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「ユリ姉さん、ブリギッテさんの来客って誰なんですか? ずいぶんとお話に時間がかかってるような気がするんですけど……。やっかいなクレーマーさんとかですか?」

「ああ、言ってなかった? うちの総長だよ」

「ほえ?」


……あ、また口癖が……。

でも仕方ないよね。だって「総長」って言ったよ。

総長って、組織の一番偉い人だよね?


「総長は電撃訪問だね。抜き打ち検査ってやつ」

「ブリギッテさんはダメな支部長何ですか?」

「あはは、違うよー。ブリギッテさんは優秀な支部長だよ。抜き打ち検査の主な理由はアリアちゃん達」

「へ?」


なんでわたし達? ブリギッテさんに迷惑かけてないよね?

プールの日に会ってから一度も会ってないし……。


「訓練所でも言ったけど、お姉ちゃんや私が個人稽古を頼まれるのって珍しいんだよね」


そう言えば、そんなことを言ってたね。

普段は本部勤めで首都にいるって。


「考えてみて。お姉ちゃんは上から3番目に偉い人、私も近い立場。そんな人が小都市まで出向いて個人に稽古をつける。しかも相手は小学生。総長が気にならない訳ないよね?」

「……そうですね」

「で、ブリギッテさんに何かあったんじゃないか? 支部の運営に影響はあるのか? 組織のトップとして現場を確認しなきゃ駄目だ、てなったの」

「なるほど……」


……なんか、わたし達のせいで大事になったみたい。ごめんなさい、ブリギッテさん。


「ブリギッテさんはね、組織の立ち上げメンバーの一人で、総長の信頼が厚い凄い人なんだよ。お姉ちゃんや私は後輩だね。立場的には私達の方が上だけど、ブリギッテさんには頭が上がらないかなー」

「立ち上げメンバーの一人……」


……そっか、だからシズカさんもユリ姉さんもブリギッテさんのことを「さん」付けだったんだ。ブリギッテさんの馴れ馴れしさと、シズカさん達の立場が合わな過ぎてモヤモヤしてたんだよね。


「予定では最初にブリギッテさんに会って、それから私達と一緒に行動するはずだったんだけどね。ま、今頃はお姉ちゃんからも報告を受けてるだろうし、普通に世間話でもしてるんじゃないかな?」


ああ、だからシズカさんは直ぐに出て行ったんだ。

総長さんにわたし達のことを報告しに行ったんだね。


「リディアさーん、案内終わったけど、ブリギッテさん達の話って終わった?」

「ユリカ、お疲れ様。もう少しみたいよ。隣の待合室で休んで待ってて」

「了解でーす」


……ん、また違和感があるよ。

「初めての方はこちらへ」に座ってる受付のお姉さん、ユリ姉さんのことを呼び捨てにしてたよ。まさか、この人も………。


「あの、ユリ姉さん………」

「うん、なに?」

「受付のお姉さん、何者ですか?」

「リディアさんのこと? ブリギッテさんの同期だよ。怒らせると怖いから注意してねー」


……それって、立ち上げメンバーの一人ってこと?

ブリギッテさんもそうだけど、なんでそんなに凄そうな人達が小都市の支部にいるんだろ?


「組織の立ち上げメンバーってことですよね? そういう人達って、普通はもっと偉い立場にいるんじゃないんですか?」

「普通はそうかもねー。ま、そこは企業秘密ってことで、ね」

「企業秘密ですか?」

「そう。下手に知ったら監禁されるからね。深く詮索しないことを勧めるよー」

「もう聞きません!」


……怖すぎるよ! 監禁って何!? この組織って、もしかして結構ヤバい?

この建物自体がありえない大きさだもんね。裏で世界を牛耳る闇の組織って言われても、やっぱりね……、て感じだよ。


「アリアちゃーん、失礼なこと考えちゃだめだよ。監禁しちゃうよー」

「ごめんなさい!」

「あはは、アリアちゃんは考えが顔に出ててわかりやすいから、楽しいねー」


……うん、もう考えない! 考えちゃダメ!


「そうそう、考えちゃ駄目だよー」


なんで分かるの!? 特殊能力!?


「なんでって、ねー……。特殊能力じゃなくて社会経験、かな?」


……もう! こうなったら………無心、無心、無心………。


「無心になってもわかるよー」

「………ごめんなさい。もう心を読まないで下さい………」


何を思ってもダメだ。

………まさか、さっちゃんにも心を読まれてる?


