テラーノベル
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とりあえず心臓がバクバクしすぎだし、顔から火が出そう。
車はすぐに地下駐車場へ。
そして冬木を先頭にエレベータに乗り込み、最上階のレストランへ連行される。
その間もなぜか彰様の手は私の腰だ。
くすぐったくて恥ずかしい。
「ご来店ありがとうございます、西園寺様」
深々とお辞儀をしている黒服の男性の奥の景色は見たことがある。
テレビで、そうつい先日見たばかりの隠れた名店、一日限定三組の店だ。
こんな店には一生縁がないなと、お肉が美味しそうだな、景色を見ながらワインなんてセレブだなって妄想を繰り広げた店!
「いってらっしゃいませ」
え? 冬木さんは一緒に行かないの?
なんで? どういうこと?
このドレスはこの店に入るため?
普段着では入れないセレブな店だから!
……住む世界が違いすぎる……!
テレビで見た通りの美しい夜景とテーブルに飾られた花。
そして目の前にはイケメン御曹司。
……夢かな?
「食べられないものは?」
「特にないですが、辛い物は少し苦手です」
あ、普通の辛さは食べられますと沙紀は手を軽く左右にフリフリした。
「ワインは?」
「お酒は弱いので、あまり……」
「そうか」
彰が目を合わせるだけで、黒服さんはお辞儀をして去って行く。
メニューとか何もないんですか?
ご注文は? とか聞かないんですか?
グラスが準備され、注がれるのはシャンパン?
「カルテット・アンダーソン・ヴァレー ブリュットでございます」
……言われてもわかりません!
「スパークリングワインだが、酔いやすいから無理しなくていい」
「は、はい。いただきます」
シャンパンとスパークリングワインって違うの?
一口飲んだ沙紀はほんのり酸っぱい味に驚いた。
でもおいしい。
でも高そう。
いや、高そうじゃなくて高いに決まっている。
料理はオードブル、スープから始まるコース料理。
マナーなんてわからないんですけど!
「気にせず食べればいい」
「はい」
正直、美味しすぎて美味しさがわかりません~!
よくテレビで「宝石みたい」「絵画みたい」と言う芸能人がいるけれど、大袈裟だなって思っていました、ごめんなさい!
本当です。芸術です。
「タラのポワレでございます」
ポワレって何?
タラとスナップえんどう、じゃがいも、えのきにレモンが添えてあって綺麗ですけど、ポワレって?
美味しいけれど!
桃のシャーベットに練乳って合うんだ。
さっぱりしているのに甘くておいしい。
初めて見るキラキラのコース料理に夢中で、沙紀は目の前のイケメンが笑いながら見ていることに気づいていなかった。
「桃は気に入ったか?」
「お、おいしい……です」
恥ずかしすぎる!
「あの、彰様。今日はどうして、ドレスも、食事も……」
夜景をバックにワインを飲む姿が似合いすぎて、目のやり場がない。
「……歓迎会、だな。統括室に来た」
彰の予想外の言葉に沙紀は思わず笑ってしまった。
「それなら冬木さんも呼ばないと」
「あぁ、あともう一人、普段姿を見せない奴がいる」
#独占欲
#ワンナイトラブ
統括室には席がもうひとつあったけれど、あそこにも人がいたんだ。
「あとは沙紀に話があった」
彰はワイングラスを置くと、テーブルの上で両手を組んだ。
「俺の恋人になってほしい」
真剣な顔でおかしいことを言い出した彰に沙紀は首を傾げた。
聞き間違い?
飲みすぎたかな?
「俺と一緒にいればアイツは沙紀に近づけない。俺は沙紀がいれば政略結婚を断ることができる」
どうだと聞かれた沙紀は目を見開いた。
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