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「ここか。綺麗なところだな」
俺の前にはこぢんまりとした一軒家がある。
童話とかに出てくる森の中の一軒家みたいな感じだ。
平家で部屋数は二部屋らしい。
「まるで新婚さんの新居みたいだね!」
「サイズだけならな。とりあえず入ろう」
ガチャ
「中も綺麗だね!何もないから広く感じるしね!」
「とりあえず、今晩にでも地球から人数分の椅子とテーブルを持ってくるよ」
「ベッドは?」
いらんだろ。ここに住むわけじゃないのに。
しかし・・・
「寝室に合うサイズのモノを持ってくるよ。もし俺がダンジョンで死んでも困らないようにな」
「セイくん…聖くんが死んだら、私も死ぬから…だから、二人が困らないようにだけしてくれていたらいいよ」
「いや、そこは代わりに二人を見守るとかいうところじゃないのか?」
「だって、そう言っておかないとセイくん簡単に死にそうなんだもん。それに、私はそんなに強くないから」
確かに…死ねなくなったな。
死ぬ時は死ぬけど……
その日の用事はそれだけだったから、二人と合流して結局四人で過ごした。
「じゃあ今日からまたダンジョン攻略頑張ろうな!」
「「はいっ!」」
二人の返事がいいから楽しい……
「次は11階層だよね?情報は?」
「ないっ!」
俺は自信満々に答えた。
「ないって…」
「とりあえず行ってみませんか?情報の仕入れ先もないことですし」
俺達には知り合いの冒険者なんていないからな。
リゴルドーの家から転移した先は、もちろん11階層の始まりだ。
2階層の様な森だった。
歩くのに邪魔ではないが木々の間隔が狭い。
「何かゴブリンが出そうだね」
確かに。
2階層との違いがわからんから、転移ミスしたと言われても反論出来んな。
「とりあえず反応はあるから、敵はいるみたいだな」
「向かってみますか?」
「そうだな。反応が多いのが気になるけど、向かおう」
何故か等間隔に近い形で反応がある。手近な敵に向かうとしよう。
「いたな…」
「いたね」
「いるです」
ミランは誰よりも早く目視出来ていたから無反応だ。
「ゴブリンか…今更感があるけど、どうせそれだけじゃないんだろうな」
「そうだね。今のところBランクが死ぬ様なところはなかったから、ここから20階層の間に何かあるはずなんだけど…」
そうだ。
今まで程度であれば毎年かなりのBランクがAランクにならずに死ぬというのはおかしい。
オーガまでの情報が出回っていて、ここからの情報が秘匿されている事にも理由があるはずだ。
つまり・・・
「ここからが本番だね。とりあえず倒してみたいけどいいかな?」
「ああ。異論ない」
バァンッ
ドサッ
「呆気ないな…」
「気をつけてね。まだ何が起こるかわかんないから」
そうだな。俺は索敵を怠らないように気をつけよう。
しかし、この後もずっと異変は起きなかった。
突き当たりに着くまでは。
「壁だ」
「壁ね」
「壁です」
もちろんミランは…以下省略。
「とりあえず壁伝いに行こう。入り口があるかもしれないからな」
「そうだね。他に出来る事もないし、いざとなれば転移で帰れるしね」
そう。俺達には転移がある。
もしこれがダンジョンのトラップであっても、俺達は帰れる。
「嘘だろ…」
俺達の眼前には大きな木の森があった。
「木の大きさや間隔から、これはオーガの森ですね」
「10階層ってことかな?」
「戻ってきちゃいました…」
一周したってことか?
多分この階層は大きくても直線距離で4キロもなかったはずだ。ここが半円状なら壁は約12.5キロということになる。
多分俺達は10キロ近く歩いたから、ほぼ端から端まで歩いた計算になる。
「まだ時間は早いからこの境界をこのまま進もう」
これでスタート地点に戻れば……
「もし一周したならこの辺りのはずだが…」
「そうですね。多分合ってますよ。答え合わせはこの先ですけど」
ミラン先生には見覚えがあるようだ。俺には全くないけど!