「ねえ、さっちゃん。もしかして、さっちゃんもユリ姉さんみたいに心を読めるの?」

「読めるよ、アリアちゃん限定だけど」


さっちゃんも特殊能力者だった……。


「そうなんだ……。あまり心の中は読まないでくれると嬉しいな」

「私からは読んでないから安心して。アリアちゃんが心を見せてくれた時だけだから」


……それって、顔に出たらってことかな?


「うん、そう。今みたいに顔に出たとき」

「そっか……」


もう、常時見られてると思っていいかな。あきらめよう。


「あははは、アリアちゃん、最高にいいよー! そのままでいてね!」

「嫌です」

「素直で可愛いねー。さ、待合室でゆっくり待ってようよ」

「はい」


……貝になろう。わたしの心を貝にするんだ。閉じこもろう。


「アリアちゃーん、閉じこもってないでコレ食べてみて、美味しいよー」

「………頂きます」


……なにこのお菓子! 凄くおいしい! 何個でも食べられるよ!

あ、お茶もおいしい。お菓子とすごく合う。


「すごくおいしいです! さっちゃんもほら、食べてみて、はい、あーんして!」

「ありがとう……うん、美味しいよ。じゃ、こっちも食べてみて、あーん」

「あーん……うん、これもすごくおいしい!」


……もうここに住んでもいいかも。

さっちゃんと一緒にここに住んで、ここで働いて………毎日が天国だね。


コンコン


「終わったかな。どうぞー」

「入るぞ」


あ、ブリギッテさんだ。

1週間ぶりだけどすごく懐かしい気がする。今日が濃すぎたせいだね、きっと。


「よう、久しぶりだな、アウレーリアにザナーシャ。元気そうで良かった」

「ブリギッテさん、こ、こんにちは」

「ブリギッテさん、こんにちは。今日は招待して下さってありがとうございます」


……さっちゃんありがとう! わたしがずっと考えてた挨拶を言ってくれて!

わたしは一瞬フリーズしちゃったよ。だって、後ろにシズカさんがいたから。


「二人とも変わらないな。ま、最後に会ったのが1週間前だ、そんなに変わるはずがないか。まずは、こちらの二人を紹介させてくれ」

「はい」

「シズカさんには先程会っただろうが、改めて紹介する。レクルシア副総長兼、領主指定剣術指南役のシズカさんだ」

「アウレーリアにザナーシャ、改めてよろしく」


……んん? 肩書に聞きなれない言葉が並んだよ。

副総長はなんとなく分かる。その後、領主指定? 剣術指南役? なにそれ、すごそう………。


「………アリアちゃん、挨拶………」


さっちゃんが小声で現実に戻してくれた。


「よ、よろしくお願いします!」

「シズカさん、改めて、よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


……怖い。なんでちょっと威圧オーラ出てるの?

わたし、なにか失礼なことした?


「そして、こちらがレクルシアのトップ、総長を務めるラフィーネさんだ」

「よろしくね、アウレーリアちゃんに、ザナーシャちゃん」

「よろしくお願いします」

「ザナーシャです。よろしくお願いします」


予想と違う普通の人だ。

こんなでっかい組織のトップだから、もっといかつい感じの人を想像してた。むしろ、普通の人よりずっとおっとりしてる気がする。年はブリギッテさんと同じくらいかな……。


「話はシズカとブリギッテから聞いてるわ。二人とも、聞いていた通りのいい子ね」

「どうも」


トントン

ん、さっちゃんが肘で小突いてきた。なに?


「アリアちゃん………敬語、忘れてるよ」


小声で教えてくれた。

……そうだ! おっとりした雰囲気に飲まれて「どうも」なんて言っちゃったよ!


「あ、えっと、すいません!」


とりあえず謝った。それしか浮かばなかったから。


「大丈夫よ、堅苦しいのは嫌いだから。それに、言葉に悪意があるかどうかは目を見ればわかるから。アウレーリアちゃんは素直ないい子。ザナーシャちゃんも素直でいい子。出会えて嬉しいわ」

「あ、ありがとうございます」


目が合った。

うわ、なんだろう、吸い込まれそうな目。深い海の色って感じ。

……すごいドキドキする。これがカリスマってやつなのかな?


「……私の用事も済んだし、別室で休ませてもらうわね。ブリギッテ、この子達のこと、よろしくね」

「はい」

「二人もゆっくりしていってね。行きましょうか、シズカ」

「はい」


シズカさんが人に従ってついて行くって……。なんだろう、すごく新鮮に見える。

永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~

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