テラーノベル
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放課後の体育館は、いつもより少しだけ静かだった。バレーボールが床に弾む音と、鋭いレシーブの音が、規則正しく響いている。
ネットの向こうで、誰よりも低く、誰よりも速くボールに食らいつく背中。
それが、音駒高校バレー部のリベロ――
**夜久衛輔**先輩だった。
「ナイスレシーブ、夜久さん!」
コートの外から声をかけると、夜久先輩は一瞬だけこちらを見る。
そして、ふっと口の端を上げた。
「当たり前だろ。リベロなめんな」
ぶっきらぼう。
でも、その目は少しだけ優しい。
私はマネージャーとして音駒に入ったばかりだった。
猫みたいに自由で、でもどこか繋がっているこのチームが好きになったのは、きっと――
夜久先輩のプレーを初めて見た日からだ。
どんなスパイクも、絶対に床につけさせない。
膝を擦りむいても、ユニフォームが破れても、平然と立ち上がる。
「……怪我、大丈夫ですか?」
練習後、絆創膏を差し出すと、先輩は一瞬きょとんとした。
「……お前、毎回それ聞くよな」
「だって心配です」
「心配すんな。俺は丈夫なんだよ」
そう言いながらも、ちゃんと差し出した手を取ってくれる。
その瞬間、心臓がうるさく鳴った。
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