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俺たちは、麦わら帽子を被ったロディの案内に続き、UT刑務局屯所までやって来た。
「お前……本当に馬鹿じゃないのか……? ペットの交渉なのに、まさか刑務局に来るとは……」
「ふっ、馬鹿は貴様だ。私の巨大なペットを連れて、ユニバース・トーキョーの街を歩けるか。刑務局であれば、何かしらの方法で上層部と連絡が届くはずだ」
「そうじゃねぇよ!! お前、その格好!! ちょっと帽子被っただけで変装にもなってねぇのに、捕まえてくださいって言ってるようなモンだろ!!」
そうこうしている内に、中からは”死神”の異名を持った副長、鮪美が現れる。
「パラレル皇子……!? どうしてここに……!? そんで何でお前らまでいるんだよ」
「緑さんのお食事を久しぶりに頂こうと参ったのですが、どうやら僕の連れて来たペットに問題があるようで……この方に、こちらに案内して頂いたんです……」
「緑……元育成班の緑さんか。だからお前らもいるってわけか。で……この方……?」
ギロリ……と、鮪美の目付きが鋭くなる。
「その金髪……お前……」
やべぇやべぇやべぇ!!
帽子じゃ何のカモフラージュにもなってねぇ!!
「もしかして……ナ○トさんですか……?」
「あー、金髪で間違えちゃったのかな? ワン○ースのロフィと言う者だ。オラ、ワクワクすっぞ」
お前も馬鹿なんかい……!!
そりゃあロディみたいなバカ、いつまで経っても捕まんねぇわけだよ!! 揃いも揃ってバカじゃねぇか!!
しかもロフィのセリフ間違えてるし、コイツ、ニワカにも程があんだろ!!
「それで、皇子とロフィさんは、こちらへは何しにいらしたんですか?」
「ああ、実はな、少年の連れているペットはどうやら侵略者のようなのだが、この世界の人間に害はなく、法律を知らないで連れて来てしまったようなのだ。どうにか、特例として認めてはもらえぬだろうか?」
「ああ、それでしたら……」
すると、鮪美はUT刑務局の中から、頭が三頭のケルベロスを連れ出して来た。
「コイツも、侵略者対策の侵略者。地球人に害がないことを認められ、申請をすれば大丈夫ですよ」
オイィィィィ!!
マジか、侵略者対策の侵略者って……また俺たちも対象内なんじゃないのか……!?
しかも、小鳥と違って頭三つのケルベロスとか……襲い掛かられたらひとたまりもねぇぞ……!!
「な、なんですか……この大所帯……。あ、あの……機密書類の受け渡しに来たんですけど……」
巨大ロボットを押し除けてこちらに来たのは、
「雅!! どうしてお前が……?」
「UT特殊部隊から、UT刑務局へ書類を届けに来たの。そんな時に、私のテレポートは便利だから……」
「そうか! 確かにな!」
好都合だ!!
一触即発で暴れられる前に、巨大なヤツと一緒にロフィだけでも、雅にテレポートして貰えれば……!
「雅! ちょっとテレポートなんだけど……」
「え? 今……は、ちょっと難しいかな……」
そう言うと、背後から巨大な、
「今……グリフォンがいるから……。グリフォンに乗って郵便に来たの。異世界の動物なんだって」
テレポートの意味ねぇじゃねぇか!!
誰がグリフォンに乗って来ても同じだよ!!
しかもコイツも異世界の動物かよ!!
「や、ヤバいですよ……優さん……。こんなに化け物たちが勢揃いしちゃって……。今にも、誰が暴れ出しても不思議じゃないくらいの威圧感なんですけど……」
「も、もうこうなったら逃げるしかねぇよ……。大丈夫だろ……鮪美もロフィも強いんだ……なんとかな……」
ビーー!! ビーー!! ビーー!!
