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us「…っ!」
「痛ってぇなぁ、下僕が歩いてんじゃねえよ!」
拾われてから数日、当たり前のように使用人達にこき使われる日々を過ごす。
館の下僕となってからは、捨てられる恐怖に怯えながらなんとか耐えていた。
「usちゃ〜んこの仕事やっといてくんない?笑」
水が入ったバケツを被せられ、呆然としている俺の顔を見てクスクスと笑われる。
手を差し伸べてくれる人もおらず、涙を堪えながら従順に肯定するしか出来なかった。
俺に歯向かう権利なんてなく、彼や使用人達が満足するまで耐え続ける日々。
どうして俺ばかりこんな目に合うんだろう。
未来のことを思うとその事が頭でいっぱいになり、俺は不安で不安でたまらなかった。
ただ…そんな日々の中で、一つだけ幸運な事があった。
1日の締めに、行為が終わってからのことだった。
勿論、最中の時は胸が締め付けられるように痛いけれど…それでも。
こんな俺を拾ってくれた彼には、苦難の気持ちよりも感謝の方が大きかった。
彼の部屋は、使用人達から逃げられる幸せな空間だった。
それが無ければ、今頃俺は疲労によって殺されていただろう。
gt「寒いから寄って」
us「…うん」
灯りを落とした部屋に、規則正しい呼吸だけが満ちている。
彼はそっと腕をのばし俺の背中を包み込んだ。
俺は小さく息を吸って、その温もりを確かめるように身を寄せる。
gt「…」
そんな日々を過ごしている内に、俺はとあることに気がついた。
us「…?」
彼がよく、泣きそうな顔を見せること。
普段は俺のような他人をあてがって、本心の衝動を誤魔化していたことには何となく気づいていた。
でも…今日の彼はなんだか非日常的だ。
us「…」
気が付けば…俺の手は彼の頬に触れていた。
彼の大きな青い瞳に気付かされ、己の行為に頬がじんわりと朱に染まっていく。
us「あ…」
瞳が合うと、背中を抱きしめる腕の力は強くなっていった。
心がきゅうっと締め付けられ、彼は俺から離れようとしない。
gt「俺に許可無しで触れていいと思ってんの?」
us「ご、ごめん…」
記憶の底に沈めていた面影が、静かに輪郭を取り戻した。
彼の泣きそうな顔は、少し前の俺と面影が似ている気がする。
無実の罪で追い出され…希望もない瞳の色をした俺と。
us「…そんな悲しい顔、見たくなかった」
gt「…」
1度経験した者ならわかる事だ。
こんなにも美しくて秀麗な彼が力量不足だと仰る地球は、なんて罪深いんだろう。
俺のような能無しを軽蔑しようが嘲ろうが…そんなのどうだっていい。
被害者を出したくなかった思いが、俺の手に宿って無意識に止めようとしているのだろう。
gt「…君にはわかるんだ」
gt「俺の気持ちが」
その言葉を聞いて、彼はほんの一瞬微かな笑みを零した。
gt「死ぬ気で努力をしても、お母様やお父様は愛をくれなかった」
gt「そのせいで、俺の生きる価値はなんなのか…いつも考えてしまうんだよ」
gt「最高権力者であった君なら…親や周りからのプレッシャーに耐えきれない俺の気持ち、わかるよね?」
彼の声は少しだけ震えていた。
us(…俺にこんな扱いをするのも、今みたいに抱き合っているのも)
us(全部、愛をくれる存在が欲しかったってこと?)
俺は人知れず、彼の生い立ちを想像してしまい心の中で泣いていた。
経験者でありながら、自分と同じ境遇の人間に寄り添うことができなかった事にむしゃくしゃする。
us「…俺はgtさんが大好きだよ」
us「味方なんていなかった俺に手を差し伸べてくれたこと、今でも覚えてる」
us「……ちょっと乱暴なとこはあるけど…笑」
離れかけたその身体を引き寄せ、今度は俺の方から強く抱き締めた。
us「世界中が貴方を敵に回したとしても、俺はいつまでも味方だよ」
us「心の奥にある優しい心は、俺が全部知ってるから」
こんなに人に笑顔を見せたのは何日ぶりだろう。
沈黙が経った後、胸の内に小さなとげのような恥じらいが生まれ思わず息を飲み込んだ。
頬の火照りが耳まで届くと、あまりの羞恥心に顔をすくめた。
us(下僕の分際で何を言っているんだ)
us(これは嫌われたかな…)
彼の顔を直視することが出来ず、視線を合わせることができない。
謝ろうとしたその瞬間…言葉の代わりに距離が消えて、気づけば唇に柔らかな熱が触れていた。
us「??」
ほんの一瞬。けれど、離れた後もその温度は残り続ける。
驚きと、否定できないときめきを抱えたままだ。
gt「おやすみのちゅーだよ」
gt「…ふふ」
ようやく口を開いたと思ったら、まるで恋人のようなセリフを吐き出す彼。
人差し指を唇に添え、呆気にとられている俺を見て悪女のように笑っていた。
【第3話 ~完~】