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もう一度俺のサーブ。次はちゃんと上げてみせる音駒。黒尾さんのスパイクは治さんがレシーブ、そしてレフトから尾白さんの攻撃。音駒はギリギリの状態でも拾って繋いでくるがネットに当たりコートに落ちる[16-19]。
ここで稲荷崎のブレイク。
音駒の守備完成が近い。というかもう、そこまで来てる感じさえする。こっちも攻撃をやめず、点を取りに行く。大耳さんのスパイクを黒尾さんがワンチ。音駒からの攻撃は侑さんが上げ、俺のフォローから、もう一度尾白さんに繋ぐ。
音駒やっぱ構えるスピードが比じゃない。打つとこ無くなっちゃった。でも、ウチのエースをな舐めんなよ?
高い壁を壊し、ボールはコート外に出る。
黒尾「ひぃ〜、重いね〜」
孤爪「腕もげる」
摩浪『(確かに強烈だけど、それは無い)』
こっちがブレイクしても音駒はどんどん差を縮めてくる。[18-20]になり黒尾さんサーブ。
摩浪『赤木さん』
赤木「スマンっ!侑フォロー!(レベル高っ)」
ネット越えそう。それに今前衛には灰羽がいる。叩かれたらやばい。
黒尾「(ゴリ押せっ!)」
灰羽「あ゛っ!?」
押し込んだ。レシーブ乱れたけど、研磨が動いた。しかもアンダーじゃない。大耳さんと侑さんがブロック跳んだけど灰羽はそれよりも高い位置から攻撃[19-20]
侑「アンタって動くんやな」
孤爪「…まぁ 一応 生きてるからね…」
侑さんの言いたいことは分かる。彼はチームのAパスに甘やかされてる訳では無い。セッターが動かないのは音駒の品質。その考えを覆すセットアップ。彼だって動いてトスをするセッターであるという事が伝わる。
もう一度黒尾さんサーブ。次は赤木さんの正面。
黒尾「(クッソ。リベロの正面)」
流石赤木さん。綺麗に上げ侑さんに繋げる。そしてバックから俺の速攻。
摩浪『(何とかなりそうかな)』
試合は進む。研磨のサーブは俺狙い。
摩浪『オーライ』
レシーブでも俺は負けない。しっかり繋がり双子速攻が決まる。この調子で点が取っていく。
侑さんにサーブ権が回る。今回で何回目だろうか、また上げれて攻撃。俺が見てる限りだけど今回はかなり侑さんが狙われてる気がする、って思ってたけど、俺“も”狙われてた。
そして双子速攻にはブロック3枚きて、遂に黒尾さんがドシャット[23-23]
摩浪『(俺封じ……。灰羽って頭使うタイプだったんだ。速攻使えなくなっちゃった)』
こっから両校のサーブ勝負が始まる。灰羽と治さんは良い感じだったけど惜しくも失敗。山本さんサーブをレシーブし俺の速攻。でっも、夜久さんは上げる。
黒尾「お早いこって」
摩浪『そりゃどうもッ。ワンチ』
黒尾さんの前に何とか跳び付く。かなり乱されてガタガタになりかけるけど負けない。
尾白さんのスパイクはブロックアウト、、かと思われた。
摩浪『爪、届いた』
でも今はそんなことを考えてる暇無い。すぐに動け、触れ。
摩浪「ワンチ」
角名「危なっ」
角名さんが上げる。侑さんがカバーに入り、もっかい尾白さんに繋げた。後ろを守りすぎると前が空いてしまうんですよ?ネコさん?
前に落とす。でも、それも逃さないネコさん達。
稲荷崎「(しつこい💢)」
摩浪&孤爪「(イラつき過ぎ)」
こっちの攻撃が中々決まらない。拾われ続ければ続けるほど、体力が消耗されていく。
侑「サム!カバー!」
治「アランくん!」
尾白さん3度目の攻撃。ここで決めないとという焦りは多少あるだろうけど彼なら大丈夫。エースだからっていう訳じゃない、“尾白さん”だから大丈夫だって思える。
吸い込みで点をもぎ取る。
摩浪『ナイスキー』
尾白さんの元へ歩きハイタッチ。やっと決まったから彼の表情はスッキリしてるように見える。
尾白「やっと決まったわ」
摩浪『でも流石尾白さん』
尾白「なんか照れるな。ありがとう」
摩浪『いえいえ。こちらこそです』
セット終盤。黒尾さんのスパイクは相変わらず強烈でレシーブ乱された。こっちがどれだけ強い攻撃をしても絶対繋いでくる音駒。
再び尾白さんのスパイク。重い一発を夜久さんは上げている。
摩浪『(うっわ、すげぇ音)』
研磨のワンハンドトス。そこに大耳さんと角名さんのブロック。
摩浪『!』
研磨の動きに気付いた時には遅かった。オーバーネットで音駒の得点になる。
角名「昨日の侑のやつ……誘いやがった」
大耳「こっちのセッターも中々の曲者やな」
侑「(プリンセッター、、腹立つ)」
音駒、あと1点で1セット先取。こっちの攻撃を粘りで繋ぐ。次の攻撃はライトから角名さん。
あっちは繋ぐだけで精一杯。
稲荷崎「チャンスボール!!」
のはずだった。次の瞬間、研磨の返球により稲荷崎はお見合いとなってしまう。俺も反応こそしたけど届かなかった。
