テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

侵略者たち

一覧ページ

「侵略者たち」のメインビジュアル

侵略者たち

19 - 017 正義の発明家(1)

♥

38

2024年12月06日

シェアするシェアする
報告する

 世間じゃ俺のことを、闇の発明家と呼ぶ者もいれば、復讐に駆られた狂乱者と呼ぶ者もいれば、ただの薄ら禿げたジジイだと呼ぶ者もいる。 人間ってのは生きていたら、相手方の見方で、どんな風にもなりやがるモンで、発明家の俺なんてのは、戦争の道具を作るだの、時代の進歩の先駆者だの、その時その時で世間様の見方はコロコロと変わる。


 でも、ンなことはどうでもいい。

 俺は、目の前にある錆びた工具をぶん回す。

 それしかやってこなかったからだ。

 しかし、そんな俺でも、通す意地ってのはある。


 使われた後の動画の見られ方まで関与してたらキリがねぇが、使う相手は選ぶことができるって話だ。


 だから俺は問う、お前は”正義か?”ってな。


 ――


 こんな老いぼれたジジイにも、まだお得意様っつー相手がいた。

 政府の役人で、古き良きを重んじる奴だった。


「また来たのかい、兄ちゃん。こんな古ぼけた老人の発明なんざ、役人には要らねぇだろ」


「そんなことはないですよ、忠作さん。貴方の発明で救われる命は、まだまだあるのです」


 ソイツは、いつもそう言って俺を訪ねる。

 だから俺も、いつもの言葉を尋ねる。


「ソイツが、アンタの”正義”なんだな?」


「当然です。UT技術が発展した今だからこそ、そこには触れられない貴方の技術が必要なんです」


 そうして役人は、二つの品を購入して行った。


 ――


 ピンポーン。


「宅配でーす」


「んあ? ババアじゃなくて俺宛て……? 差出人……不明……。なんだ……? 珍しいな……」


 ある日、俺宛てへの宅配が届く。

 ないこともないが、俺宛ての宅配物は滅多にない。

 だが、思い当たることも最近では多い。

 何故なら、ニューヒーローと噂され、遂には表彰すらされたのだから、俺宛てに荷物が来てもおかしくはない。


 俺は、以前なら抱いていたであろう疑念も不安もなく、真四角に梱包された段ボールをウキウキに開く。

「おおっ!!」


 中からは、鉢植えと綺麗な花が包まれていた。


「やっぱり誰かからの贈り物だ! いつもありがとう的なプレゼントだろコレ!!」


 俺はその鉢植えを、ニコニコと窓際に飾った。


 翌日。


「ん……? 気のせいだよな……? 気のせいだと思う。いや、植物ってこんなもんだよな。俺があまり植物とかを気にしなかっただけだよな……?」


 鉢植えの花は、少し人の顔になっている気がした。

 いや、光合成をしたか、もしくは枯れ行く過程で、たまたまこんな感じになってるだけで、考え過ぎだ。つまり、天井のシミとかが人の顔に見えるアレと同じだ。


 翌日から三日間、俺たちは山田さんからの再びの依頼で連勤を強いられたが、ご飯、温泉付きで珍しく報酬もサクサクと、三人笑顔で帰宅した。


「げげーっ!! な、なんですか、コレ!?」


 学が俺の部屋に入ると、突如大きな声を上げる。


「なんだよ、別にババア厳しいから、エッチ系の雑誌とかは俺の部屋にはないけ……」


 小言を言いながら俺も部屋に入ると、そこには、


「は、花が人の顔になってる……!?」

「えぇ!? これ、花だったんですか!?」


 最早、鉢植えに入っていた花とは思えない程、人体も形成され、今にも動き出しそうな人の形に成していた。


「な、なんだコレ……。変な物を送られたってことか……?」


「お、贈り物だったんですか……? 直ぐに捨てる……と言っても……既に人型ですし……。いや、ギリギリ人形に見えなくもないですかね……?」


 そこに、ルリが慌てて飛び入ってくる。


「二人とも離れろ!! ソイツから”魔の気”を感じるぞ……!!」


 ルリが言う”魔の気”とは、異世界の魔力。

 それが意味することは……”侵略者”。


「なら……すぐに始末しねぇと……!」


