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桃源暗鬼
きょうしき
⚠️モブ四季要素あり
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あのイケメン先生、京夜先生への恋心を自覚してから早くも2ヶ月が経った。入院当初、中々に苦労した車椅子の操作も、今ではこなせるようになってきている。
初めの頃全然操作できなさすぎて、京夜先生に押してもらってたんだよな~…。
手伝ってもらわなくても操作なんか余裕でこなせるカッコイイ姿を見せたかったのに、結局お世話になっちまうなんて、かっこ悪いにも程がある。当時はマジで凹んでた。
……けど今となっては、背中越しに伝わってきた先生の気配や、耳元で響く優しい声が、ただただ恋しくてたまらない。
そんな淡く甘い過去に思いを馳せながら、1人寂しく車椅子の車輪を滑らせた。
そんな時、ふいに近くの女の子達の話す声が耳に入った。
「きょうやせんせーってまじでかっこいいよね!」
「わかる!イケメンだし何よりメロい…」
「はぁ~、あんな人が彼氏ならな~…」
――知ってる。この病院に長くいれば、嫌でも気づかされる。京夜先生の女の子人気は圧倒的だ。
少女漫画から飛び出してきたようなルックスに、普段のチャラい雰囲気からは考えられない、誰にでも平等に優しい聖人並みの性格。男の俺から見ても完璧なんだから、モテないわけない。
そんな事を考えている間、女の子達は何故か俺の方をチラチラと見ながら会話を弾ませている。
「はぁ〜、京夜先生に会いてぇ……」
何気なく言葉が零れ落ちた。あの声が聴きたい。あの体温に触れたい。
――先生に、ただ、会いたい。
「四季くん、呼んだ?」
「うおっっ!?!?」
「あははっ! びっくりした?」
声のする方に勢いよく顔を向ければ、耳元で金色に光るピアスが揺れていた。いつもの甘いバニラの香りを漂わせながら、想い人がゼロ距離で俺の顔を覗き込んでいる。
「びびびびっくりするに決まってんだろ!?」
そんな情けない返事を精一杯返してふと思った。
あの女の子達が俺の方見てたのって京夜先生がいたからなんじゃないか。と。
さっきの違和感の答えに独り合点し、頭の中のモヤが少しばかり取り除かれる。
でも、自分の好きな人を他の人も好きである事実はすこし、いや、滅茶苦茶嫌なんですけど!?!?
そんなみっともない嫉妬心を胸に京夜先生の表情を見つめる。そんな俺の目線に気づくことなく先生はいつも通りに笑う。
「あはっ!それもそっか!」
当たり前だろ。声に出したら会えちゃったもんだから、 心臓がはち切れそうなくらいびっくりしてるわ。
俺が抱えてる気持ちなんて知らずに、底抜けに優しい声色で笑う。
その表情を見るだけでも、『やっぱ好きだな』なんて惚気けられるくらいには俺はこの先生に骨抜きにされていた。
ふと、入院初日のことを思い出す。あのキス以来、先生とは一度もそんな雰囲気になったことも、ましてやキスなんてしていない。
俺のこと、ただからかっただけなんかな……。
そんな思考が脳裏をよぎる。俺、もしかして京夜先生に良いように遊ばれてるだけ、なんかな。
チクチクと心に針が刺さるような痛みが、じわじわと胸を締めつけ、容赦なく心を抉っていく。苦しい。辛い。嫌だ。___
「――四季くん?」
すぐ近くで名前を呼ばれ、ハッとして意識が引き戻される。覗き込んできた先生の瞳に、ひどく動揺した自分の顔が映り込んでいた。
「体調悪いの……?」
先生の大きくて、暖かい手のひらが俺の頬に触れたかと思えば、先生はさらに顔を寄せてきた。視界には京夜先生しか映ることのない、ゼロ距離で。
まるで、あの日のキスの直前みたいだ。
脳のキャパが一瞬ではじけ飛び、顔が沸騰したように熱くなる。額にじわりと汗が滲み、全身の血液が跳ね上がるのが分かった。
収まることを知らない、うるさすぎる心音が、俺の鼓膜へと鮮明に、そして明確に届く。この音、先生に聞こえちまってるんじゃ…?
