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夕方も遅い時間メビウスビルの、21階から夕暮れを見ながら、ジェニはスマホを片手にソワソワしていた
竜馬と付き合ってから、今までこんなにも長い時間、彼にメッセージを送って「既読」が付かなかったのは初めてだ
彼はいとこの文也君と、滋賀県は琵琶湖にブラック・バス釣りを楽しみに行っている、休日だと混むらしいので、有休をとって一泊で行ってくると
つい昨日・・・彼は楽しそうに釣り竿を手入れして、出かけて行った、しかしジェニと竜馬はどんな時でも、二人はお互いに楽しんだことを共有したがり、マメに連絡を取り合う日々が、当たり前になっている二人だったので
魚を釣ったら、いの一番に写真が送られてくるだろうとずっと待っているのに、彼からはおよそ12時間連絡がない・・・ジェニはもう一度lLINEメッセージを送った
「ボウスだからって、恥ずかしくはないわよwww 」
そして数時間後・・・辛口だっただろうかと思った、メッセージにも既読が付かない、こんなに彼と連絡が取れなかったことは初めてかもしれない
もちろんせっかくの従弟同士で釣りを楽しんでいる所を邪魔はしたくはないけど、二人の様子は知りたかった、とうとうジェニはしびれを切らして、竜馬の電話番号にかけたが、出たのは留守番電話だった
メッセージ録音を促す発信音が鳴ると、 ジェニは話しだした
ピーッ 「・・・ジェニです・・・ その・・・何でもないんだけど・・・ LINEの既読がつかなかったものだから、煩くしてごめんなさい、大人しく待っているから連絡してください」
ところがそこからさらに1時間・・・2時間経っても彼からはLINEも電話もこなかった
今まで当たり前のように、何もかもを共有してきた二人が、付き合ってこんなことは初めてだった
ちょっと煩くしすぎたのかな?・・・それとも文也君とバス釣りに忙しいのかな?圏外ってこともあるしね・・・
夕方、そろそろ退勤しようかと思った時に、外回りから帰って来た藤子が、真剣な面持ちでオフィスに入って来た
「藤子?おかえり 」
「あのね・・・・ジェニ・・・ ちょっと聞くんだけど・・・社長の家に今日のバス釣りのフロートプランの予備とか、置いて行ってない?」
ジェニは首を振った
「いいえ・・・そのフロートプランが 何なのかも知らないわ 」
藤子が顎に手をやる
「なんの変哲もない紙切れよ・・・今日のバス釣りのポイント地点とか・・・あとは行き先やコース沿いの立ち寄り休憩所の電話番号とか・・・帰りの時刻が印刷されてるものだけど・・・ 」
もしかしたら藤子も文也君と連絡がつかないのだろうか、ジェニは胸騒ぎがする心をおさえて、冷静に言った
「置いてあるか見てくるわ」
「お願い 」
竜馬の家に帰って見てみたが、そのフロートプランとやらは、どこにもなかった
きっとバス釣りに忙しくしているだけよ・・・ 大漁に違いないんだわ、もっともバス釣りを大漁というかどうかは知らないけど・・・
じっとりと手の平に汗をかき、その場に立ち尽くし・・・手のひらを握ったり開いたりし大きく深呼吸した
どうしてこんなにも ヘンな胸騒ぎがするんだろう・・・
オフィスに帰ると、そこに藤子と宗一郎が待っていた、一気に嫌な予感がし始め、ジェニは顔をしかめた
「竜馬さんの家にフロートプランはなかったわ・・・まだ二人に連絡つかない?」
ジェニは二人を見やった
「午前中から竜馬も文也ともLINEの既読もつかないし、電話をかけても留守番メッセージだ、社内用のチャットも不通になっている、今まで一緒に仕事をしてきて、こんなことは始めてだ・・・二人は仕事や俺達をほったらかして遊ぶような人間ではないからな・・・何かあったと考えた方がいいと思うんだ、それで何もなかったら、それはそれでいいし・・・」
宗一郎が眉をひそめ、タブレットを見ながら、 琵琶湖の地図を出している
「釣りの時間が長引いているとか?」
「そうだとしても、一度は船着き場に戻ってくるだろう?メシも食わないといけないし」
宗一郎がぼんやりと言う、いつもならゆったりと愛想のいい表情を浮かべているのに、今は彼の顔は曇り、険しく厳しいシワが刻まれている
椅子に浅く腰掛けている、その長身には戦いにそなえるような緊張感がみなぎっていた、藤子が何やらパソコンで検索しながら言う
「私も朝からLINEしたり・・・ さっきも電話をかけたんだけど、出なかったわ・・・手が離せないのかなと思ってたんだけど ・・・」
「・・・・心配するような状況なの?」
ジェニがためらって二人を見た、首の後ろがチクチクするので手で揉んだ
「そういうわけじゃ・・・ないんだけど、私は嫌な予感がするだけ」
藤子が親指を噛む
「俺は竜馬に取引先の件で連絡がつかないのでな、君達に何か連絡があったのかと思って聞きに来た、文也達が出航した船着き場の場所は? どこから出るとか聞いた?」
藤子が宗一郎の質問に答えた
「どこから出航するかは聞かなかったけど・・・ たしかレンタルボートのサイトを見せてくれた記憶が・・・ 昔は社長とよく行ってたんだって それで・・・すごく喜んでたしか何とか琵琶湖レンタルって・・・・」
パチパチと藤子が検索をかけている
「俺はこっちの琵琶湖の水難事故の ニュースサイトを当たってみるよ、本日の事故件数と内容が載っている、遭難用のニュースは・・・今の所0件だな」
「だから大丈夫ってことだよね?」
ジェニは尋ねた、宗一郎はかすかに微笑んでジェニを見たが、すぐにタブレットに視線を戻した、メガネの奥には眉間にV字型のしわが刻まれていた
「便りのないのは・・良い便りだよ」
ジェニの心臓が怪しく鼓動を刻みだした、自分はバス釣りの事は何も知らない、どういう質問をすればいいかもわからない、それでも竜馬と文也と連絡がつかない理由について必死に頭をめぐらせた
「た・・・たまたま 圏外にずっといるとか・・・・ そういうことってないかな?」
宗一郎が頷いた
「もちろんあるさ・・・でもあの二人の性格を考えてまるまる平日のいくら有休を使っているとしても、仕事の連絡まで閉ざして遊んでいるとは考えられない、折り返し連絡をくれと言ってるんだから、もし圏外にいても、どこかで連絡がつく場所で、必ず俺達に連絡をいれてくるはずだ」
ジェニが激しく心の中でうなずく・・・そうだ・・・
竜馬さんはそういう人だ
コメント
1件
うわ、第125話、めっちゃ緊迫感がすごかったですね…!ジェニが竜馬さんと連絡取れなくなってから、12時間経っても既読がつかないっていう日常の些細な違和感から、藤子さんや宗一郎さんも巻き込んで“何かあった”と確信に変わっていく流れが、じわじわ来ました。フロートプランがなくて、水難事故サイトが0件なのに逆に怖い…。あの「便りのないのは良い便り」の台詞が、逆に不安を加速させる演出になってて、うまいなあと。次が気になりすぎます!