 しかし、俺が刀を抜く前に、学は青褪めた顔で、俺のことを止めた。


「待ってください……。コイツ……侵略者と言っても、”人の形”なんですよ……?」


 その言葉に、嫌でも思い出す。


「もしかして……侵略者と融合させられた人間……!? だ、だとしたら、殺しちまったら人殺しか……!?」


「先日の侵略者も、侵略者の核を破壊できた場合、人命の方は無事でした……。もし、何も考えずにこの人ごと殺してしまったら……恐らく……」


 先日にも増して、じわじわと人型になっていくソレを、ただ眺めることしか出来ず、ジワジワと額に汗が垂れる。


「可能性は薄いけど……」


 緊迫した空気の中で、ルリは一言漏らす。

 その声に、俺と学は静かに振り向く。


「私とクロの力を合わせれば……発明者の居場所を特定できるかも知れない……」


「……!? 逆探知……みたいなことか……?」


「そう……。この人……改造されてからまだ浅い……。だから私たちを前にしても、何もしてこない……。クロ……龍族の特性は覚えてる……?」


「魔力を吸い取る……ってことか……?」


「龍族のことはあまり知らないけど、吸い取ることができるなら、与えることもできるはず。コイツの魔力を吸い取って私に与えてくれれば、母体となった侵略者の場所を探せるかも知れない……!」


「そうか! そんで開発者のところに連れて行けば、問題解決って訳だな! なんなら前回の事件の件もあるし、UT刑務局にとっ捕まえてもらおうぜ!」


 一気に話は固まり、俺たちはクロを呼び出す。

 クロは二つ返事で『魔力の吸い取り』と、『その吸い取った魔力を与える』ことを承諾した。

 そして、謎の侵略者の魔力がルリに与えられる。

 ルリは普段、詠唱も短く魔法を唱えられるのだが、地面に何やら陣を描き、今までとやっていたこととは規模が違うことを、肌で感じてわかった。


「それじゃあ……始めるわ……」


 ガガッ!!


 陣の中に手を入れ、ルリが魔力を注ぎ始めると、大きな音を立てて陣の中が光り出す。

 暫くして、ルリは息を吐きながら光は消えた。

 どうやら、逆探知の魔法は終了したらしい。


「ど……どうだ……?」


「無理ね……。やっぱり遠いみたい……」


 そう言うと、ルリは悔しい顔を浮かべさせた。


「遠くの奴か……。ちなみに、その逆探知の魔法? ってのは、どれくらいの範囲を探せるんだ?」


「1kmよ」


「は……? 1km……?」


「そう、半径1kmに同じ魔力があれば、共鳴してどこか分かるって仕組みなの。子供探しや迷い犬探しには重宝したんだけどな……」


「ちょっと待て……。1kmって、このトップ・トーキョーのこの街すら出ねえよ。お前バカだろ。そんなんで逆探知とかできる訳ねぇだろ! やる前に気付けよ!!」


「だから最初に、可能性は薄いって言ったじゃん!! 別に、他にも方法はあるし!!」


「他の方法……?」


「これならまず、間違いなく探し出せるけど、後戻りができなくなる。それでも、やる?」


「待ってくれ。具体的に、どういう魔法なのか、距離とかの詳細を教えてくれ」


「この魔法は、”転移魔法”よ。この魔力を持つ者のところへ強制的にワープする。距離の指定は無し」


「距離の指定は無し……。つまり、行ったら後戻りはできない……ってことだな……」


 ゴクリと三人、顔を見合わせ、頷く。


「行こう。行かなきゃなんも始まらねぇ」


 そうして三人と、「久々に同行してやる」とニマニマしているクロとで、陣の中に入る。


「黒と出るか白と出るか……」


「それじゃあ、行くわ……!」


 目の前が眩しくなり、突如として光景が変わる。

 他の全員と散り散りになった、と言うことはなく、普段の顔触れが目の前に広がるが、付近の景色だけが違う。


「成功した……みたいね……」


「でも黒なのか白なのか怪しいですよ……」


 俺たちがワープした先は……光の差さない地下だった。

この作品はいかがでしたか?

38

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