐き、強く抱き寄せる。
「……声、我慢するなよ」
亮の吐息が耳元をかすめる。
唇が首筋をなぞり、熱い痕をいくつも残していく。
「ここ……敏感なんだな」
指先が肩口から腰へと滑り落ち、布の上から優しく、時に意地悪に触れてくる。
息が乱れて、自然と名前がこぼれた。
「……亮さん……」
「もっと呼んでくれ……俺以外の名前、二度と呼べなくしてやる」
低く掠れた声が、胸の奥を痺れさせる。
重なった体から伝わる熱と、甘く深いキスに、抗う力なんて残っていなかった。
ソファに押し倒され、重なる体温。
動くたびにギシ、ギシ…と小さくきしむ音が響き、余計に胸が高鳴った。
「そんな顔するな……止まらなくなる」
吐息混じりに囁かれ、頬に熱が集まる。
「〇〇の全部……俺に預けろ。大事にするから」
「……亮さん……」
名前を呼ぶと、彼の目が切なげに揺れ、唇が深く重なった。
「もう、離さない」
その夜、〇〇はただひたすらに彼の愛に包まれ、とろけていった。
窓から差し込む光で目を覚ますと、すぐ隣に亮の寝顔があった。
無防備な横顔に、昨夜の熱が蘇って頬が赤くなる。
そっと起き上がろうとした瞬間、背中に腕が回った。
「……逃げようとすんなよ」
まだ眠気の残る声。〇〇を引き寄せながら、亮が薄く笑う。
「おはよう……亮さん」
「ん……おはよう。……可愛いな、朝から」
額にキスを落とされ、胸がきゅっと締めつけられる。
ソファに残る昨夜の痕跡に視線を落とすと、彼はそれに気づいたように小さく笑った。
「そんな恥ずかしそうな顔すんな。全部、俺が望んだことだ」
髪を優しく撫でながら、真剣な瞳で続ける。
「〇〇……これからも、俺のそばにいろよ。仕事でも、家でも……全部一緒に」
その言葉に、胸の奥が甘く満たされていく。
朝の光の中、彼の腕の中で頷くしかなかった。