テラーノベル
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ソラは、ずっとロミオが好きでした。
頭が良くて、顔も良くて、そして誰よりも強い。
そんな彼に憧れていた気持ちは、いつの間にか恋へと変わっていました。
「…あ、ロミオだ」
「今日もかっこいいな」
「……」
「…やっぱり、オレのものにしたい」
胸の奥にしまい込んでいた願い。
言葉にすることはなかったけれど、確かにそこにあった想い。
それらは日を重ねるごとに確かに深くなり、ソラの心を良くも悪くも蝕んでいきました。
ですがある日、その想いは現実に打ち砕かれます。
「…悪いが俺は、お前を恋愛対象として見るつもりはない」
「……!」
言葉が、理解できないほど重く響きました。
「…男が男を好きになるなんて、普通はないだろう」
その一言で、ソラの中にあった小さな期待は、音もなく崩れ落ちます。
いつもはぐらかされながらも、どこかで信じていました。
ほんの少しでも、自分に目を向けてくれているのではないかと。
けれど現実は、想像よりずっと冷たかった。
「…うっ……」
気づけば涙がこぼれていました。
何年ぶりかも分からないほど、止まらない涙でした。
どうしてこんなに苦しいのか。
どうして胸が締めつけられるのか。
答えは分からないまま、ただ感情だけが溢れていきます。
さらに、周囲の声が追い打ちをかけました。
「ねえ、あの人泣いてない?」
「あの勇者一行の人でしょ。男好きなんだって」
「うわ…無理」
「ちょっと引くよね」
悪意のない好奇心と、無遠慮な言葉。
それらが刃のように心に刺さります。
今まで仲間たちは何も変わらず接してくれていた。
だからこそ、自分がどう見られる可能性があるのか、
ソラは考えたこともなかったのです。
気づけば心は深い場所へ沈み、
何も感じたくないとさえ思うほどでした。
やがて時間が経ち、
ソラは壁にもたれて座り込んでいました。
頭の中は静かで、空っぽで、現実感がありません。
「…ソラくん!!」
聞き慣れた声に、ゆっくり顔を上げます。
「やっと見つけた、ずっと探して……って、え…?」
ルルナでした。
昼から姿を消したソラを、必死に探していたのです。
「…ソラくん、どうしたの…?大丈夫…?」
彼女の顔から血の気が引いていきます。
涙の跡が残ったまま、感情の抜け落ちた表情で座るソラの姿は、
あまりにも痛々しかったから。
それでもルルナは無理に明るく言いました。
「…一旦戻ろ?みんな、心配してるよ」
ソラは答えません。
ただ遠くを見るような目で、小さく息を吐くだけでした。
事情は聞いていました。
だからこそ、無理に問い詰めることはしません。
ルルナはそっと上着を肩にかけ、
何も言わず隣に立ち続けます。
それだけでいいと思ったのです。
今はただ、一人にしないことが大切だと。
しばらく沈黙が続いたあと、
何かを決めたように、ルルナはそっと口を開きました。
「ねえ、ソラくん」
返事はありません。
それでも彼女は続けます。
「…まだ、終わりじゃないよ」
小さく息を整えてから、
静かに、けれどはっきりと言いました。
「たとえロミオくんが、ソラくんのものにならなくても」
一拍置いて、
「……他の誰かのものになるとは限らないでしょ」
その言葉は慰めなのか、
それとも別の何かなのか。
ルルナの表情は優しく微笑んでいるのに、
どこか影が差していました。
コメント
1件
続きが気になりすぎる…