堪えきれない羞恥心に襲われ、俺は逃げるように目をキュッと閉じた。けど、視界を閉ざす瞬間に見えた先生の瞳は――
いつもの優しい瞳には無い、あの日俺の唇を奪ったときと同じ、ひどく色を孕んだ熱を帯びていた。
「目、閉じたままでいてね。」
京夜先生は俺の頬を優しくなぞるように撫でながら、耳元でそう甘く囁いた。
その声に促されるまま瞳を閉じ続けていると、次第に俺の意識は深い海の底 へと落ちていった。
「あれ、四季くん寝ちゃった……??」
あーあ、本当に可愛いなぁ……。
いっそ、監禁でもしちゃおうかな?腰の治療なら僕がいるから問題ないし、全然ありだよね。
それに、四季くんにまとわりつく他の人間の視線も邪魔くさいし、 四季くんの視界にゴミの存在は入り込まない方がいいからね。
今後の未来予想図を建てていると、 僕たちの少し前から、熱烈な視線を四季くんに向けた女子高生達の不躾な会話が聞こえてくる。
「あの車椅子の人、顔めっちゃかっこよくない!?」
「それ思った! 声とかたまに聞こえるんだけど、マジでどタイプの声してる」
「見た感じ高校生だよね? どこの高校の人だろ〜??」
「お願い! 近くの学校でありますように!」
なんでこの病院にいるかも分からない人間の有象無象の会話に、四季くんの存在が混じり合っている。
「……四季くんのこと、見ないでほしいなぁ」
……本当に気に入らない。不愉快極まりない。
四季くんは僕だけが知っていればいい。僕だけを見て、僕だけを感じて、僕だけを愛して、僕だけを求めてくれればいい。僕以外なんて考えられないくらい、僕だけに縋って、俺だけを想ってほしい。
四季くんが、今世も、来世も、その先も。永遠に僕だけを愛して、僕だけを追いかけて、僕のために泣いて、怒って、笑ってほしい。僕だけで、満たされてほしい──。
四季くん、四季くん、四季くん、 四季くん…
…あーあ、いっそ、この世界に僕と四季くんの2人だけが存在していればよかったのに。
僕がこんなになってしまった原因をつくった四季くんは、”あの約束”を、ちゃんと覚えくれてるんだろうか。
ふと、僕のすぐ下で規則正しい寝息を立てている愛し子に目を向ける。
撫でれば指の隙間をサラサラと滑り落ちる髪。愛らしい目元の二連の泣きぼくろ。触れずとも柔らかさが伝わってくるような、淡く赤らんだ頬。少し潤んだ、鮮やかな桃色の唇。
純粋という言葉が似合いすぎているその表情を見る限り、四季くんが約束を覚えていないことは確定していた。
その事実に少し肩を落とすも、なんだかんだ四季くんらしいな。なんて心の声で小さく呟く。
本当に四季くんは可愛い。俺の全部で四季くんを愛してる。逃がしてあげない。どこにも行かせない。
俺は もう一度、君を形作るすべてを愛おしく、貪るように眺めて、ハンドルを強くにぎる。
2ヶ月ぶりに触る四季くんの座る車椅子を、
部屋までゆっくりと押し出した。
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お疲れ様でしたー!
投稿が遅くなると言った割には、ネタが爆速で浮かんできてくれたので、かなり早く仕上げることが出来ました…笑
そして!前回の♡200!本当にありがとうございました!嬉しすぎてもう部屋中はねました!
ぴょんぴょこぴょんです!!
とはいえ、四季くんと京夜先生の間で結ばれた
“あの約束”とは、一体なんなのでしょうか…?
次回もお楽しみに!
NEXT▷▶︎▷ ♡300
コメント
2件
A I さ ん 抜 き に し た ら 1 番 で す っ ! 激 重 で 好 き す ぎ ま し た 😖 言 葉 選 び と か 超 大 好 き で す 🤭🩷
第2話、めっちゃ良かった……!四季くんの恋心と嫉妬がめちゃくちゃ伝わってきて胸きゅんだったんだけど、最後の京夜先生のモノローグでガチで背筋震えたわ。あの「監禁しちゃおうかな?」「世界に僕と四季くんだけ」とか、執着ヤバすぎて最高すぎる…🔥 あと「目、閉じたままでいてね」からの気絶、いや睡眠強制かっこよすぎ。約束の伏線も気になるし、続き超楽しみ!
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#桃源暗鬼
海月🎧
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