テラーノベル
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【ri side】
冷たい風が俺達に打ち付けられる。喉や唇が乾燥してチリチリと痛みを訴える。
🐙🌟〈…俺達の事、覚えてますか?〉
「……覚えてますよ。一昨日前のヒーローさんでしょ?」
一昨日、まさに黎明と現れ街一つを崩壊させた時の事だ。
そう言われる予想してたのに、いざとなるとぎゅうと胸が押し潰されそうになる。
💡〈っじゃなくてッ、もっと…前のこと…〉
咄嗟に口から言葉が流れ出たのでピリッと唇が裂けた。痛くて舐めてみると血の味がする。喉の痛みなど耐え兼ねて、ゆっくりと舌なめずりをして湿らせる。
「………っ何言うてはるの?一昨日がはじめましてだったやん」
マナは嘘は着いていないような、まさにキョトンと効果音がなりそうな顔をした。またチクリと痛みを感じる。
🐙🌟〈マナ帰りましょ?俺達の拠点に、〉
星導はマナに手を差し伸べた。軽くマナの瞳孔が開いた。迷っているのかな、なんて。
「っ………は、」
🐙🌟〈無反応は許可と見なしまーす〉
星導は何をするつもりなのかマナの手を無理矢理掴み、顔を割って触手を伸ばしぬるぬるとマナに絡みつく。
「何やっお前らっ!やめッ、」
デバイスを起動されて変に暴れられたり騒がれると面倒だから、身動きが出来ないように手と脚を触手でぐるぐる巻きにして口を塞いだ。そして何も無かったかのように俺の家に向かった。傍から見れば俺達は、変質者だ。隣を歩きたくない。でもそんなことを行っている場合じゃない。奇襲を掛けられても対応出来るように臨時体制でるべの周りを歩く。
??〈ねぇヒーローさん、”僕のお気に入り”勝手に取らないでくれるかな〉
夜闇に紛れ気配なく近づいて星導の服の袖を掴み、俺達を引き留める。この飴みたいな甘ったるい匂い、見なくても分かる。黎明だ。
🐙🌟〈…ちょっとぐらい良いじゃないですかー、貸してくださいよー〉
突然現れた黎明に焦りを悟られないように顔に笑みを浮かべながら、いつ攻撃を仕掛けられても良いように身構える。
黎明〈ふーん?〉
🐙🌟〈後で返しますし。今のマナ、俺達の記憶ないから大丈夫ですよ〉
マナは何か言いた気にもごもごと口を動かし抵抗する。でも星導の触手に巻かれている今、喋る事も暴れる事も不可能だ。
黎明〈そっかぁ、…でも信用出来ないねぇ。
っそうだ、じゃんけんしましょうよ!それでこの僕に勝ったら貸してあげましょう!〉
素振りや声色は明るいし口では笑みを浮かべているが全く眼が笑ってない。それに少なくとも黎明にとって仲間はじゃんけんで貸し借り出来るモノ扱いなのかと怒りを覚えた。
🐙🌟〈…イカサマなしですよ〉
黎明〈そんな、イカサマなんて!僕がすると思うんですか?〉
こんな三分の一で勝つ運ゲー、イカサマがなければ勝ちは保障できない。が、多分、いや絶対黎明はする。後から何かしら屁理屈を言ってくるか、物理で捩じ伏せようとしてくる。
🐙🌟〈すると思いますね〉
黎明〈ひっどぉーい〉
幼子のような猫撫で声を出す。星導と違ってちゃんと可愛いが奥にはどす黒い闇がある感じがある。星導の方がよっぽど良い。
黎明〈じゃあいきますよ?じゃぁんけんぽんっ!〉
これで負ければ黎明はまたマナから記憶を取り戻させないように細工をするだろうし、もう俺達にはマナと接触出来るチャンスはなくなる。
珍しく星導に勝ってほしいと思った。
どぷん
水に入るような独特な感触に襲われる
敵の攻撃かと思い、身構えたが目の前にはただ煌めく星が拡がっていた
動きづらいこともない、星に手を伸ばしても空回るだけ
冷たくも暖かくもない、何にも感じない
ただ、『綺麗』。
それだけだった
