コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「俺はな、ガムを盗って来いって言ったんだ。命令を無視してレジなんか通してんじゃねぇよ馬鹿」
今度は逆方向から平手が飛んでくる。
「……」
根岸は答えることが出来なかった。中世の魔女裁判と同じで、どんな選択をしても、どんな受け答えをしても、待っているのは揚げ足取りと理不尽な暴力なのだ。
さっきのコンビニにしてもそうだ。根岸が万引きに失敗して店員に捕まる様子を、コイツ等は笑いたいのだ。店員や警察、生活指導の教師に、根岸が「自分は脅迫されて仕方なくやりました」と訴えたところで、連中は「知りません」とシラを切るだろう。
物的証拠は何も無い。学年トップの秀才と柔道部のエースの証言。片や、何の取り柄もないモブ生徒の言葉。警察も教師たちも二つを比べ、優等生の言葉を信じるだろう。
そして、根岸の履歴書に「前科」の記録が書き足されることになる。進学にも就職にも、とんでもない悪影響が出ることは間違いない。
万が一。万引きに成功したところで、待っているのは地獄だ。犯行の一部始終を隠し撮りされ、それをネタに永久に脅され続けることになる。
だから根岸は、「万引きをしない」という選択をし、自分と経歴を守った……筈だった。
根岸の細やかな抵抗でシナリオを崩された和田は、怒りを抑えることができなかった。
「奴隷が何逆らってんだよ! なあ?」
根岸の胸倉を掴んで揺さぶった後、和田は根岸を平手打ちした。
「なあ?なあ?答えろよ! ほら?なあ? なあ?なあ?なあ?なあ?」
なあ?の一言の次には平手が左右交互に飛んでくるから、実際には根岸は答えることができなかった。
「わあ、凄い。いつも冷静な、あの和田君が……」
コバンザメ野郎が、ポツリと言う。
神様、もう止めて下さい。僕を助けて下さい……
「もう、その辺にしとけよ和田ぁ。それ以上やると−−」
「コイツの顔が腫れ上がる?」
見かねて声を掛けた白井の言葉を、和田は先取りした。
「大丈夫だ。問題ない。今までと同じでな。奴隷のコイツが明日の朝、顔を腫らしていようと、足を引きずっていようと、誰も気にしない。クラスの奴等も、バカ担任も生活指導のセンコもな」