テラーノベル
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車で家に帰ると、自分の部屋ではなくキッチンへ行って冷蔵庫を開けてみた。そこにはドレッシングと牛乳しか入ってなかった。すっからかんで、野菜さえ何も入っていない。これは買い物へ行かなければ死んでしまう。
レイスの財布を探していると、ベッドの下に転がっていた。真っ赤な血がついている財布を広げると、十円しか入ってなかった。圧倒的な金欠だ。これは働かなければいけない。
サイフの隣にあった通帳を見るが、残りは1,000しかない。こんなのでは生活できないので、コンピュータを立ち上げ求人検索をする。
履歴書は自分の履歴を書き殴り面接に挑んだが、全て落とされてしまう。どうやら暴行や強姦をする男は不要とのこと。こいつは何回も捕まっているらしい。
「くっそ……なんてクズ野郎なんだ。就職できないじゃないか」
絶望していたが、工事現場の面接はなぜか受かってしまった。どうやら履歴に目がいったらしく、希望を見据えて雇ってくれたようだ。目から涙が溢れ出す。
そんな希望を持っていたら、クローゼットの方から物音が聞こえてくる。一体何事だろうか。
クローゼットを開けると、その下には階段が続いていた。そこに恐る恐る進むと、檻の中に男の子が入っていた。力尽きており、ベッドの上でぐったりしている。
「ひ、人!?」
レイスはポケットにある鍵を開けて中に入ると、男の子は辛そうにゼエゼエと息をしている。どうやら栄養失調に陥っているらしい。しかし今は金が何もない。
檻の近くにある豚の貯金箱を割ると、少しだけ金が出てきた。そいつを握りしめて、買い出しへ行く。
二つパンを買ってきて、水道の水も飲ませてやる。すると彼はうまそうに食べていたが、吐いてしまう。よほど何も食べていなかったに違いない。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
男の子が目線を上げると、青くて丸い瞳と目線が合う。その時、ドキッと胸が高まった。
「何でもいい。食べてくれ」
「ありがとう」
彼は水を飲んで飯を食べる。その姿も絵を見ているようで、とても美しい。この子は何としてでも養わなければと思ってしまう。
「とても美味しかったよ。ありがとう」
「どういたしまして」
そう言って、レイスは手と足の枷を外す。彼は戸惑っているようだった。
「えっと……」
「これで自由だぞ」
彼はズボンを下げて尻を向け、こちらを見てくる。
「お、襲わないの?いつもは僕としてくれるのに」
「いやいや、そんなことしないさ」
どうやらこのレイスという男は、この男の子にも強姦していたようだ。首には絞められた痕と歯形が残り、手と足には枷の痕。もしかしたら殴られた痕もあるかもしれない。
とにかく外道な奴であることは分かる。義雄はそうならないように、優しく扱うことにする。
「マオは1人の男の子だ。そんなやつを無理やり襲うわけないだろ」
「ほんと!?」
キラキラした瞳でこちらを見てきた。しかも抱きついてきたのだから、胸のドキドキが収まらない。この気持ちをどうすればいいのだろうか。レイスが彼を好きになるのもわかる気がする。
義雄は張り切って言う。
「よし、俺が稼いでお前を養う。仕事につけたんだ。俺頑張るな」
「うん!お仕事がんばってね!」
2人は熱い約束を交わした。そして次の日から工事現場の仕事が始まった。
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