暫くすると水から引き上げられるような感触がした。そこに拡がるのは自分の家
🐙🌟〈オトモ、ナイスです〉
俺は突然のことに頭が追いつかないまま、オトモを撫でる星導をただぼうっと眺めていた。ガンガンと叩かれるているように頭が痛くて、体が思い通りに動かない。そこで呼吸という生命活動をしてないことに気がついた。倒れ込み、酸素を貪るように吸い込んで肺に空気を貯める。それに気づいたロウが俺の背中をさすってくれた。段々、不規則な呼吸から規則的な呼吸に直っていく。
💡〈ありがとっ、ロウ〉
👻🔪〈おう〉
ロウは俺を近くのゲーミングチェアに座らせてくれた。
💡〈ッ逃げれたの?〉
嗚咽混じりの声で星導に問う。
🐙🌟〈そうですね、オトモにワープの宇宙空間を取って来て貰ったんで〉
こうするしかなくて、と俺に頭を下げた。こうするしかなかったのなら、しょうがない。
👻🔪〈まぁ、じゃんけんで負けてせっかくのチャンスがなくなるんだったら、これが最善だな〉
下手したら死んでたし、それにしても何か合図してほしかったと思う。
💡〈マナは!?〉
🐙🌟〈マナなら、少し刺激的な物を見せて気絶させました。大丈夫です、脈も呼吸も正常ですよ〉
星導がほらとマナが寝てるベッドを指差した。近付いてほっぺを触ってみるとビックリするぐらい、冷たかった。自分でマナの脈が心臓が動いていると確認しないと安心出来なくて、マナの手首や首などから脈を測っていく。マナの胸らへんに耳を当て心音を聞いてみると、ドクドクと規則性のある心音が聞こえやっと一息つけた。
💡〈良かったッ、〉
星導がどんなものを見せたのかは分かんないけど、人間は脆いんだから
👻🔪〈でも良かったのか?もし、マナにGPSとか付いてたら俺らの居場所丸分かりだぞ〉
💡〈100%無いとは言い切れないけど、それに関しては大丈夫、〉
一応めちゃつえーの面々の家には通信妨害を張っていて、限られた通信機気からしか発信や受信出来ないようになっている。
🐙🌟〈それで、どうします?マナのこと〉
【rb side】
三人でマナの寝ているベッドを囲む。相変わらずマナはすぅすぅと寝息を立てながら寝ている。起きた瞬間変身して逃げられないように変身デバイスは外して、……こんなことしたくないが足枷をつけている。
👻🔪〈居酒屋で話した通りだ、まずイッテツを起こす〉
💡〈じゃあ解毒剤が完成するまで待つしかないか…〉
ライはマナを愛おしそうに…でも悲しそうに眺めながら髪を梳いた。それを俺達は見ているしかなかった。数時間経ってもずっとマナの傍を離れず、眺めるばかり。だけど、一つチャイム音が鳴った。二人と目配せをしていつでも攻撃を仕掛けられても動けるように変身しておく。マンションのようにスコープがなく確認できないのでドアを開けるしかない。
👻🔪〈開けるぞ(小声)〉
一呼吸置いてから、こくっと頷く。
ギィィという嫌な音を立てドアが開く。見慣れた黒髪、紫紺の眼、ワイシャツのようなヒーローコスチューム。縮こまりながら俺達を見た、
🤝〈こ、こんばんは~…?〉
💡〈あれ、イッテツ?〉
🤝〈うん、そうだけど…?〉
何でこんなに警戒されてんの?とイッテツが呟いた。
👻🔪〈お前本当にイッテツか?〉
🤝〈な、なに?〉
キョロキョロと目が信じられないほど早く動いていて、イッテツのパッシブスキルが輝いてる、
🐙🌟〈イッテツ、日本の首都は?〉
🤝〈千葉、滋賀、佐賀〉
💡〈!…くぅ~疲れましたw〉
🤝〈これにて完結です〉
👻🔪〈うぽつ〉
🤝〈ガッッ!〉
全て間髪入れず即答された。
🤝〈…俺試されてる?〉
🐙🌟〈本物のイッテツみたいですね〉
💡〈良かったぁ~、〉
本物のイッテツでも、まだ惚れ薬が効いていたらマナに危害が及ぶかもしれない。それだけはどうしても避けたい。