「答え合わせってなんだ?」
「もしここで一周していたなら、この先にセーナさんが残した薬莢があるはずです」
いや、探せんだろ。
いや、探したくないの間違いだな。
「今日は帰ろう…まだ夕方にもなっていないが、ただただ体力を消耗してしまったからな」
こんな体力や精神状況でトラブルが起きたら拙いからな。
翌朝。
「うーん。やっぱり同じ場所だな」
転移した後、辺りを見渡すが昨日転移した場所と同じ気がしてならない。
「セイくん。これはあれだよ」
「どれだよ」
「この階層のど真ん中に次の階層の入り口が隠されているとみたね!」
うーん。確かに……
というか、そうであってくれなきゃ面倒臭い。
「わかった。しかし、昨日も言ったが、真ん中の方に敵が固まっているからそのつもりでな」
昨日壁に当たる前に右側に多くの反応があった。俺達は壁を時計回りに歩いたからここから中央へは斜め右方向だ。
「うん。むしろ敵が多いところに向かえばそこが中心だよ!多分ボスがいて、仲間を使って守っているんだよ!」
うん。不確定な事を信じきるのは死ぬ奴だぞ?
しかし他にアイデアもないので、聖奈さんの提案に乗った。
「撃ちます」
パァンッ
「ナイス!」
ミランが撃って聖奈さんが褒める。これはかれこれずっと繰り返してきた流れだ。もちろん逆もな。
「ここでは10体が固まっていたな。最早始めに調べたダンジョンの常識が当てはまらなくなってきたな」
「そうだね。でもお陰で中心が見えたね」
双眼鏡を渡されたので覗くと・・・
「村か?」
何やら多くのゴブリンが動いている。村ではないな。ただいるだけで建物とかはない。
「あれをやるのか?反応でわかるが、100体以上いるぞ?」
「大丈夫だよ。私達にはこれがあるし。最悪はセイくんがいるから」
聖奈さんがライフルを叩いてみせた。
「わかった。とにかく遠くから数を減らそう。まずは俺が上級魔法をぶっ放すよ」
「わ、私は?」
「エリーはRPGを別の場所に撃ってくれ」
エリーの上級魔法の攻撃可能範囲は狭いからな。
俺は鞄からRPG-7を取り出して、エリーへと渡した。
「じゃあ始めるぞ」
俺は詠唱を始めた。
・
・
・
『フレアボム』
火の玉が木々の間を縫って、ゴブリン達が多くいる場所に着弾した。
ドゴーンッ!
「撃ちます!」
エリーがRPGを放った。
ドゴーンッ!
魔法とRPGで木が燃えるが構わん。ここは不思議空間だからな。
他の人達の戦闘痕も残ってはいない。多分一定時間か、そこに人がいなくなると元に戻るのだろう。魔物達も。
「来たぞ!」
流石に攻撃したら気付かれたようだ。ゴブリン達がこちらへ向かってきている。
「落ち着いて撃て。近寄られても俺が斬り伏せる。エリーはゴブリンが射程に入れば魔法を撃ってくれ」
「「はい!」「うん!」
そこからも一方的だった。
魔物には恐怖が無いのか、ダンジョンの魔物がそうなのかはわからんけど、みんな向かってきた。
パァンッ
「そいつで最後だ。後は…」
そう。最初から今まで動かない反応がある。
「行ってみよう。もし強敵だと拙いから、みんなは100mくらい離れて隠れながら付いてきてくれ」
「うん。気をつけてね」
俺が先陣をきって向かう。
そこには・・・
「洞窟(?)と、あれはデカいゴブリンだな」
双眼鏡で見たそいつは、通常のゴブリンとは違い、俺と同じくらいのサイズがあった。細マッチョ体型だが、顔はブサメンだ!