治&角名「今のは俺だった……」
今のは完全にやれた。俺が思ってる以上に早くなってる、音駒の酸素の巡りが。
コーチチェンジの時、研磨とすれ違う。
孤爪「摩浪って本当にレシーブ上手だね」
摩浪『音駒にレシーブ褒められるのは嬉しいな』
孤爪「反応も異常フフッ」
摩浪『翔陽にも負けないから』
手を振り稲荷崎の元へ戻る。
治「キッツ」
角名「ほんとソレ。「決まった」と思っても「まだでした」ってなるのかよ音駒相手だと」
今までにないくらいの長いラリーに加え、決まると思った場面で決まらない。烏野はこれを何度も身を持って体感してる。改めて凄いと思う。
赤木「にしても、さっきのお見合いはしんどいな」
北「せやな。侑の走る道、そんで摩浪の逆を突いてきよったから」
摩浪『反応遅れました。すみません』
治&角名「お見合いよりマシ」
北「あとは摩浪を狙っとるな」
稲荷崎全員が気づいている。俺に膝をつかせ攻撃参加を邪魔する目的でサーブしている。
大耳「上手くいけば速攻の邪魔が出来るしな」
摩浪『狙われる……ね』
銀島「大丈夫か?」
摩浪『もちろん大丈夫です』
俺はスクイズを元の場所に戻しコートを見る。
摩浪『知ってますか?いつだって“追う者は追われる者より勝る”んです』
稲荷崎「?」
摩浪『俺たちは“追われる側”です。それは今も変わらいと思ってました。でもさっきのプレーで“追う側”に変わった』
振り返り稲荷崎メンバーを真っ直ぐ見ると同時に笛が鳴る。
侑「どういう意味なん?」
摩浪『そのうち分かると思います。でも、これだけは言えます』
『俺たちは強いという事です』
誰よりも先にコートに入り集中の糸を脳内で紡ぐ。簡単に途切れさせないようにしなきゃね。
赤木「摩浪はホンマに高校生か?」
北「今更何言い出すねん」
赤木「強いってこともやけど、さっきみたいに発言出来るから。ここに居る誰よりも進んどるように見えてな」
「(それと同時に、1人で進んでしまってるようにすら見えるんや)」
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音駒side
孤爪「強いサーブでガンガン点が獲れるならそれが良いに決まってるけど、うちはまだそうじゃない。サーブで獲れる人は獲ってね」
山本「ウイ」
黒尾「まーた「おしんこ付けたい人は付けてね」みたいに言う」
孤爪「クロも言ってたよね。どんなプレーも完全攻略法なんて無い」
音駒も長いラリーが続いて体力は削られているだろうが、それを感じさせない。
灰羽「あの紅月摩浪ってヤツ、どうします?」
孤爪「変わらず狙っていって」
夜久「研磨の案を否定するわけじゃねぇけど大丈夫なのか?摩浪は狙っても崩れないし攻撃にも参加してくるぞ」
摩浪を狙う。上手くいけば邪魔できるが下手すれば稲荷崎のチャンスボールになる。
孤爪「うん。摩浪に膝をつかせることは簡単じゃないし多分出来ない可能性の方が高いよ」
黒尾「それ言わない方が良いヤツね」
孤爪「摩浪が10点決めるところから2・3点でも削ればいいんだ」
下を向いたままだか言ってることは正しい。小さいを幾つも重ねていけば、いつの間にか大きくなり勝機となる。
孤爪「でも多分、先に潰れるのはミヤアツムの方かもね」
黒尾「海のせいだなニヤ」
海「俺がよく拾ってるからね」
孤爪「その調子でお願い」
海「任せて」
孤爪「ミヤアツムは高校ナンバーワンセッター、その実力は自他共に認めるほど。どんなボールも上げるから凄いよね」
黒尾「烏野の試合見てる時も言ってたなソレ」
孤爪「自分の技術の高さもちゃんと分かってて絶大な自信を持ってる。でもその自信が崩される瞬間を目の当たりにしたら焦るしイラつくはず」
高い技術で全スパイカーを絶妙に使い分ける高校NO.1セッター宮侑。
観察を得意とし相手を翻弄し欺く音駒の脳、孤爪研磨。
同じセッターでもタイプの違う2人。どちらもレベルの高いセットアップを魅せる。そして相手ブロックを振り回す。
孤爪「おれがミヤアツムに勝てるわけない。練習量もだけど、セッターであることに誇りを持ってるからね」
手白「……」
孤爪の話を静かに聞くのは音駒1年、控えセッター手白球彦。
孤爪「今この場で、おれがミヤアツムぐらいのレベルになれって言われても絶対ムリ。だからってアイツのレベルを下げることもムリ」
「でもね、少しづつで良いんだ。アイツが焦れば集中がぷっつり切れる。自滅の道を歩ませるんだ」
黒尾「お前……本当に、ごく偶にだけど、恐ろしいこと言うよな」
孤爪「ゲームと一緒って考えれば楽しさますでしょ」
猫又「(と言ってるが、実際は高揚しているはずだ。なんせ烏野10番と同じ奴ないるからな笑)」
今年の春は波乱だらけだ。