あれから半月が経った頃、僕はまた水族館にやってきた。ほかには目もくれず真っすぐクラゲの水槽へと進む。水槽の中のクラゲはゆらゆらと浮遊している。
ベンチに腰を下ろし、それをしばらく眺めた。
クラゲは95~99パーセントが水分で、寿命を迎えると水に溶けていくらしい(中には若返るクラゲもいる)。
“脳もなければ感情もない”
一瞬だけクラゲが羨ましいと思った。
(──感情がなければ楽になれたかな)
半月前のことを思い出し胸が痛んだ。
(自分から別れを切り出したくせに……)
未練だらだらな自分に呆れ返ってしまう。
(もうきみはいないのにね)
いっそクラゲみたいに水に溶けてなくったら、こんな思いをしなくてすんだのかな?
なんで?
俺の何が悪かった?
別れたくなんてなかったのに──
もう“あの人”からの連絡は来ない
コメント
9件