「そこから動かないという事は、門番的な(?)ボス的な(?)奴だな」
しかし、ここはゲームの中じゃない。残念だが、これはバトルモノじゃないんだ。
俺は対物ライフルを取り出し、狙いを定めると引き金を引いた。
「セイくん。戦う気あるの?」
「仕方ないだろ?動かない奴が悪いんだ」
そう。俺は血も涙もないチート野郎だ。俺達は拾えるだけの魔石を拾って、洞窟前までやってきていた。
「これはダンジョンの入り口みたいですね」
「そうだな。多分次の階層に繋がっているんだろう」
守り神は居なくなったが、果たして入っていいものか……
俺達が思考を巡らせていると、いきなり後ろから話しかけられた。
「お前達が倒したのか?悪いが通らせてもらう」
ビックリした……
確かに戦闘時ほど魔力波を使っていなかったが、1分置きには使っているんだぞ!?何処から降って湧いたんだよ!
「ちょっと待ってくれ。この先には次の階層があるのか?」
相手は一人だ。聖奈さん達に危険は少ないだろう。それなら少しお話ししようぜっ!
「?なんだ?初めてか?そうだ。ここからはここと同じようになっている」
「ありがとう。俺はセイだ。この三銃士というパーティーのリーダーをしている」
「四人なのに三?変わってるな。俺はライルだ」
くっ!それは聖奈さんに言ってくれ!後、仲間が増えたからだ!
「最初に言ってた悪いがって、何が悪いんだ?」
「ああ。お前達がここを潜ればゴブリンが復活するんだ。だから横入りみたいなことになったから、そう言ったんだ。偶に面倒臭い冒険者達がいるから先に断っておかないとトラブルになるからな」
そういう仕組みか。
「そうか。俺達が通らないと復活しないのか?」
「悪いが通行料としての情報はこれを最後にしてくれ。それはNOだ。一定時間が経つと奴らは急に湧く。だからお前達も早く移動しろよ」
そう言い残し、ライルと名乗る冒険者は洞窟に消えて行った。
多分同年代で、茶髪の短髪にイケメン。体格は似ていた。武器は短剣らしきものを2本腰に差していた。
「よし。移動しよう。復活したら面倒だからな」
「「はい!」」「うん!」
俺達は洞窟に潜った。
中はダンジョンの入り口と同じように階段になっていて、すぐに次の階層にでた。
「ここが12階層か」
「また森ですね」
「これはあれだね」
「そうですね」
木々の感じからオークか…と、いう事は、ボスのオークがいるんだろうな。
「どうするの?」
「漸く大勢のBランクが死ぬ理由がわかったんだ。他に罠らしい罠もないし、行くぞ?」
そう。もう怖くない。
「あれだよね?物量で潰されてるんだよね?」
「そうだろうな。これまでの情報に踊らされて敵が少ないと思えば、11階層では囲まれて殺されるか、もしくは迷って死んでしまうかだろうな」
もちろんこの後に何か難しい階層があるのかもしれないが、大凡数の暴力に負けるが正解だろうな。
俺たちの様な現代兵器に物量(魔法の鞄)があれば死なないが。
「俺達は恵まれているな…」
色々なチートに感謝した11階層だった。
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聖奈「でも、ボスにあれはないよね?」
エリー「そうです!私の魔法で派手に倒すべきです!」
ミラン(お二人は一体何を言っているのでしょうか…)
聖奈「そうそう!冒険といえば派手でカッコ良くないとね!」
エリー「そうです!美人は私達がいるので、後はカッコよさが有れば完成です!私の極大魔法で倒します!」
聖「エリー。そのくらいにしとけ。聖奈に乗せられているが、その内ベッドで一人もがき苦しむぞ」
エリー「何でですか?」
聖「それが厨二病という病いの怖いところだ」
異世界人も厨二病を患うのか…いえ。これはあくまでも後書きなので…真実は闇の中です。