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シーニャとルティを納得させるつもりで、サンフィアを呼んだまでは良かった。
だが、
「――つまり、エルフと誓約を結んだのは国を再建するためなんですか?」
「そういうことだ」
「じゃあアックは、シーニャのアックのままなのだ?」
「そういうことでもない……」
そもそもいつからシーニャだけの自分になったんだ?
「ウニャ……アックは、シーニャのアックなのだ!」
「いいえ、アック様はわたしのご主人様なんですよ? だからシーニャだけのアック様にはならないんです! そうですよね、アック様」
「ルティ、それは間違って無いがどんな意味で言ってるんだ……」
――などなど、言い出せばキリが無い。
そんな彼女たちの様子を黙って見ていたサンフィアだったが、ずっと首を傾げていたようだった。
そして、
「先程からキサマたちは何をほざいている? 我の夫は、そこのイスティだと言っているのだぞ? そうだろう、イスティ」
「……」
やはりあの口づけがそうなのか。そこまでの意味は無いと思っていたのにな。ミルシェはそっぽを向いていて関わってこないし、フィーサはずっと沈黙。
「フィーサ? フィーサも何か言ってくれ」
「……わらわには何の関係も無いなの。イスティさまは好きなだけ苦し……楽しめばいいなの!」
「お、おい、何でそんな怒っているんだ?」
「プンプンなの!」
どうやらサンフィアとのことでフィーサはつむじを曲げたらしい。
「あなたさまも大概ですわね」
「ミルシェも怒ってるのか?」
「呆れて何も言えないだけですわね。虎娘を傍に置きながらエルフも懐柔するなどと……あまりに節操が無さすぎなのでは?」
「そんなつもりじゃなかったんだが、参ったな……」
まさかの誰も味方してくれない状況になるなんて。
そう思っていると、
「仕方ありませんわね。あたしが調停者に――!?」
見かねたミルシェがおれを助けてくれそうな提案を言い出す、そんな時だった。
「――むっ!?」
ミルシェがかけていた防御魔法が、何らかの異常によって崩されてしまった。
「な、何事ですの!? 魔法防壁がこんなにあっさりと破れるなんて」
ミルシェの防御魔法は防御特化だ。可視化こそされていないが、魔法による防壁でちょっとやそっとの攻撃では破られることはない。だがそれがあっさりと破れ、おれたちは防壁による加護が無い状態になった。防壁が無くなると、遠距離攻撃や魔法による攻撃からは絶好の的なのだが。
「な、何なのだ!?」
「え、ええぇ?」
「……フン、やはり来たか。ゲートから離れてしまえば、奴らにとっては恐れるものはない」
どうやらサンフィアだけが攻撃した存在を知っているらしい。長く森林ゲート内を守って来たようだが、こっちの方にも侵入を試みたような言い方だ。
「フィアに聞く。今の攻撃は、ハイクラスな魔物の仕業か?」
「違うな。今のは魔導兵……ゴーレムの仕業だ! それは人間であるイスティが知っているのではないのか?」
魔導兵……いや、操りのゴーレム。兵といっても人間ではなく、魔力を動力源としたゴーレムによるものだ。今の攻撃がここを滅亡とした奴らの仕業だとすれば、魔法による防壁では何の守りにもならないということになる。
揉めそうになっていたルティたちにくっつかれながら、サンフィアがおれの元に寄ってきた。
「イスティ。我の幻影魔法を使って、時を凌ぐか?」
「出来るのか? 幻影と聞くが、防壁とはならないはずだろ?」
「簡単だ。魔物には効かぬがゴーレムには有効だぞ! 我の時をキサマに預ける代わりに、キサマの強さの真意を我の為に示せ!」
姿を現さない敵からの攻撃はどうくるか、正直言って読めない。特殊な土で作られたゴーレムが廃墟の風景に乗じて厄介な戦いを仕掛けて来るのは必至だ。
おれだけなら敵がどんな小細工をしてきても問題は無い。しかし、防壁を失ったミルシェと防御までは考えていないシーニャたちを守れるかというとそれはどうだろうか。
そういう意味でも、ここは守りの経験に長けたサンフィアに任せてみることにする。
「よく分かった。それならフィア! 時を凌げ!」
「キサマの為に、我が先に示してやろう!」