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かき
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眩しい。
最初にそう思った。
重い瞼をゆっくりと開ける。
……何も見えなかった。
「……は?」
思わず声が漏れる。
暗い。
いや、暗いというより。
何もない。
上下も奥行きも分からない、真っ黒な空間。
地面だけは確かに存在している感覚があるのに、それ以外が何もない。
空気の感覚すら曖昧だった。
「どこだよ、ここ……」
声がやけに響く。
夢?
いや、違う。
さっきまで確かに――
脳裏に、白い光と爆音が蘇る。
肺が潰れるみたいな痛み。
アスファルト。
悲鳴。
血の匂い。
「……っ」
息が浅くなる。
俺は、確かにさっき死んだんだ。
『いや、生きてはいるんじゃない?』
「っ!?」
突然、すぐ後ろから声がした。
⋯俺と、同じ声が。
反射的に振り向く。
誰もいない。
「……は?」
『いやいるけど』
「うわぁっ!?」
今度は真横。
飛び退く。
すると。
いつの間にそこにいたのか。
少し離れた場所に、“俺”が立っていた。
「…………は?」
思考が止まる。
青い羽織。
少し跳ねた藍色の髪。
見慣れた顔。
見慣れた、青い瞳。
⋯鏡、
いや、違う。
鏡じゃない。
そいつは確かに生気を持って、俺と同じタイミングで驚いていた。
「…………」
『…………』
数秒の沈黙が落ちる。
『……え、怖』
「それこっちの台詞なんだけど」
ほぼ反射で言い返していた。
意味分かんねぇんだから怖いに決まってんだろ。
なんで俺が二人いるんだよ。
『いや待って、俺もわかんない』
「怖ぇよ」
『ブーメラン刺さってるって』
「お前がな」
同じ声。
同じ喋り方。
同じタイミングで眉をしかめる。
すべてにおいて最悪だ。
「……誰だよ、お前」
『いや俺は俺なんだけど』
「は?」
『それは俺の台詞』
頭が痛い。
意味が分からない。
夢にしては感覚がリアルすぎる。
『……え、ちょっと待って』
「何」
『お前、どこまで覚えてる?』
「は?」
『いやだから、最後の記憶』
最後の記憶。
白い光。
爆音。
事故。
「……たぶん、車に轢かれた」
『うわマジか』
「マジかじゃねぇよ」
『いや、そこじゃなくて』
そいつは、俺と同じ顔のまま、少しだけ表情を曇らせた。
『俺は、轢かれてない』
「……は?」
空気が変わる。
さっきまでの軽口が、一瞬で冷えた。
『昨日普通に寝た』
「……」
『で、起きたら』
そいつは静かに周囲を見回す。
真っ黒な世界。
何もない空間。
そして、俺。
『なんか、お前がいた』
「えぇ………」
意味が分からない。
でも、
一つだけ、分かることがあった。
こいつは、多分。
嘘を吐いていない。
その瞬間だった。
視界が、ぐらりと揺れる。
「……っは、」
『え、』
足元が崩れる。
暗闇が歪む。
世界が割れるみたいに、亀裂が走った。
耳鳴り。
浮遊感。
身体が沈む。
『ちょ、待っ』
「うわっ、!?」
伸ばした手が触れる。
同じ体温。
同じ感覚。
そのまま、
世界が、一気に反転した。