🐙🌟〈…何しに来たんですか?〉
笑顔でも少し圧を掛ける。するとイッテツは猫のように縮こまった。
🤝〈ッマナ君に謝りたくて…〉
何で居場所が分かったんですかね、やっぱり怪しい
👻🔪〈ほお?〉
小柳くんがグルグルと威嚇しながら喉を鳴らす。俺からしても背中がビリビリと震えるほど威圧感がある。イッテツからしたらもっと怖いだろうな、小柳くんとは敵になったら負ける気しかない。
🤝〈僕は、カゲツ君達みたいな事は言わない!!〉
ドンッと自分の薄い胸板を叩いて、高らからに宣言した。
🐙🌟〈でもあの時は言ってましたよね、今言わないっていう絶対的な証拠は?〉
🤝〈…う……ないけどさぁ………、〉
と、少し涙目になってしまった。でも、全てはマナの為。
💡〈二人とも意地悪しすぎ、いいよイッテツ入りな?〉
ライが小柳くんを押さえ付ける姿は、犬をおとなしくさせる飼い主みたいだ。
👻🔪〈でもッ〉
💡〈ロウとるべだって…イッテツが謝りに来たってことは分かるでしょ?…気が張るのは分かるけどさ。
それに、薬に掛かってない人同士で仲間割れしたった悪い事しかない、ほらごめんなさいして、〉
🐙🌟〈……そうですね、イッテツごめんなさい〉
👻🔪〈ごめん〉
一番気を張ってるのはライだと思っていたが、俺達だったみたいだ。
🤝〈マナくッ、〉
と、イッテツが声を出そうとしていたがライがしっ、まだ寝てるからと言いイッテツを制止する。イッテツは出そうとしていた声を唾と一緒に嚥下した。
🐙🌟〈何でマナの居場所が分かったですか?(小声)〉
🤝〈前にボコられた時にこっそりGPS付けてたんだ(小声)〉
あんな短時間で…流石ヒーロー
💡〈あ、この前俺があげた奴?(小声)〉
👻🔪〈……取り合えず!イッテツは惚れ薬に掛かってない認識で良いんだな?(小声)〉
🤝〈うん、大丈夫…。(小声)〉
「ん…此処どこ?」
目を擦りながらムクッと上半身だけ起き上がった。俺達を一瞥すると、あぁ、と全てを理解したような声を出した。
「ヒーローさん達…いや、アンタらの仕業か」
今のマナにとって例えどんな物でも凶器になる。足枷が着いてるにも関わらず素早く動き俺のシャーペンを掠め取り、イッテツの喉に突き付けた。
「コイツが殺されたくなかったら、はよおコレ取れや」
マナは俺達を睨みつけた。今にでも喉を噛み切られそうな感じがある。ドスの効いた声、ライオンのように睨みつける目、こんなマナ初めてみた。マナにとっては俺達がヴィラン側、こざかしーはいつもこの目で見られているのか、
🤝〈マナ君、俺達を憶えてないの?!〉
首にペンを突き付けられているというのにマナに向かい合い、抱きしめた。
「なんや、お前っ!離れろっ!!」
と、マナはイッテツの首に軽くペンを突き刺した。つぅと一筋の紅い血が流れた。
🤝〈ッやだ〉
「お前、殺すぞ」
🤝〈…やってみなよ、君は俺を殺せないから〉
完全にマナが怒ったのかビキビキと青筋が出てきた。そして軽く突き刺してあったシャーペンを最後まで押し込んだ。イッテツは咳込んだ、次第に吐血混じりの咳になる。シャーペンの隙間からダラダラと流れ落ち、フローリングが紅く染まっていく。
🤝〈君にはッ無理だッ〉
喉からひゅうひゅうと空気が抜ける音が聞こえる。
マナはペンを引き抜いてもう一度イッテツに突き刺した。今度は首ではない背中だ。そして、刺したペンを横に動かした。ブチブチと皮膚や裂けていく。イッテツが嗚咽交じりの呻き声を上げる。それでもイッテツはマナを離さなかった。マナがどれだけ暴れても強く抱きしめて動かなかった。
🤝〈…俺はッ死ねないっッ、〉
「はよ死ねやッ!」
マナは怒鳴り付けるようにそう言い、暫くするとあ、と何かを思い出したかのような声を出し俯いた。
