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548
榎本くもり
6,007
すみじお
41
音舞 澪彩

790
港に着き、船を降りる。
ルドミラとエドゥ、そしてハヴァマールから歓迎を受けて抱きつかれた。
「待っていた、ラスティくん」
「おっす、ルドミラ。ドヴォルザーク帝国から戻ったよ。そっちは元気そうだけど変わりはないか?」
「みんな健康に問題はないよ。ただ、報告は一件ある」
「む? そうか。後で頼む」
一件かあ。何事だろうな。
少し嫌な予感がするが――まあいいや。
今はみんなの無事を祝おう。
「久しぶりです、ラスティ様」
「エドゥも元気そうだな」
「はい、あれからずっと島を守っていました。調査も随分進みましたよ」
「おぉ、さすがだな。こっちも移住希望者を募ってきたところだ」
「ついに人がやってくるのですね!」
エドゥは変わりなくか。
さて、次に照れ臭そうに立ち尽くす我が妹。
「どうした、ハヴァマール。なんか、らしくないぞ」
「うぅ……兄上」
「おいおい、まさか離れ離れになって寂しかったのか?」
「そ、そんなことはない! 断じて!」
とか言いつつも動揺してるな。
まさかこの兄を思ってくれていたとはな。けど、ハヴァマールのおかげで『聖槍グングニル』を使用できるようになったし、助かった場面は多かった。
「ハヴァマール、こっちへ来い」
「そ、そのぉ……うん」
走って来るハヴァマールは、俺に抱きついて来た。まさか、寂しい思いをさせてしまっていたとは。
猫耳が垂れ下がっているし、尻尾も元気がない。
妹は連れていくべきだったかもしれないな。ちょっと反省しつつ、俺はハヴァマールの頭を撫でた。
最後に気になる人物。
ロープでぐるぐる巻きにされたテオドール。口元も布で塞がれているし、苦しそうだ。いったい、何をしたらそうなるんだか。
「なあ、ルドミラさん。テオドールなんだが」
「やっぱり気になる?」
「そりゃな。これでは、挨拶も交わせないぞ。何があった?」
「うん。実はね、神聖王国ガブリエルの刺客が現れたんだ」
「なんだって!?」
俺とスコル、ストレルカが船でドヴォルザーク帝国へ旅立った後、神聖王国ガブリエルから来たという青年に襲われたらしい。
名を『ヤスツナ』というらしい。
変わった名だな。
まるで“異国”の人みたいだ。
「――で、私が倒して牢にぶち込んだんだ」
「それがどうテオドールに関係するんだ?」
そこからはエドゥが話してくれた。
「そのヤスツナは、他人の体に乗り移る特殊なスキルを持っていたんです。だから、今のテオドールの中には『ヤスツナ』がいるんです」
「なっ!!」
そんな馬鹿な。乗り移る能力だって?
それでこんなグルグル巻きに拘束されていたのか。
スコルが心配そうな顔で「なんとかならないのですか?」とエドゥに聞くけど、首を横に振るだけだった。
「それが、未知の力が使われているんです」
それは大賢者であるエドゥにすら分からない代物らしい。マジかよ。コイツが分からないなら、誰が分かるんだ。
神聖王国ガブリエルの謎技術ってことか。
――ん?
待てよ。
神聖王国ガブリエルか。
「そうだ、みんなに紹介していなかった」
みんな「?」と浮かべ、俺に注目する。俺は懐から、超ミニマムサイズの獣人ドムを取り出した。ドムは諦めているのか眠っていたけど。
「兄上、それは?」
ハヴァマールが珍しそうにのぞき込む。
「うん。コイツは『ドム』。ちっこいけど獣人だ。ドヴォルザーク帝国で襲われてな。なんと神聖王国ガブリエルからやって来た男だ」
「な、なんと! 兄上の方でも襲われていたのだな」
「そうなんだ、ハヴァマール」
このドムなら、ヤスツナのことについて何か知っているかもしれない。俺は眠っている掌サイズのドムを指で突く。
瞬間、サイズが戻っていく。
そうか、スキルの有効期限が切れたのか。
「んぉ!? んおおおおおおおお!!」
ムクムクと多くなっていくドムは、元のサイズに戻った。こうして見ればデケェな。
瞬間、ドムは殺意をもって近くにいたハヴァマールを人質に取った。
「しまった! ハヴァマール!!」
「あ、兄上……」
ドムのゴツイ腕の中でハヴァマールは涙を流す。くそっ、スコルが施してくれた『ミニマム』の効果がこんなタイミングで切れるとは――!
「フハハハハハ!! 油断したな、ラスティ!! この間抜けが!! これで形勢逆転ってわけだ」
「ドム、てめえ」
「お~っと、動くんじゃねぇぞ! この銀髪の嬢ちゃんの顔がどうなっても知らねぇぜ? いっそ、お前の目の前で服をひん剥いてやろうか!?」
邪悪に笑うドム。
……ああ、そうだ、この男は『神聖王国ガブリエル』の刺客。敵だ。
当然、元に戻ればどんな手段を使ってでも俺を苦しめてくる。そういう男だ。
「ドム、ひとつ聞かせろ」
「あぁん!? 俺様と取引ってか!? まあいいぜ、言ってみろ」
「そこのテオドールに『ヤスツナ』ってヤツが乗り移っている。元に戻す方法はあるのか?」
「ヤスツナぁ? ああ、あの若造か。異国出身で、なぜかニールセン様に気に入られているんだ。気に食わねえ」
「元に戻す方法は知らないか?」
「あぁ? 馬鹿かお前。誰がそんなことを教えるか!!」
――ということは、なにか知っているようだな。ドムは、ヤスツナを知っているようだし……つまり、関係者。幹部クラスの繋がりがあると推測できる。
「分かったよ、ドム」
「動くなって言ったろ! お前の妹だか知らんが、殺すぞ!!」
「分かっていないな、お前は」
「なに? 分かっていない??」
「この島はな、俺の島なんだ。無人島開発スキルで作り上げた最強の島なんだぜ」
俺は手を挙げた。
すると後方の地面から『砲台』が上がった。
秘密兵器を隠しておいて良かった。
これを使う時がきた。
「な、なにをする気だ!?」
「てめぇには、これを『魔導レーザー兵器』をお見舞いしてやる!! いけえええええええええ!!」
火力を最大にするとハヴァマールまで巻き込んでしまうので、俺は威力を調整。一番弱い火力のレーザーを放った。
「ばかなあああああああああああああああああ!!! うあああああああああああああああ!!」
ドムの顔面に命中して一気に海へ押し出す。その隙に俺はハヴァマールを救出した。
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