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芙月みひろ
214
600
#大正時代
井川奎
269
世羅 鈴🎨🎤
197,606
福田徹さんと私は1年半前に交際を始めた。
知り合ったのは、その半年前。彼は、住宅設備機器メーカーグループ会社の社内便専用業者として、うちの会社にも出入りしていた。私は3年間、あの受付にあたる席に座っていたから、ほぼ毎日徹さんと会った。
―― あの日は、イレギュラーな事がいくつか起こったのよね
書類作成の手を動かしたまま、1年半前を思い出す。
グループ会社の社内便、いつもは午後一番の時間にうちへの集荷配送に来る。その日もそうだった。けれど彼は、他からうちの役員宛て書類を急ぎで任されたと、終業時間間際に二度目の訪問をした。そんなことは、一年に一度あるかないかだ。そして私が退勤。外へ出ると同時に……大粒の雨が音を立てて降り始めた。
―― ああ……玄関で広げていた傘、持って来なかったな
前日の帰りも、最寄駅から家までの間に降られた。小さな兼用傘では濡れてしまうこと間違いない雨を眺めながら、それでも
―― 忘れて来ちゃった
と少し濡れた足元を見る。
「少し待とうか……」
と軒下の奥へ下がると
「お疲れ様です。いま見たら、20分くらいで通り過ぎそうですよ」
スマホを手にした徹さんが私に言った。
「お疲れ様でした……福田さんは、駐車場じゃなくここで何を……?」
「今は、これだったんですよ」
彼は隣で半分濡れている原付バイクを指さした。
「社用車は戻して、これで直帰予定にしたから」
普段と違う配送が任されたので、直帰予定で自分の通勤に使っている原付バイクで来ていたらしい。
「レインコートはあるけど、この雨では危ないので少し待ちます」
と言う彼と話をしながら雨が止むのを待った。
コメント
1件
まぁさん、こんにちは。寺島あおいです🌷 第1話-2、拝読しました。雨宿りの場面、とても自然な出会いの描き方で素敵ですね。普段は午後一番に来る彼が、終業間際に二度目の訪問をして、しかもその日は大雨。お互い軒下で雨宿りする距離感が絶妙でした。「20分くらいで通り過ぎそうですよ」という無理のない声かけに、徹さんの優しい人柄が滲んでいて、ほっこりしました。日常のちょっとした“イレギュラー”が縁を運ぶ、そんな予感がしますね。続きが楽しみです🤍