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前のめりに体を倒して一気に距離を縮めるコユキは既に身体能力強化の為にボンキュッボンの美ボディ、いいや敢えて言おうじゃないか、我儘丸出しのエロエロボディだったが、突進の直前、左側のお尻にプスリと刺さったティザー銃の針から流れ込んで来た、膨大な魔力をそのまま流した二本のカギ棒も又、いつもとは比べられない程メラメラ、マリマリと光り輝き、眩い程の輝きを放っていたのである。
コユキは思う、彼女にとって大切な所だからだ。
――――ツルツルテカテカの禿げ頭、善悪を通したからかしら? 見てるこっちが視神経にダメージ負っちゃう位に光り輝いているわね…… はっ! そ、そうか! 良し、そういう事なのかっ! ならば、喰らえっ!
自分が張った領域に守られると自信満々だったバアルの体を、両袈裟(りょうけさ)からの切り降ろしの斬撃で、容易く(たやすく)四つに切り裂いて、十数メートルを滑り込んだ後、コユキは大きな声で言うのであった。
「聖女剣術、秘技の一、『改』…… 名付けて、シャイン、マスカット」 キリッ
くぅぅぅダッセー! ってかあるじゃん! そんな名前のブドウとか?
んまあ二十世紀生まれのネーミングセンスなら仕方が無いかぁ~……
そう思ってしまう、私、観察者(二十一世紀生まれ)である。
さて、四つに切られたバアルはここまで同様再生し続けていったが、反して口調は全く別物に変じていたのである。
元通りになった灰色の体を横たえたまま、広間の高い天井を見上げて言うのであった。
「あ、兄上だった…… 本物、の…… 何故、何故僕は…… 許されない間違いを…… しかも、至高たる兄上たちに、こ、攻撃まで…… 妾は、大罪を犯してしまった……」
善悪が近づいて声を掛ける。
「判ったんならもう良いのでござるよ、さあバアル、立つのでござる」
差し出された手をおずおずと取って立ち上がったバアルは深々と頭を下げた。
「面目ないルキフェル兄上、そしてアスタロトにアムシャ・スプンタ達…… 今ならはっきりと分かる! ニヴルヘイムにいるルキフェルは兄上の偽物だよ、だけど信じてしまっていた…… 全く区別が付かなかった…… 僕の信仰は口先だけの紛い物だったんだね、ははは、妾は、情けないよ……」
カギ棒を戻して元々の美しい肥満体に戻ったコユキが言葉を掛ける。
「バアル仕方ないわよ、何しろオルクス君でさえ本物だって思ったくらい激似だったんでしょ? 落ち込んでも何にもならないわよ、それより未来よ未来! 取り敢えずアンタを現世(うつしよ)に連れ出す事に異論はないんでしょ? どう?」
「勿論! ルキフェル兄上と一緒に居られるのなら、たとえ世の中、お湯の中だよ!」
「お前それ随分と楽そうな所ばっかでござるな、はぁ~全く変わらないのでござる…… あと僕チン達の事はコユキと善悪で分けて呼んで欲しいのでござるよ、それとオルクス君達の事もアムシャじゃなくてスプラタ・マンユ、って呼ぶのでござる、ああ、あと拙者気になるのでござるよぉ、僕か妾か一人称を統一して欲しいのでござるが、だめぇ?」
「なははは、善悪、アンタがそれ言うの? 変なの、なははは」
「あはは、じゃあ妾で統一するね」
「じゃ我は今まで通り我で」
「なははは、アスタは変わらないんだから言う必要ないじゃないの、なははは」
つい先ほど迄の戦いが嘘の様に朗らかに笑い合う一同の中でバアルは不意に笑いを止めて真剣な表情を浮かべた。
「はははは、は…… そ、そうかっ!」
バアルの灰色の肩に飛び乗って、腰を降ろし足をぶらぶらさせながらオルクスが聞く、いい笑顔でだ。
「ネ? キガ、ツイタ?」
「ああ、そうだっ! そうだよ、今ニヴルヘイムにいるルキフェル、いいや偽物は見た目も声も魔力紋まで、かつての兄上と全く同じだった、だけど全然違う所があったんだね、なははとかぬふふって笑い声をあげる事も無く、自分の事を複数の一人称で呼ぶ事も無い、ましてや下種(ゲス)で下品な話題で周りを楽しませる事も無ければ、得意の料理を振舞ってみんなの舌を喜ばせる事も無かった…… 昔、本物の兄上がいた頃のコキュートスはもっと暖かい極寒地獄だった、笑いと希望と歓びに満ちた素敵空間、それが無間地獄だったんだ! ね、そうだよね? オルクス?」
「ソソ、ハートウォーム、ナ、ジゴク♪」
どんな所だよ……
矛盾っぽい言葉が凄いな……
私の感想はいつも通り誰にも伝わらずに話は流れていく。