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タイムアウト終了
サーブは音駒の福永さんから。前に落としてくるショートサーブ。やっぱ俺狙いで打ってきた。
摩浪『うい(治さんがレフトに回り込んで、後ろには赤木さんがいる。なら今攻撃出来る位置は)』
俺はレシーブと同時にライトへ走る。そんでそのままブロード炸裂。
摩浪『ういうい』
侑「レシーブ直後にブロードって勇気あるな」
摩浪『周りを見て判断した結果ですよ。攻撃意識をキープさせて、その上で出来る出来ないを判断するんです』
侑「やっぱ摩浪が味方で良かったわ」
摩浪『あはは。ありがとうございます』
侑「おん(コイツに引っ張られたけど、あっちに摩浪封じは簡単やないってことは伝わったはずや)」
元の位置に戻り正面を見ると。真正面にいる研磨と目が合う。そしてちょっとだけ会話をする。
孤爪「摩浪」
摩浪『ん?』
孤爪「もっと面白いを見せてね」
摩浪『ふーん…いいよ。でも勝手に期待して、後から期待外れとかは無しだからね』
孤爪「ふふ。それはどうかな?」
研磨は笑ってた。これは高揚してるとかワクワクしてるとかではないと思う。「おれを楽しませてね」と言わんばかりの表情をしてた。
稲荷崎「(音駒のセッター怖いな)」
音駒「(それにビビらない摩浪も怖い)」
俺の獲物リストに研磨が追加された。研磨は音駒の脳であると同時に魔王の様な存在。簡単に倒れてはくれないラスボスみたい。
ローテーションが回り侑さんのサーブ。もう何回も拾われてるけど彼はまだ大丈夫。強烈なのは変わらないし、ずっとジャンプサーブだけで勝負してる。多分、音駒のレシーブが侑さんの闘争心に火をつけたんだな。
それでも海さんが上げ攻撃まで繋がる。侑さんのサーブを1本で切ってきた。
そして音駒・研磨サーブは笛と同時に打ち出す。
赤木「ライッ!」
摩浪『……』
レフトから角名さん。ここで[1-2]
ローテが回り灰羽サーブ。 少し前方の方で構える。んで灰羽は前に出てるから後ろを狙うって考えるはず。俺はそこまで考えた上で構えとく。
赤木さんが軽くジャンプしオーバーで侑さんへ繋がり、俺はさっきより勢いを付けてから高く跳ぶ。
またローテな回る。勢いにのってきた影響もあり、尾白さんがノータッチサービスエース。2度目はアウトだが彼はすぐに切り替える。
音駒のサーブは黒尾さん。きた強烈なヤツ。
摩浪『尾白さん』
掛け声よりも少し先に尾白さんが素早くレシーブ。少し乱れたものの侑さんのトスは変わらずキレイなまま。それでも音駒は繋ぐことをやめない。
そっから研磨の嫌な(良い)位置に返球。赤木さんの安定レシーブから双子速攻決まる[5-7]
黒尾「さっきのお見合いでもうちょい迷ってくれるかと思ったのにな」
孤爪「簡単にはいかないよ。それにもし、また2度目があるようなら摩浪がそれを逃がさないから」
再び福永さんサーブ。また俺を狙ってるし、赤木さんに取らせてきた。これじゃ攻撃には入れない。なら守備に専念する。
双子速攻を灰羽がワンチ。また繋がり音駒から速攻。
「ナイスレシーブ!!」
赤木「(これをナイスとは言えへん)」
次は攻撃参加可能。高く跳び力強く、ブロックを躱すように打ち込む。それをまだ拾う音駒。チャンスボールで稲荷崎へかえってくる。次の攻撃、尾白さんのバックアタックをまた上げる。
ぜっんぜん決めさせてくれないなぁネコさんは。
摩浪『チャンスボール』
俺のレシーブからもう一度双子速攻。やっと決まった、これ何回目かな、もう数えるのやめよ。
角名「はぁ……。これまだ2セット目だよね?」
治「それ…、考えただけでも、、キッツ、」
何回も言うけどラリーが長い長い。足は重くなるし呼吸が荒くなる。こんな試合は初めてかもしれない。
摩浪『侑さん』
侑「ん?どした?」
摩浪『1本』
侑「!」
俺の一言でちょっと変わったかな?
