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特殊能力系主様

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特殊能力系主様

1 - 第1話

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2024年03月15日

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「__私に依頼?」

「はい。こちらです」


今日の担当執事であるルカスが、グロバナー家から私に依頼がきたのだと知らせに来た。依頼の内容としては、とある会合に悪魔執事の主として参加する事、そしてフィンレイ様を護衛しろとの事だ。後者が今回の依頼の本命だろう。

その会合は長い間続いており、10年に1度という頻度で行われているとの事。その為か執事達も護衛として何度も参加した事があるらしい。この会合は貴族の中でも特に位の高い者しか参加出来ず、グロバナー家の現当主であり悪魔執事の雇い主であるフィンレイ様や、南の大地を治めているポートレア家の当主のシャーキル様、他にも最近お世話になったエルヴィラ様や名のある貴族達と豪華すぎる面子だ。


「え私絶対浮くじゃん」

「今回主様は初参加、そして他の貴族達とは違う特殊な立場です。何かと視線を集めるかもしれませんが……私達が必ず守るから安心して下さいね」

「あ、そこは心配してないから大丈夫」

「ふふ…それを聞いたらやる気が出て来ました。主様の信頼に必ず応えなくてはね」

「……ああ、それとですね、今回護衛の都合によりフィンレイ様と主様は同じ馬車で移動する事になりました」

「へ____」










__ガタゴトと馬車に揺られながら私は胃がキリキリと軋むのを感じていた。そう、遡ること数時間前の事だ。依頼の内容と目的地のルート確認等を終わらせ、緊張で心臓の鼓動が早くなるのをなんとか抑え込みながら馬車に乗ろうと足を上げたところ、フィンレイ様がこちらにスっと手を差し出した。エスコートしてくれるらしい。やめれ。


「有難う御座います、フィンレイ様。えっと…私などと同じ馬車で申し訳なく………」

「久しいな、悪魔執事の主よ。そんなに畏まらなくていい。今は公の場ではないのだから」

「お心遣い感謝致します。お久しぶりです、フィンレイ様。今回は宜しくお願い致します」

「ああ、宜しく頼むよ」

「…………」

「…………」


はい、これで会話終わりました。それから今の今まで会話がなく、ずっと無言。気まずさで現実逃避しだして今に至ります。助けてください。


「ふむ…考え事をしている様だが少しいいかな」

「うぇっはい!如何なさいましたか?」

「実は私の友人が居なくなってしまってね。私には気楽に話せる友人はあの子しか居なかったんだ」

「はぁ……」

「それで、君は悪魔執事の主である前に、この世界の者ではない異世界から来た渡り人だ。公の場では立場を気にしなければならないが…私用の時には気楽に接してくれていい。」


こ、これは、自惚れでなければ遠回しに私と友達になりたいって言ってる…?いやいやまさかそんな訳……ある、のか…!?


「フィンレイ様がそう言うなら…私、堅苦しいのってなれないから縮こまっちゃって……あ、タメ口は流石に距離詰めすぎですかね…」

「ふ、それでいい」


フィンレイ様の緩められた表情は初めて見る。こんな風に笑うんだな、と思った。先程までの気まづかった雰囲気はどこへ行ったのやら、馬車の中は穏やかな雰囲気に包まれていった













この世界に来てからドレスを着ることは多くなったが、やっぱりどこか落ち着かない。しかも今回は規模が違うのでいつも以上にマナーに気を遣わなければならない。コツ、コツと歩く度にヒール特有の音が空気を伝い響く。

フルーレが頭のてっぺんから足の爪先までコーデしてくれたドレスの裾を持ち上げ、会釈する。


「悪魔執事の主、久しぶりですね」

「あっ、エルヴィラ様、お久しぶりです。……なにか暗い顔をされていますが、どうかしましたか?」

「…実は、今日の事を水晶で占ったのですが、水晶が導き出したのが、大きな被害が出ると……」

「え、それって__」


どういう事ですか、という言葉を言い終える前に建物全体がグラッと大きな揺れを起こした。突然の事で踏ん張りきれなかったエルヴィラ様が倒れそうになったので、慌てて抱きとめる。そのまま1分間と長い揺れが続き、だんだんと揺れが落ち着いてきた。


「…今の揺れは………」

「言ったそばからとか…エルヴィラ様、大丈夫ですか?」

「ええ…。大丈夫です。ありがとう」


揺れが治まったのを確認してから立ち上がる。エルヴィラ様に立ちやすいように手を差し伸べた___途端。

ウー、ウー、とけたたましいサイレン音が会場中に響き渡った。それと同時に、天井の1部が破壊され、数十体の天使がやって来た。誰も下敷きにならなかったのは幸いだが、それにより辺りから各所から悲鳴が上がり、パニックに陥った者達が我先にと走り出し逃げ惑う。


「主様!俺らの力の解放を!」

「わかった!……来たれ、闇の盟友よ。我は汝を召喚す。ここに悪魔との契約により、皆の力を解放せよ」

「皆、各階で連携をとれ!事前に立てた作戦通り行くぞ!」

「了解」

「主様は私の後ろへ!」


私とフィンレイ様、シャーキル様、エルヴィラ様を囲う様にベリアン、ルカス、ミヤジ、フルーレ、ナックの5人が守りに徹する。他の執事達は天使の相手と避難誘導をする様だ。


「っ危ない!天井が崩れるぞ!!」


ハウレスの声に釣られる様にして上を見ると、破壊された天井の一部からピシリと音を立てて亀裂が入り、数秒後には崩れ落ちた。すると、瓦礫が出入口である扉が塞ぎ、逃げ場を絶たれてしまった。

いよいよまずくなってきた。あの力を使おうにもこの距離じゃ発動出来ないし、かと言ってここを勝手に離れる訳にも行かない、思考を巡らせている私の服をくい、とエルヴィラ様が引っ張った。


「…悪魔執事の主。あそこを見て下さい」

「?あそこって……」


エルヴィラ様の視線の先を辿ると、そこには連携を取っている天使がいた。まさか、どこかに知能天使がいるのか?__いや、違う。遮蔽物で見えずらかったが、あれは前に知能天使のケルビンが言っていた、試作段階の天使だ。となれば、非常にまずい。あれはロノ、バスティン、ラトの3人掛りでも倒せなかった相手だ。それが今回2体もいる。


「あの天使は、あの時の……!!」

「どうする、ベリアン。出口は塞がれているぞ」

「無理矢理脱出経路を確保しますか?これくらいの壁ならミヤジ先生が壊せそうな気も……」

「それは賛成出来ないな。ここは少し特殊な造りをしていると聞く。下手をすればこの建物が崩壊する」

「天使の数自体は少ない。ここは余計な事をしないのが得策だろう」

「こちらに気付いた様です、来ますよ!」


全員が臨戦態勢に入り、己の持つ武器を握り締める。そんな執事達は眼中に無いとでも言うようにその目は私の姿を捉え続けている。私の命を狩るべく自ら近くにやってくる天使に不敵に笑う。


「頭が高いぞ____跪け。」


発動距離範囲に入った天使に力をかける。瞬間、私より上に居た天使がズシンと地面にめり込んだ。天抵抗しようと身動きを取ろうとするが、私はそれを許さない。動けない様にさらなる重みを掛ける。すると、自らに掛けられた重みに耐えきれなくなった天使は自壊していった





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