俺たちがそそくさとその場から逃げようとしたその時、ロフィのペットである巨大ロボットは、突然大きな警告音を発し、その場に倒れて来た。
「大変! 私はテレポートで逃げられるけど……ペットたちが押し潰されちゃう……!!」
「ポ、ポチーー!! ま、まずい……! 省エネモードになんてしてこなければよかった……!!」
「お前は本当にバカだな!! で、なんで名前だけちゃんと犬みたいな名前なんだよ!!」
「優さん!! ツッコんでる暇ないですよ!! このままじゃ皇子も……!!」
「お前らは伏せてろ!! 俺が叩っ切る……!!」
ザッ……!
鮪美が刀を出した瞬間、俺はそれを制した。
「お前にも、大事な愛犬がいるんだろ……!!」
そして俺は、巨大ロボットを受け止める。
「お、お、重ェェェェェ!!!」
「な……! あの巨体を……素手で受け止めた……!?」
「どんな理由があろうと……どんな生き物だろうと……ソイツには……生きる権利があるだろ……!! ルリ!! 俺が持ち堪えてる間になんとかしてくれ……!!」
「言われるまでもない……!!」
ルリは既に、杖を取り出し、詠唱を唱えていた。
巨大ロボット、ポチからは、重力が消えたかのように軽くなり、俺はそっと寝かせた。
「ふぅ……」
「ポチ! ポチ! 大丈夫か……!」
「お前……ロフィじゃなくてロドリゲス・B・フォードマン!! βの使徒 司教じゃねぇか!!」
「あ、まずい」
慌てるロフィは、麦わら帽子を脱ぎ捨てると、鮪美は刀を抜き、ロディを追い掛け始めた。
「ギェー!!」
そして、小鳥、ケルベロス、グリフォンは、俺を目掛けて一斉に襲い掛かってくる。
「お、おいコラ!! やめろ!!」
「優……! 凄い……動物にあんなに好かれるなんて」
「本当です……!」
勘違いする雅と同じく、目をキラキラと輝かせ、同じように勘違いを重ねるパラレル皇子は、手を合わせて俺のことを見つめていた。
――
『動物愛護法により、天界人 第三皇子のペット、及びUT刑務局、UT特殊部隊の特別動物を守ったことを、ここに表彰します』
気が付けば、俺はよく分からん賞を受け取っていた。
「あは……あははは……。まあ、いっか……」
『あの、お名前をお聞きしても?』
俺はこの状況に成す術もなく、インタビューに答える。
「あー、”緑一派”の鯨井・LU・優っス……。今回は、こんな素敵な賞を頂けて……」
――
「やっぱり現れたね。鯨井・LU・優くん……か。ちょっとちょっかいかけてみようかな……ふふ……」
「鮫島。彼はやはり、”異世界からの者”……か?」
「間違いなくそうだろうね。君、最近暇そうだし、ちょっとちょっかいかけてみてよ。何でもいいからさ」
「ふっ、貴様の唐突な思い付きに振り回されるのはいつも困っているが……確かに今回は面白そうだ」
そう言うと、男は静かに鮫島の後を去った。
「警察庁長官殿、先日テレビで報道されていた、鯨井・LU・優という男をご存知ですか?」
「知っている。緑のところで庇護されている、UT変異体の男だ。詳しくは知らないがな」
「その男……いや、付き人のように変なコスプレの女もそうなのですが、とある噂を聞き付けまして……」
「ほう? 何だ?」
「緑殿の匿っている二人は、『異世界から転移して来た者』、つまりは侵略者であること。そして、それらを知りながら庇護している緑殿は……恐らく……」
男の言葉に、言葉を失くす警察庁長官。
「詳しく調べる必要がある。緑とは古き友なのでな。噂話などではなく、ちゃんとした証拠を提示しなさい」
「もし……証拠が出揃った場合は……?」
「緑を含め、庇護下にある者全員……死刑だ」
「畏まりました……」
男は不敵に笑うと、警察庁長官の部屋を静かに出た。