侑「ふっふ。1本と言わず10本獲ったるわ!」
摩浪『それでこそウチの侑さんです』
タイムアウト終了。
侑さんの雰囲気が変わり、強烈サーブを音駒コートに打ち込む。サイドラインの上にIN。
音駒1回目のタイムアウト後、侑さん2度目のサーブ。強烈だけど音駒はやっぱり返してくる。
夜久「研磨ラスト!」
研磨のイヤな返球きた。
治&角名「クソッ💢」
摩浪『あいっ』ボッ
こっちも繋げた。双子速攻を灰羽がワンチ。
摩浪『(落ちない限り俺は跳ぶ)』
跳んで手を伸ばす。灰羽がどれだけ高くても関係ない。今の俺がやることは守備のみ。
ボールが手に当たりドシャット成功。
灰羽「摩浪スゲーな!」
摩浪『灰羽もだよ』
灰羽「オレは双子さんの速攻ワンチしたけど!摩浪は猛虎さんをビビらしたぜ!!」
摩浪『ぶふっ笑。お前って敵も見味方も殴るタイプなのかよ』
灰羽は速く高い。さっきのはアウトだったけどブロック揃えるところは凄い。
試合が進み、ローテが回り俺のサーブターン。あっちは守りの音駒。簡単に点を取れる相手じゃない。それでも勝負では負けない。サーブの強さはチームの強さに直結する。
摩浪『うっし』
いつもより少ないけど音駒相手にサービスエースが取れるのはやっぱ気持ちいい。
今のとこは稲荷崎がリード。でも大差をつけることが出来ない。やっぱ灰羽のスパイクは鋭くどくしなやか。レシーブ後、侑さんのツーアタック。しかし灰羽が阻む。
侑「はっ?」
摩浪『(鋭いのはスパイクだけじゃないよね)』
侑さんはサーブこそ調子を上げてきた。でもあっちの壁が思った以上に圧をかけてきてる。
次の福永さんサーブも俺狙いの赤木さん利用。治さんのストレートは上げられる。音駒の攻撃に双子先輩とブロック3枚。
摩浪『ナイスカバー!』
着地後すぐに助走へ。
侑「ブロック……3枚」
稲荷崎「(捕まる)」
完全に俺が打つと確信していたブロック。
音駒の壁が見えた。
摩浪『(ブロックの先)』
ブロックアウトで点をもぎ取る[13-15]
侑「ほっ」
摩浪『研磨の野郎…ニヤ』
ちょっとマズイ感じになってきてる。稲荷崎タイムアウトを取る。ベンチに戻りすぐにミーティング。
赤木「摩浪狙いながら、俺まで利用してきたな」
摩浪『はい』
赤木「最初のブロード後からや。俺がおる時だけあの位置で取らせて、摩浪がライトに走る助走路を塞いできよった」
摩浪『あと侑さん潰し……』
侑さんはさっきから様子がおかしい。いつもなら真っ先に会話に入ってくる彼が下を向いたまま何も言葉を発さない。
侑「俺のトスは完璧や……ボソ」
稲荷崎「……。」
やっぱ話聞いてなかった。集中が切れたわけじゃなくて焦り。トス上げて打っても何度も拾われては繋がれての繰り返し。今までに無いプレーにかなり動揺してるんだな。それに加えて自分が上げたトスが決まらないことによる苛立ち。
摩浪『(今は何も言いませんよ。アンタを信用していますから)』
『俺を狙ってるなら上等です』
北「だからって無茶なことしたら相手のチャンスになるで。判断間違えんようにな」
摩浪『はい』
タイムアウト終了。福永さん(2度目の)サーブ。俺と治さんの間を狙ったサーブ。
摩浪『あいっ』
レシーブ後もう一度ブロードのために走る。でも俺はただの囮。尾白さんのバックアタック。
治「うぇーい」
摩浪『うーい』
ハイタッチ。ローテ回って侑さんサーブ。そんで前衛の山本さん含めた4人で対応。誰にいってもやばいのは目に見えてる。
侑さんのサーブをまたも1本で切ってきた音駒。
そして変わらず俺狙いのサーブ。ちょっとレフト寄りだから角名さんに任せる。
角名「オーライ」
摩浪『ナイス』
攻撃は決まらなかったが音駒のブロックアウト。
次の灰羽サーブは俺の後ろを狙い、治さんのレシーブで遮ってきた。尾白さんのスパイクはワンチされ研磨のセットアップ前まで繋がった。
摩浪『(研磨の思惑通りの展開だ)』
灰羽「居るぞ!!」
声が聞こえた直後ブロックするがすこし間に合わず音駒の得点。
俺が少しだけ音駒コートを見ると研磨の顔が見えた。悲しいのか飽きたのか、どちらか分からない表情してた。今の時点では研磨の思惑通りで、期待はずれな試合にしてしまった。
正直俺もちょっとつまんない。
摩浪『……。』
赤木「摩浪?」
摩浪『つまんない…ボソ』
俺の独り言は多分先輩たちに聞こえてたと思う。この試合が始まってから俺はあまり笑ってないし昨日みたいに大声も出てない。
大耳「摩浪、大丈夫か?」
摩浪『はい。いつもどおりです』
侑「でも今つまんないって言うたやん」
摩浪『気のせいですよ』
赤木「………」
こっからまた長いラリーの始まり。ラリーの途中、尾白さんの強烈なスパイクを上げた夜久さん。彼の眼光は鋭く殺気を感じた。これにはコートにいた稲荷崎メンバーは身震いしてた。流石、守備のエース。
夜久さんがレシーブのエースなら、こっちの大耳さんと角名さんはブロックのエースだ。普段はあまり見られない2人のブロックは音駒の攻撃をシャットアウト。
角名「(よっしゃあ。大耳さんとブロック)」
角名さん、表には出ていないけどかなり嬉しそうにしてる。やっぱ彼をサイドにして良かった。
次の海さんサーブは尾白さんに取らせる。今の前衛の攻撃は角名さんだけ。彼が跳んだ後ろから俺も飛びバックアタック。
黒尾「下がれ!」
なるほどノーブロックね。止めるより拾う。これはとっても音駒らしい守備だ。海さんの安定レシーブから黒尾さんの速攻決まり追いつかれた。
俺は音駒という存在にどこかワクワクしてたけど実際戦ってみるとちょっと違う。ラリーが長引き、疲れは昨日の倍。俺潰しがあいつの思惑通りになっている。俺がつまらないって言ったのは、それが理由なんだ。
だからって俺はこのままで終わらせる気は無い。