5 神様。
やった、、、!!
神様がいるとしたら、その神様はほんとに優しいよね。
やっと、やっと、3年で渡辺先生のクラスになれた。
これまで、授業さえも持って貰えなかったのに、
担任!しかも、進路指導も渡辺先生!!
『先生のクラス』っていう正当な理由で進路を相談できるんだ!
「このクラスの担任をします、渡辺です」
教壇にたった先生が口の口角をキュッと上げる。
その顔が、どこか意地悪そうな顔してるのが好き。
「ま、知ってると思うけど」
先生がぐるっと回って黒板に「渡辺翔太」と書いた。
「わたなべの”なべ”は辺。これね。ワタナベショウタ」
「ま、受験もあるし必死に頑張ってこ。」
みんながえぇー!って嫌そうな声を出した。
「お前らさ、笑ほんっとに後悔すっからな。笑」
「俺は高校時代に後悔あったから、後悔したくないって頑張ったけどな」
そう言ったのが、ちょっと気になってた。
「んじゃ、出席とりまーす」
「んー、好きなもんでも言って?アイドルとかでも、食いもんでもなんでも。」
「じゃ前の子からー」
そう言ってこの子の肩にそっと触れて自己紹介が始まった。
出席番号1番の子から始まって、先生が席の隣を歩きながら、
「好きなもんはなんですか?」って訊く。
女の子のアイドルって言う子とか
飼ってるワンちゃんって言う子、
どんどん自分の番号に近づいてくる。
「姫野○○」
『はい』
そう言って片手を上げる。
「好きなもんは?」
好きなもん…なんて、先生以外に思いつかない。
けど、渡辺先生、なんて答えれない。
じゃあ、、美容?先生好きだし、、
でも、嘘はつけないし。
国語……じゃ、だめだ。
困って先生の顔を見ると「ん?」って顔で見つめてくる。
『日本語、が好きです』
途端に出た言葉がこれだった。
精一杯、アピールしたつもり。
「へぇ、珍しい答えだな。」
「俺も好き。」
そう言って私の頭にそっと手を当てて、次の子に行った。
やっと、先生のクラスの子になれたんだって、実感した。
今までの苦しみが全部押し寄せてきた。
これまでは、会えない日もあったのに、
次の日学校に行ったら朝から夕まで先生と会える
・
ねぇ、先生。
『先生のクラスになれた』って喜んでた頃の私は、まだ甘かったんだね。
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や っ と な れ た ね !