🤝〈っねぇ、マナくッ、俺ッっ目を見て話せるようにっなったんだよッ?〉
イッテツは大人しくなったマナを見ると抱きしめていた手がだらりと落ちた。口から沢山の血が溢れる、立つのが限界なようでフラフラと千鳥足になっている。
🤝〈マナ君っ…何でッ俺の目を見てくれないのッ?〉
と、イッテツは大粒の涙を流しながら優しく語りかけるようにマナに話す。でもプツンと電池が切れた玩具のように、倒れた。床に鮮紅の血が広がっていく。涙が止まり、息の音は聞こえて来ない。
「……あ、あれ…、何で…こんな..こと…、お、おれっ…ッ」
マナはペンを手放しそこに座り込んだ。
「…なんでッ…、おれっ、わ…わかんないッ、…っあれぇ……?」
何で、分からない、とマナはひたすら自問自答する。ライはマナの傍に行き、大丈夫大丈夫と囁きかけながら背中を摩る。
数秒後、イッテツのデバイスから一匹の紫色の猫が出てきた。マナの周りを一周し俺達を一瞥した。にゃーんと鳴くとイッテツのお腹に飛び込んだ。すると煙草の匂いのような煙が上がり、裂けた皮膚や服がみるみる直っていく。床に広がっていた血も逆再生されるように身体の中に戻っていった。
🤝〈…よぉし!完全復活!〉
と、元気いっぱいに両手を天井に掲げた。
「…へ、ぇあ…、…ッよかったっ、」
ばっ、と上げたマナの顔は目の回りが真っ赤に張れていた。
🤝〈…だから言ったでしょ?君には俺を殺せない〉
イッテツはマナの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。まるで小さい子を慰めるかのように、
「…ごめッっなさぃッ..、…酷いことッ言ってっ…、…テツっ…!」
マナは再び大粒の涙を零した。
🤝〈…!!マナ君、僕達の事思い出してくれたの?!〉
「…うん、思い出した。…全部」
涙を拭い取り真っ直ぐ曇りなき目で俺達を見た。
「…あの三人は…元気にやっとる?」
👻🔪〈あぁ、〉
「良かったッ…、」
「あん時ッ、俺が殴ったりしちゃったから」
🐙🌟〈気にしないでくださいよ、元を言えば俺達が悪いんですから〉
マナは眼から零れる涙を乱暴に拭き取った
「でも俺は、今すぐにでも謝りたい」
💡〈…今じゃなきゃ駄目?〉
もう少しで解毒剤は出来るはず、だけど…。
「我が儘を言っとるのは分かってる…でも…、今謝りたい」
👻🔪〈マナがそう言うなら…〉
小柳くんはポケットからスマホを取り出し、トトトと文字を打ちスマホを再びポケットに戻した。俺のスマホとライ、イッテツのスマホにバイブ音や通知音が鳴り響いた。マナもスマホを持っているはずだが。…あの三人がグループチャットからマナを追い出したのだろう。
👻🔪〈今日の十七時、あの廃工場で集まるように言っといた〉
解毒剤が出来上がってないし、まだ色々と揃ってない。だが惚れた状態が治らなかったとしても、あの三人には一発殴ってやりたい。それはここにいる皆が思っているはずだ。
👻🔪〈覚悟は良いか?マナ〉
「うん、ロウありがとぉな」
優しく柔らかく微笑んだ。世界一綺麗だった。
そのマナの笑みを見ると目に涙の膜が張り、周りがにじんで見えるようになった。俺いつもあんまり感情に起伏がないんだけど、…あぁきっと…嬉しいんだ。
🐙🌟〈っ…一発ぶちかましますかぁ!!〉
🤝💡〈やるぞぉっっ!!〉
現在十五時、五人の男の闘志が燃え上がった。
コメント
7件
きたー!!!まってました🥹🥹🥹マジでこっちが死にかけながら読んでました、無理なく更新まってます🎶♡
わああああ!!!待ってました!!3人ってまだ惚れ薬効いているのに大丈夫かな、、、続き楽しみです!
うわぁぁぁぁ!!!待ってました〜!!!😭続きめちゃめちゃ楽しみです🥹