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四月十六日。
この日、開催された『ケンカ戦国チャンピオンシップ』ではナオト(ショタ状態)という旅人が一、二回戦で素晴らしい勇姿を見せた。
今回はついに三回戦が始まる。
たった四人しかいないが、バトルロワイヤル形式で戦うそうだ。
「それで? いつ始まるんだ? 三回戦は」
「おい、ナオト。お前は今さっき目覚めたばかりだろう? もう少し休んだ方が……」
「心配いらねえよ、ブラスト。俺の体は『ミカン』の固有魔法『復活《リバイバル》』で完全に修復されてるし、精神的な疲労は『ミカン』が膝枕してくれたおかげで、きれいさっぱりなくなったから」
ブラスト・アークランド。一月の誕生石をその身に宿した斧《おの》使い。かなりの大男。
「ソノトオリ。ワタシ、ガンバッタ」
「ん? おい、ナオト。こいつは先ほどまで敵だったやつだろ? もうお前に懐いたのか?」
「いや、懐いたっていうよりかは分かり合えた感じかな。なあ? ミカン」
「ウン、ワタシハ、ナオト二、イノチヲ、スクワレタ。ダカラ、ナオトハ、ワタシガ、マモル」
天使型モンスターチルドレン製造番号《ナンバー》 四の『ミカン』。旧名『ハル』。オレンジ色の長髪とピンク色の瞳が特徴的な美少女……いや美幼女。
四枚の翼と先端がドリルになっているシッポがある。
「ほらな? 大丈夫だろう?」
「まったく、お前というやつは打ち解けるのが早いな。正直、羨《うらや》ましいぞ」
「いや、これは別に意識してやってるわけじゃないからマネしない方がいいぞ?」
「お前に言われずとも、そんなことは分かっている。というか、まずマネできない」
「そうか。それじゃあ、そろそろ始めようぜ!」
その時、実況の『トワイライト・アクセル』さんが三回戦の始まりを告げた。
「それでは! 『ケンカ戦国チャンピオンシップ』三回戦を始めたいと思います! 皆さま! どうぞ、心ゆくまでお楽しみください!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
やれやれ、こんな歓声を浴びながら戦うのは正直やりづらいんだよな……。
まあ、やれるだけのことはやるか。
ナオトは心の中でそう呟《つぶや》くと、残りの二人に話しかけた。
「なあ、ブレイク。お前のそのハンマーって、もしかして……」
ブレイク・デストロイ。逆立った赤髪と金色の瞳が特徴的な若者。
白い鎧を身に纏《まと》っており、武器は白い大槌《ハンマー》である。
「おっ、やはりお前には分かるか。そうだ。これは聖槌《せいつい》ミョルニルだ」
「いや、その……ブレイズが持ってるのが『魔剣デュランダル』なら、お前のハンマーもそういう類(たぐい)のものだって思っただけだ」
ブレイズ・デスフレイム。黒髪、黒い瞳、黒い鎧、黒い剣が特徴的な若者。
その黒い剣(魔剣デュランダル)には血液が流れているかのような模様が描かれている。
「なるほど、そういうことか。それじゃあ、そろそろ始めようぜ! ナオト!」
「ああ、そうだな。お互い思う存分楽しもうぜ! ブレイク!」
その時、ブラストとブレイズが割って入った。
「ナオト、いくらバトルロワイヤルといえども、お前が戦うのは後半の方がいいと思うぞ?」
「ブレイク様。ここはあなたの騎士である、この私にお任せください」
お互いやる気満々だったが、味方の気遣いを無視するほど戦闘狂ではなかった。
「……分かった。お前の言う通りにするよ」
「そうか。なら、お前は少し見学していろ」
「ああ、分かった。頑張れよ、ブラスト」
ブラストは「まあ、やれるだけのことはやるさ」とだけ言うとブレイズが歩き出すのを待つことにした。
「お前がそこまで言うのは久しぶりだな。よし、分かった。ここはお前に任せてやるよ」
「ありがとうございます。あなた様の騎士の名に恥じぬ戦いをして参ります」
「おう、頑張れよ」
「はい。では行って参ります」
ブラストとブレイズは、ほぼ同時に闘技場の中心部に向かって歩き始めた。
中心部に到着すると、それぞれの力を解放した。
「『|大罪の力を解放する斧《トリニティブラストアックス》』よ! 今こそ我に大いなる力を与え給え!」
その直後、ブラストの目の前にその斧《おの》が出現し、彼の右手に収まった。
「魔剣デュランダルよ! 今こそ、その力を我が前に示せ!!」
抜剣後に言ったその言葉に反応するかのように、その剣に描かれている血液のような模様が赤き光を一瞬だけ放った。
その後、ブラストとブレイズは相手の出方を窺《うかが》った。____そして。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああああああ!!」
両者は、ほぼ同時に床を蹴ると、ただひたすらに走り出した。
斧と剣がぶつかり合うと、火花が飛び始めた。
「俺はナオトのようには戦えないが、新たな力を手に入れるためのヒントにはなった。正直、何度か試しておきたかったが、ぶっつけ本番というのも悪くない」
「ほう、貴様もか。実は私も新たな力を使ってみようと思うのだ。少し付き合ってくれないか?」
「望むところだ! かかってこい!!」
「貴様に言われずとも私は最初からそのつもりだ!」
両者は一度、距離を取ると深呼吸をした。
「ブラスト、お前いったい何をする気なんだ?」
「ナオト、俺は今から新しい力を試そうと思う。俺はお前と同じ誕生石使いだが、一、二回戦のお前のような戦い方はできない。しかし、正直、俺はお前に憧れてしまった。だから……」
「俺みたいな鎧を纏《まと》って戦いたいってことか?」
「ああ、その通りだ」
