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あの日から、頭が静かにならない。
「俺なら藤澤くんを一番にする」
風磨さんの声が、ふとした瞬間に蘇る。
楽屋で笑っていても。
若井と元貴に挟まれていても。
夜、ひとりで目を閉じても。
“ 一番 ”
その言葉だけが、やけに残る。
僕は自分で思う。
(今、幸せなのに)
若井は強い。
元貴は優しい。
三人でいる時間は確かに温かい。
でも。
(……僕は、ちゃんと選ばれてる?)
そんな考えが浮かぶ自分が嫌だった。
その時、僕のスマホから通知が鳴った。
『少しだけ話せる?』
風磨さんからのメッセージ。
既読をつけて、閉じて、また開く。
指が震える。
(会わなきゃいい)
でも。
(はっきり断れば、きっと終わる)
そう自分に言い聞かせて、僕は外に出た。
夜の屋上。
人目がない。
風磨さんはすでにいた。
「……へぇ、来てくれたんだ?」
その笑顔が、嬉しそうで。
僕の胸がざわつく。
「……話すだけですからね」
先に釘を刺す。
風磨さんは頷く。
「わかってる」
少し距離を空けて並ぶ。
夜風が冷たい。
風磨さんが静かに言う。
「考えてくれた?」
僕は正直に答えない。
「……どうして僕なんですか、?」
風磨さんはすぐ返す。
「好きだから」
迷いがない。
僕の心が揺れる。
「元貴じゃなくて?」
風磨さんは笑う。
「大森くんは信頼してる。でも恋は別」
その言い方が誠実で。
ずるい。
「前も言ったけどさ。
藤澤くんは、我慢しすぎだと思うよ」
核心。
「若井くんにも大森くんにも遠慮してる」
僕は何も言えない。
風磨さんが続ける。
「本当は独占したいくせに」
胸が締めつけられる。
「俺なら遠慮いらないよ」
一歩近づく。
「俺だけ見てればいい」
甘くて 危険。
僕の頬には風磨さんの手が。
「藤澤くんは“バランス的には” いつも真ん中に
いるけど、真ん中って不安定なんだよ」
その言葉が刺さる。
確かに、三人のバランスは絶妙だ。
一歩でも崩れたらいけない。
(……でも、僕がいなくても回る?)
そんな恐怖を、風磨さんは言語化する。
「俺は選ぶよ。藤澤くんを」
静かな声。
強い目。
「俺を好きになりなよ」
僕の呼吸が浅くなる。
(楽かもしれない)
一人に選ばれて、一人を選ぶ。
迷わなくていい。
比べなくていい。
でも。
「……怖い」
思わず本音が漏れる。
風磨さんの声が柔らぐ。
「何が?」
「、失うのが」
風磨さんは即答する。
「俺は失わせない」
その自信が眩しい。
僕は目を閉じる。
揺れる。
確実に。
そのとき。
背後から低い声。
「…涼ちゃん。」
心臓が止まりそうになる。
振り向くと、 若井がいる。
目が、冷たい。
空気が一瞬で変わる。
風磨さんは動じずに話しかけた。
「ここに居るのは偶然?」
若井は短く言う。
「…違いますよ。」
視線は僕から外さない。
「帰るよ。」
僕は言葉を失う。
風磨さんが静かに笑う。
「……話の途中なんだけど。」
若井の目が細くなる。
「、何の話ですか?」
風磨さんは真正面から言う。
「藤澤くんを好きだって話」
沈黙。
重い。
耳鳴りがする。
若井は僕を見る。
怒ってない。
でも。
静かに燃えている。
「本気なんですか」
風磨さんは頷く。
「本気」
若井が一歩前に出る。
二人の間に立つ。
「……涼ちゃんは物じゃない」
低い声。
でも震えてる。
風磨さんも引かない。
「知ってる。だから選んでもらう」
僕の名前を呼ぶ。
「藤澤くん、俺は逃げないよ」
若井も言う。
「俺も逃げない。離れないよ」
僕の胸が締めつけられる。
二人の視線が、真っ直ぐ自分に向く。
(選ぶのは、僕)
逃げられない。
風磨さんが最後に言う。
「藤澤くんが幸せになる方を選びな」
優しい。
でも挑戦。
若井は何も言わない。
ただ、僕の手を掴む。
強く。
震えてる。
僕は気づく。
(若井も怖いんだ)
失うのが。
三人が崩れるのが。
僕の目に涙が滲む。
「……僕は」
声が震える。
「一番って言葉に揺れた」
正直に言う。
若井の指が少し強くなる。
風磨さんは黙って聞く。
「でも」
僕は若井を見る。
「僕は誰か一人の一番になることよりも、
三人でいる不安定さを選びます」
静か。
でもちゃんとした決意。
「怖いけど、逃げない」
風磨さんの目がわずかに揺れる。
それでも笑う。
「そっか」
寂しさを隠して。
「ちゃんと答えてくれてありがとう」
背を向ける前に言う。
「でも、諦めないかも」
最後までアイドルみたいな笑顔で 去っていく。
屋上に静寂。
若井が低く言う。
「……会いに行ったの?」
僕は頷く。
「ちゃんと断りたかったの」
嘘じゃない。
でも揺れたのも本当。
若井が額を押し付ける。
「揺れた?」
正直な問い。
僕は小さく頷く。
「……うん、、一番って言葉、ずるい」
若井が苦く笑う。
「……俺、下手だからさ、
これからも不安にさせるかもしれない」
「うん」
少し空気が緩む。
でも若井の声は真剣。
「それでも、離す気はない」
僕の心が熱くなる。
「知ってる」
若井が言う。
「次、菊池さんに会うなら俺もいく」
僕が少し笑う。
「怖い?」
若井は即答。
「めちゃくちゃ」
その素直さが、救いだった。
僕は思う。
洗脳みたいに甘い言葉より、
不器用でも本気の手の温度のほうが
ずっと重い。
「帰ろ」
僕が言う。
若井は手を離さない。
「離さない」
「うん、離さないで。」
夜風はまだ冷たい。
でも。
僕の中の揺れは、少しだけ静まっていた。
後半大森さん出てこなくてすみません🙇♀️
次のストーリーでは大森さんが狙われます…!
こういう話が好きすぎて同じようなのしか
書いてないんです😭
新しい登場人物も居ますのでお楽しみに!