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#異世界転生
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中学の同窓会。
正直、行くつもりなんて一ミリもなかった。
小森が友達に誘われて行くつもりだと聞き、つい、格好をつけて――「俺も」なんて返事をした。ただ、それだけだ。
***
居酒屋のドアを開けた瞬間。店内の喧騒が、ふっと途切れた気がした。
視線が一斉に突き刺さる。一拍遅れて、波のようなざわめきが広がった。
「え、誰……?」
「……もしかして王子谷? 嘘、あの『デブ谷』が……?」
驚きと、どこか馬鹿にしたような笑いが混ざった空気だった。
「イケメンじゃん」
「別人すぎ。整形レベルなんだけど!」
席に着くなり、女子たちに囲まれた。
「ねえ、彼女いるの〜?」
「絶対モテるでしょっ!」
(……落ち着け。今の俺は、もうあの頃の俺じゃない)
「キモイ」
「デブがうつる」
教室での声が、ふっと蘇る。
(……大丈夫)
そう言い聞かせるように、グラスを傾けた。貼り付けた笑顔のまま、上の空で相づちを打つ。
――だが、その偽りの平穏は、早々に粉々に砕け散った。
「なあ、お前らマジで付き合ってんの?」
酒の入った元同級生の男が、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべた。その手には、インスタにアップされた俺と小森の写真が映るスマホがある。
「王子谷、よかったな~! 昔のお前じゃ小森と付き合うなんて無理だっただろ!」
「……まあ、そうっすね」
俺は無理やり笑って流した。
小森は少し離れた女子たちのグループの中で、楽しそうに笑っている。
そのとき、さっきの男が声を張り上げた。
「おい小森! 王子谷が『前の姿』でも付き合えてたわけ?」
「今はいいけどさ、中身はあの『デブ谷』だもんな~」
男子たちの笑い声が広がる。
痩せて外見を変えても。どれだけ自分を繕っても。こいつらの中では、俺は一生――あの頃のままなんだ。
「ちょっと、失礼すぎでしょ!」
小森の周りの女子たちが、一斉に非難の声を上げる。
「デリカシーなさすぎ! 最低!」
「普通に感じ悪っ!」
その“善意の加勢”さえ、今の俺には苦しかった。
――今の俺なら、庇えるってことだろ。結局、見られているのは“今の外見”だけだ。
俺は、小森の方を見る勇気さえなかった。目を合わせたら、終わる気がした。
(……もし、一瞬でも「確かに」なんて顔をされたら?)
(……あるいは、憐れむように庇われたら?)
どちらにしても、耐えられない。
――ガタンッ!!
椅子を蹴るような勢いで立ち上がった。
***
外には強い風が吹いていた。
「……はあ、……はあ」
大きく息を吐く。でも、うまく吸えない。
震える手で、ポケットから電子タバコを取り出す。ずっとやめていたのに。もう、これに頼らないと立っていられそうもなかった。
一瞬、小森の悲しそうな顔が浮かんで指が止まる。……でも。無理やり深く吸い込んだ。ゆっくり吐き出された煙が、夜に溶けていく。
(……結局、俺はなにも変わってない)
「……王子谷さん?」
心臓が跳ねた。振り返ると、小森が息を弾ませて立っていた。とっさに、タバコを後ろに隠す。
「これは……その」
小森は少し眉を寄せたけれど、すぐに柔らかく笑った。
「隠さないでください」
「……身体のことを考えたら、やめてほしいとは思いますけど……そんな日も、ありますよね」
否定もされない。責められもしない。ただ、そのまま受け止められる。
(……これ以上、踏み込まれるのはキツい)
(これ以上、小森が自分の中で大きくなる前に……手放さないと)
「…………もうすぐ半年ですね。この契約。……そろそろ、終わりにしませんか?」
小森が目を見開いた。
言った瞬間、心が痛んだ。でも、止まれなかった。
彼女はいい奴だ。……だからこそ、俺なんかじゃダメだ。
「……わかり、ました」
一拍置いて、彼女がまっすぐに見つめてくる。
「でも……最後に花火大会だけ、一緒に行きませんか?」
「……花火大会?」
「前に約束しましたよね?」
「……」
小森は少しだけ、寂しそうに笑った。
コメント
1件
あああ、もう…読んでて胸がぎゅーって苦しくなったよ…😭💔 王子谷くんの同窓会のシーン、あの「デブ谷」って過去が突き刺さる感じがリアルすぎて辛かった…。外見変わっても心の傷は簡単に消えないんだね。小森さんの優しさが逆に重たく感じちゃうの、分かりすぎて泣ける。 花火大会の約束、これ最後の思い出になるのかな…終わりを意識した王子谷くんの決断、切なすぎるよ💦次が気になりすぎる〜!