「あのなー、別に俺と同じようにしなくてもいいんだぞ?」
「だが、それではブレイズに勝てる気がしない。だから……」
「そうか。まあ、お前のやりたいようにやればいいさ。ぶちかましてこい、ブラスト」
「……ありがとう、ナオト。では、俺のやりたいようにやるとしよう」
ブラストはそう言うと、ブレイズの準備が整うまで待つことにした。
「ブレイク様。私は今から、禁忌の力を解放しますがよろしいでしょうか?」
「おいおい、お前は俺の許可を得ないと何もできないのか?」
「いえ、決してそのようなことは……」
「だったら、自分のことは自分で決めろ。お前はお前のやり方を貫き通せ」
「ブレイク様……。分かりました、それでは久々に暴れてきます!」
「おう! 暴れてこい! ブレイズ!!」
両者は自分の武器にありったけの魔力を込めると大声で叫んだ。
「『|大罪の力を解放する斧《トリニティブラストアックス》……|柘榴石の形態《ガーネット・モード》』!!」
「『魔剣デュランダル……全能力極限解放《マキシマムブースト》』!!」
ブラストの全身をマンダリンガーネットの鎧が覆う。
瞳の色は黄緑色に変化。
斧《おの》は、一回り大きくなった。
ブレイズの魔剣デュランダルがさらに大きくなると、彼の瞳の色は黒から赤に変わった。
「行くぞ! ブレイズ!!」
「来い! ブラスト!!」
両者は先ほどよりも力強く床を蹴ると、猛スピードで走り出した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああああああ!!」
斧と剣が再びぶつかり合うと、再び火花が飛び始める。
先ほどよりも、両者の武器の威力が増していることは誰の目にも明らかだった。
そして、戦いはいよいよ最終局面へと移行した。
斧と剣がぶつかり合う度に飛び散る火花。
会場全体に響き渡る金属同士がぶつかる音。
一瞬の油断も許されない状況下で両者は大技を放った。
「『|超高速回転式巨大竜巻《ダイナミックブラスト》』!!」
ブラストがその場で斧《おの》をハンマー投げのようにぐるぐると回し始めると巨大な竜巻が出現した。それに対してブレイズは。
「『|大量殺戮用の死の炎《ジェノサイドデスフレイム》』!!」
そう言いながら剣を肩の位置に構えた直後、ブレイズの魔剣デュランダルの周囲に赤黒い炎が出現した。それは次第に魔剣デュランダルよりも大きくなり、やがてその炎は巨大な赤黒い大剣と化した。
ブラストはその竜巻を発生させたまま、ブレイズに突進した。
ブレイズは剣を両手で構え、切っ先を天に向けると、その赤黒い炎でできた大剣を一気に振り下ろした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああああああ!!」
両者の技がぶつかり合うと、その衝撃波で闘技場の床が少し崩壊した……。
____闘技場に立っているのが確認されたのは、今のところ、ナオトとブレイクだけだった。
「あれ? ブラストのやつ、どこに行ったんだ?」
「ブレイズは……どうなったんだ?」
二人が辺りを見渡していると、仰向けで倒れているブラストとブレイズを発見した。(二人とも、元の姿に戻っている)
「おーい、大丈夫か? ブラスト」
「お……おう、なんとか……な」
「そうか……でも、その体じゃ、もう戦えねえな」
「俺は……ブレイズと……戦えたから……それで満足だ」
「そっか……。じゃあ、ゆっくり休めよ、ブラスト」
「ああ……。では、あとは頼んだぞ……ナオト……」
ブラストはそう言うと気を失ってしまった。
その頃、ブレイズは。
「申し訳ありません。ブレイク……様」
「おかしなやつだな、なんで謝るんだよ……」
「それは、あの男を倒せなかった……からです」
「あのなー、そのくらいのことで俺がお前をクビにするとでも思ってたのか?」
「い……いえ、決してそんなことは……」
「お前はよく戦ったよ。魔剣デュランダルのリミッターを解除したお前と互角に戦えた、あいつもすげえけど、お前自身もすげえってことを忘れるな」
「あ……ありがとうございます。ブレイク……様」
「あとは俺に任せろ。お前のようには戦えねえが、精一杯、戦ってくる」
「いってらっしゃい……ませ。ブレイク……様」
「おう、任せとけ」
その直後、ブレイズは気を失ってしまった。
ナオトとブレイクはお互いの目を見ながら闘技場の中心部に向かって、ゆっくり歩き始めた。
「ナオト、ワタシハ、ドウスレバイイノ?」
「え? あー、まあ、戦いが終わるまで待っててくれとしか言いようがないな」
四枚の翼を羽ばたかせながら、ナオトの横を飛行している『ミカン』にナオトはそう言った。
「ソ、ソンナ……」
「なんだ? お前も戦いに参加したいのか?」
「ソ、ソンナコトハ、シナイ。ケド……」
「けど、なんだ?」
「ナオトガ、ムチャスルンジャナイカト、オモッテ」
「……無茶? バーカ、そんなことしねえよ」
「……エ?」
「俺には待っててくれる家族がいる。だから、こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ」
「カゾク……。ワタシモ、ソノイチイン」
「そうだな。お前も大切な家族の一員だ。けど、俺はどうしても戦わないといけないんだ。だから、俺を信じて待っててくれないか?」
「……ワカッタ。ワタシハ、ナオトヲ、シンジル!」
「そうか……ありがとな、ミカン。おっと、そろそろ始まるみたいだから、お前は邪魔にならないところにいるんだぞ?」
「ウン! ワカッタ!!」
ミカンはそう言うと俺が歩いてきた方向に飛んでいった。
おそらく、闘技場の隅《すみ》の方に行くつもりだろう。さてと、それじゃあ、やりますか!