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コメント
1件
うわあ、小森さん、めちゃくちゃ強い……! 敵意を向けられても笑顔で「そうなんですよ〜!」って受け流して、しかも相手を納得させちゃうとか、逆に格好よすぎます。猫にも好かれるって、もう揺るがないなって感じがしますね(笑)。王子谷さんの「俺の時代きた!?」からのスルーされる流れも最高でした。最後の一文が気になって仕方ないです……次が待ち遠しい!
#異世界転生
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店内の空気が、一瞬でマイナス10度まで凍りついた気がした。
巻き髪、ショート、ストレート。
社内で「王子親衛隊」と恐れられるファンクラブの面々が、こちらへゆっくりと歩み寄ってくる。その鋭い視線は、小森を捉えて離さない。
(……終わった)
「王子谷くん」
巻き髪のリーダー格が、刺のある声で呼びかけてきた。
「あ……どうも」
「その子……あなたの“彼女”なの?」
空気がさらに冷えた。
「……そうですけど」
巻き髪は、小森を頭のてっぺんから爪先まで、品定めするようにジロジロと見た。
「……正直さあ。ハッキリ言わせてもらうけど」
一歩、小森との距離を詰める。
「釣り合ってなくない? あなたみたいな地味な子が、王子谷くんの隣にいるなんて」
(うわ。あからさまにひでえ言い方……)
「それはさすがに――」
俺が言い返そうとした、その時。
「そうなんですよ〜っ!」
小森さんが、太陽みたいな笑顔でぱっと顔を輝かせた。
「……は?」
巻き髪の動きが止まる。
「私、王子谷さんと比べて、本当に普通なんです!」
さらっと言い切る。
「中学時代の同級生だったんですけど、再会したら信じられないくらいカッコよくなってて……! もう、びっくりしちゃいましたっ!」
巻き髪の女が、毒気を抜かれたように言葉を失った。
「それに王子谷さん、本当に優しいんですよ〜」
小森は猫を撫でながら、楽しそうに続ける。
「私のつまらない話も、ちゃんと最後まで聞いてくれるんです」
少しだけ照れたように言った。
「だから私、こんな素敵な人と付き合えて、すごく幸せだなって思ってますっ!」
(ちょっ……待て! それ人前で言われると死ぬほど恥ずかしいやつ……!)
「なので、“釣り合ってない”って言われても」
小森は、一点の曇りもない瞳でにっこりと笑った。
「全然気にしてないですよ〜」
「…………」
しばしの沈黙。
「……え、普通にめちゃくちゃ良い子じゃない?」
ショートの子が、ぽつりと呟いた。
「だよね……」
ストレートの女も、深く頷く。
一瞬で空気が変わった。
さっきまで敵意をむき出しにしていた二人が、小森を見る目を変えている。
「……でもさ」
巻き髪の女だけが、まだ納得いかないという風に顔をしかめた。
そのとき。
「にゃー」
一匹の猫が、小森の膝に飛び乗った。それを合図に、もう一匹、さらにもう一匹。
「えっ、また!?」
近くにいた店員が、目を見開いて呟いた。
「この子たち、こんなに一人に集まるの、開店以来初めてですよ……!」
その光景を見て、巻き髪の女が小さく笑った。
「……猫にも好かれるんだ」
その声には、もうトゲは残っていなかった。
「王子谷くん」
「はい?」
「……その子、ちゃんと大事にしなよ」
「……もちろんっす」
三人はそれ以上何も言わず、どこかすっきりした顔で奥の席へと移動していった。
「知り合いの方ですか?」
小森さんが、首を傾げてきょとんとした。
「まあ、そんな感じで」
そのとき。
「にゃー」
一匹の猫が、小森の膝から降りて――俺の足元へ歩み寄ってきた。
(お? おお!?)
(ついに俺の時代きた!?)
(まさかの、ご褒美タイム!?)
俺は最高の笑顔を作って手を伸ばす。
猫は俺を見上げて――
スッと横を通り過ぎていった。
「…………(泣)」
(なんでだよ!!)
がっくりとうなだれる。
「王子谷さん、こっち来ます?」
小森さんが少し体をずらし、猫たちの間にスペースを作ってくれた。
隣に座るが、猫は逃げなかった。
一匹の大きな猫が、俺と小森の膝の間にどっしりと居座った。
「ほら、猫ちゃんたちも、ちょっとずつ慣れてきてますよ〜」
猫が喉を鳴らす音に包まれながら、俺たちは、ほんの少しだけ――恋人らしい距離に近づいていた。
……このあと、あんなことになるとも知らずに。